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第162回 2020年特別編 2019年の特徴,2020年のこれから

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特徴その3 人間とAIの組み合わせが生み出す力

「認識や推論,言語に特化した作業は,AI(artificial intelligence)で代替できる可能性が高い」とされていたため,AIが社会に導入されていく場合,まず取って代わられるのは,データの入力や書類の作成など,一定のパターンで行われる定型的な作業と言われてきました。

そのため、人間の持つひらめきや想像力が必要不可欠な領域にAIが入り込んでくるのは,⁠まだまだ遠い先の話だ」と誰もが思っていたことでしょう。

近年,絵画や音楽,小説といった領域で注目されているのが,自動生成AIです。中でも注目されている技術が,GAN(Generative Adversarial Network:敵対的生成ネットワーク)です。このGANを応用して,2019年にはクリエイティブな領域にも,AIが目覚ましい進歩を遂げながら進出してきました。

図7 キーボードからのメロディを選択したジャンルに合わせて自動作曲するキーボードAWS DeepComposer

図7 キーボードからのメロディを選択したジャンルに合わせて自動作曲するキーボード「AWS DeepComposer」

図8 OpenAIが発表した言語モデルGPT-2⁠。最小限の情報から,自然な内容の文章を生成する能力を持つ

図8 OpenAIが発表した言語モデル「GPT-2」。最小限の情報から,自然な内容の文章を生成する能力を持つ

現在,人間が判断しながら実際に手を動かすような複雑な作業でも,AIとロボティクスの利用で,ほぼ同じ作業が行える段階に近づいています。中には⁠人力で行うことは,ほぼ不可能⁠な事例もあり,⁠本当に人間が行うべき作業は何なのか」を改めて考えさせられます。

図8 DJIの農業用ドローンDJI Agras MG‐1の自動航行システムを説明した動画。人間が行う従来の農薬散布作業と比べ,圧倒的な省力化と効率化を実現できる

ただ対費用効果などの面から,ビジネスとしてAIですべてを行うには限界があります。標準化と低価格化が進めば,あらゆる作業が自動化されるでしょうが,現時点では,人間とAIがお互いの得意分野を分担して共同作業を行うことが,最も効率的かつ問題のない理想の組み合わせです。

今後はコストや技術などの要因によって変化しながら,⁠人間が行うもの」⁠人間とAIが協調して行うもの」⁠AIが行うもの」という区分が明確になるでしょう。人間の複雑な動作を学ばせることで,今までにない新たなAIの利用方法が生まれる可能性も秘めています。

AIを一般的なビジネスとして成立させるには,まだ超えるべき課題も多いです。それでも,一時期の⁠何でもAIで解決⁠というブームのような段階から,より実用的で価値を生み出せる段階へと,着実に進んでいることを実感できた一年でした。

2020年のこれからについて

図9 折りたたみ可能なフォルダブルスマホ,SamsungGalaxy Foldの販売価格は,日本円で約24万円

図9 折りたたみ可能なフォルダブルスマホ,Samsung「Galaxy Fold」の販売価格は,日本円で約24万円

2019年には,折りたためることをコンセプトとした,新デバイスが発表されています。非常に高価ですが,5Gの商用サービス開始と同時に,コンテンツ消費におけるスマートフォンの欠点を埋めるデバイスとなるかもしれません。価格次第では急速に普及する可能性もあるでしょう。

図10 昨年末に販売されたライブストリーミング用のスイッチャーATEM Miniシリーズは,コストパフォーマンスに優れ,現在でも入手が困難

図10 昨年末に販売されたライブストリーミング用のスイッチャー「ATEM Mini」シリーズは,コストパフォーマンスに優れ,現在でも入手が困難

2019年は,芸能人やミュージシャン,スポーツ選手などが,相次いで⁠YouTuber⁠として参入しました。動画配信に必要な機器は低価格化と高機能化が進んでおり,参入のハードルはさらに低くなると考えています。動画内容も高度に編集されたものが増えており,近年鈍化傾向のあるPCの売上台数にも影響を与えるかもしれません。

国内では,1月にトヨタ自動車が発表した「コネクティッド・シティ」プロジェクトに注目しています。静岡県裾野市に自動運転やロボットなどの先端技術を試験導入した人工的な街を作るという,スケールの大きなプロジェクトです。広範囲での技術試験が行えることで,様々な分野に必要な大量の基礎データが獲得できるため,今後の日本の技術発展において,非常に重要なプロジェクトになるかもしれません。

2019年10月31日,TwitterのCEOであるジャック・ドーシー氏が「政治広告の掲載を世界中で禁止する」とツイート

2020年11月にはアメリカ大統領選挙も控えています。2016年の選挙では⁠フェイクニュース⁠が問題になりました。メディアやSNSなどにおける選挙や政治の広告,コメントの正確性をどのように担保するかについて,改めて問われる機会となるでしょう。明確に⁠政治的な広告をなくす⁠方向へと動き出したTwitter,⁠表現の自由⁠として掲載継続を決めたFacebookなど,政治的な広告におけるSNSの立ち位置の変化にも注目です。

というわけで,残り少なくなってきた2020年のこれからをまとめてみました。今回はコロナウイルスに関連する話題は省略していますが、年初からの世界的な感染拡大により,上記のような観測が成り立たない状況となっています。

コロナウイルスによる影響は,2009年のリーマンショックのような金融を中心としたものとは性質が異なります。人間同士の接触や行動制限によって,多くの業界で長期的な不況が懸念されています。ワクチン接種や治療法の確立まで,全世界に甚大な影響を与えることになるでしょう。

ただ,こうした困難な状況下でも希望は見いだせます。接触や行動を制限されながらも,世界中の人々が初めての状況に対応すべく,新たな考え方へと移行しながら,日々行動を起こしています。以前と変わらぬ生活を維持するためのサービスも次々と登場しており,改めて人類の力強さを感じています。

新たな生活の基盤となるワクチンについても,世界各国で開発が進められており,来年には多くの国で接種が始まります。誰もが今までと同じ日常を取り戻せる日は,必ず訪れます。

今回も最後まで読んでいただき,ありがとうございました。それでは次回をおたのしみに。

著者プロフィール

Lançamento(ランサメント)

国内外のウェブサイトを日々紹介する Blog『Lançamento』を運営する,自称“フリーランスという名の無職”。目指すは“エクスペリエンスデザイナー”(O'REILLY『Web情報アーキテクチャ』11ページ参照)。2008年の“ジェフの奇跡的な残留”を目の前で見たサッカー好き。