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【実践編】第4回 関心から感動へ

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キーワードで新しいソーシャルメディアを

前田:

そのクライアントさんからお声がけいただいたのは,単にコンセプトだけでなく,すでに関心空間には24万件のキーワードのエントリーが,なんのインセンティブもないままに投稿され,そのキーワードに45万個を超えるつながりやコレクションというユーザー投稿型の編集データがついているからだと思います。

「このキーワードとこのキーワードは○○つながりである」または「○○とかけて○○ととく」というような,単なるタグとは異なる,人を喜ばせよう感動させようとする気持ちのはいったメタデータになっているのです。

石井:

それをどのように使っていくかというのは,まさにチャレンジングですね。

前田:

ただ,24万件というキーワードでも,世の中の関心事に対しては量が少ないのです。日常生活でTVの前に座っている受動的な人に対してインパクトを与えられる数ではありません。

このキーワードやメタデータを生活の中で活用しようとしたときに,たとえばこの人はアルコールを呑まれないからなにか甘いものを,というようなおもてなしの気持ちのようなものに組み合わせていきたいのですが,まだそこまではいきません。

また,blogを書かせたりするような積極的な活動なしに,そういったものを自然に抽出できるようにするにはどうしたら良いだろう,というのが最近の議論です。自分が発信しているつもりがないのに発信しているようなものが人間には多いはずです。それを今の安くなったセンサーでピックアップできて,ユビキタスな環境の中でつながっていくことが新しいソーシャルメデイア,CGMになっていくのであれば,おもしろくなるかなと思います。

偶然の出会いが創造につながる

前田:

最後に,この⁠セレンディピティ⁠という言葉から石井先生が想像されることはなんでしょうか?

石井:

やはり,偶然の出会いということですね。人間や情報,作品。もう死んでしまった人の作品との出会いかもしれません。または,運が良ければその作品をつくった人にも会えるかもしれません。

いつ誰に,どのようなタイミングで出会えるかということは予測できませんが,正しいタイミングで会うべきものに出会うことこそ,セレンディピティです。そのときには気がつかなくても,いつか,なぜそこで出会ったのかという必然性がわかる。そういうものがクリエイションやインベンションには非常に大切で,そのすべてに理由があり,その理由がわかってくる瞬間には価値が外化されてくるのだと思います。

すばらしい人に会う,すばらしい作品をいっぱい見る,それをいっぱい自分の栄養にする,すぐにできなくてもワインセラーに貯蔵するように寝かせておく,それが大切な燃料になると思います。

人と人が出会い系サイトで直接出会うということ以外でも,ある情報に共通するトピックスを違った視点から提示し,そのトピックスを介して人と人がつながったときには,別の大きなうねりとなります。Howard Rheingoldが書いたようなことですね。

関心空間が今やっている実験というのは,未来のクリエイティブなソサイエティにおいて,どういった触媒が必要になるのかを調べているのだと思います。人と人との化学反応の閾値を下げるために,どのような触媒が見つかるのか,貴重だと思いますし興味があります。

一方で,デジタルに乗らないところにも百倍,千倍の価値があります。旅をすること,良い作品に対峙することもそうですね。その価値を,偶然見つけることができるなら,本当は一番良いことなのかもしれません。

前田:

人の感動といった抽象的な領域にまで研究を進めていくということですね。わざわざボストンにまで来た甲斐がありました。お忙しい中,お時間をいただきありがとうございました。

AN APPLICATION IMAGE INSPARED FROM THIS TALK
(対談からインスパイアされたWebサービスイメージ)

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昨今,小型の機器を通じて脳波(EEG)をスキャンして,パーソナルコンピュータのコントローラとして利用する技術が登場している。またこれらをマーケティングに利用するニューロマーケティング(Neuro Markerting)なる分野も萌芽し始めている。

これらを利用して,たとえば,モニターの前にいるユーザの感情や意思をネットワークを通じて転送したり,それらのユーザーの共通した感情をコンテンツ推奨やコンテンツ内容に反映することもいずれできるようになるに違いない。

しかし,もっとも重要なことはひとの感情を正確にマーケティングする技術ではなく,⁠ひとをワクワクさせる技術⁠に他ならない。感動の裏に何が潜むのか,それこそが永遠のテーマである。

MITメディアラボについて

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MITメディアラボは,米国マサチューセッツ工科大学(MIT)建築・計画スクール内に設置された,米国内外の企業がコンソーシアム形式で共同研究を行う機関です。人間とコンピュータの協調をテーマにしたさまざま研究開発を行っています。また,その研究分野には,新しいテクノロジーの開発だけでなく,発展途上国のための技術支援も含まれます。

URL:http://www.media.mit.edu/

著者プロフィール

前田邦宏(まえだくにひろ)

株式会社関心空間 代表取締役。1967年兵庫県宝塚生まれ。1990年より公共機関や企業向けデジタルコンテンツの企画制作ディレクションに従事。1998年ユニークアイディ設立(現:株式会社関心空間)。2001年クチコミ情報コミュニティサイト「関心空間」を発表。同年に関心空間エンジンを利用したASP事業を,また2005年よりメディア事業を開始。

受賞歴:
2002年10月「関心空間」にてグッドデザイン賞新領域デザイン部門入賞。
2005年9月日本広告主協会WebクリエーションアウォードWeb人賞受賞。