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第154回 2018年特別編 2017年の特徴,2018年の展望

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特徴その3 身近なAIは,生活をどう変えるのか

2017年にはGoogle HomeAmazon Echoといった,スマートスピーカーと呼ばれる製品が国内でも販売開始されました。どの商品も音声入力を使って,情報の検索やニュースの読み上げ,音楽の再生や家電の操作など,インターネットを通じた多様なサービスを操作する仕組みです。

スマートスピーカーに搭載されている基本的な技術は,ユーザーの音声を認識して,コンピューターが実行可能な命令に一致させる技術です。この技術をAI(人工知能)による機械学習によって強化していくことで,今後スマートスピーカー自身が,ユーザーにとってより身近な存在となりえる可能性を秘めています。

一人1台を所持するデバイスといえるほど普及したスマートフォンであっても,それを利用する誰もが自由自在に扱えるわけではありません。そうした不満を持つユーザーにとって,最も自然に扱える入力方法が音声でしょう。音声入力で様々なサービスが利用できるスマートスピーカーが普及していけば,これまで以上に多くのユーザーが,自分の思い通りにインターネットの恩恵を受けられるでしょう。

AI(人工知能)については,人間の作業を効率化するだけでなく「人間の働く場所を奪い,将来的に大きな社会不安を与えるのではないか」といった意見もあります。しかしながら近年登場したサービスや製品は,人間の作業や能力をサポートするという形をとっています。

2017年に開催されたイベントAdobe MAX 2017では,⁠Adobe Sensei」と呼ばれる人工知能プラットフォームと統合されたAdobeの代表的なアプリケーションのプロトタイプが発表されました。中でも,主力製品であるAdobe PhotoshopのAI統合による作業の変化は,これからの人間が行うデザインの未来を感じさせるものです。

「Adobe MAX 2017」で公開された,⁠Adobe Sensei」と統合された「Adobe Photoshop」のデモ映像。デザインワークにおける面倒な作業はAIが行い,人間はクリエイティブな作業に専念するという,ワークフローの大きな変化を感じさせる

人工知能が人間の行っているデザインの意味を理解して,自動的に作業を行う様子を目の当たりにすると,将来AIは,人間をサポートするアシスタントとして私たちの身近な場面やサービスに登場してくる事が考えられます。AIにできることは任せて,より本質的な部分に集中するというかたちで人間の能力はさらに拡張されていくのでしょう。

特徴その4 UIデザインツール群雄割拠の時代とその背景

Adobe XD 正式版のリリース,デザインツール「InVision Studio」の発表,⁠Sketch」のライブラリー機能追加など,2017年もUIデザインを制作するツールが次々と登場し,新たな機能を提供してきました。

AdobeのUIデザインツール「Adobe XD」を解説した動画。2017年10月に正式版となった

UIデザインツールが次々と登場する理由には,今までのデザイン制作におけるスタンダードなツールである「Adobe Photoshop」が,現在の制作環境において非常に使いづらくなってきているという状況があります。

現在のアプリやウェブサイトの制作現場では,細部の作り込みよりも⁠素早くワイヤーフレームから動くプロトタイプを提供すること⁠が求められます。問題点を洗い出して修正する作業を繰り返しながら,問題の少ないUIデザインを短期間で完成させることに重点を置く制作現場では,誰もがすぐに扱えて,プロトタイプの制作により特化したツールが求められています。

図2 UIデザイン・プロトタイピングツールFramerのウェブサイト。UIデザインツールのウェブサイトには「prototype」⁠fast」といった単語が並び,デザインワークフローの変化を感じる

図2 UIデザイン・プロトタイピングツール「<a hre

「Adobe Photoshop」⁠ビジュアル表現で不可能なものはない⁠という,非常に守備範囲の広いアプリケーションです。その反面,広大な機能を上手に利用するには多くの学習時間が必要です。また,繰り返し修正作業が頻繁に発生するプロトタイプの制作では,機能的に使いづらい部分もあります。

UIデザインツールがワイヤーフレームなどの上流工程から利用されれば,制作現場での再利用も含め,最終的に作業のムダが少なくて済むというメリットも生まれています。誰もが使えるデザインツールが現場で求められれば,学習コストの高い「Adobe Photoshop」が登場する機会は,別の場面ということになるでしょう。

著者プロフィール

Lançamento(ランサメント)

国内外のウェブサイトを日々紹介する Blog『Lançamento』を運営する,自称“フリーランスという名の無職”。目指すは“エクスペリエンスデザイナー”(O'REILLY『Web情報アーキテクチャ』11ページ参照)。2008年の“ジェフの奇跡的な残留”を目の前で見たサッカー好き。