知って得する、スマートデバイスアプリ開発者が知っておきたいVisual Studio 2013の便利機能

本記事では、Microsoftが提供する最新の開発環境Visual Studio 2013が持つ特徴、そして、これまでVS2013を使用したことがない開発者に向けて、ここだけは知っておくべきというポイントをご紹介します。

2013年10月17日(米国時間)にスタートしたMSDNサブスクリプション会員向けのダウンロードを皮切りに、この11月から本格的に提供が開始される開発環境「Visual Studio 2013⁠⁠。Microsoft製品がゆえに、.NETを中心とした固有のアプリ開発用ツールとして認識されがちですが、.NET開発への最適化はもちろんのこと、バージョンアップを重ねるごとに他言語や他環境に向けた開発ツールとしての機能が整備されてきています。今回は、VS2013が持つ特徴、そして、これまでVS2013を使用したことがない開発者に向けて、ここだけは知っておくべきというポイントをご紹介します。

Visual Studioって?

Visual Studioは、Microsoftが開発する、統合開発環境です。

Microsoft Visual Studio
http://www.microsoft.com/ja-jp/dev/

1997年から開発・提供が進められており、多くの開発者に使われてきています。そして、この10月には最新のVisual Studio 2013が登場し、提供がスタートしました。開発元がMicrosoftであるため、.NET環境やC#といった言語に適した開発環境であることはもちろんなのですが、そのイメージが強く、他の環境や言語には適していないのではと思っている方もいらっしゃるでしょう。

しかし、ここ数年におけるクロスプラットフォーム化・マルチデバイス化、また、Webアプリの浸透により、Visual Studioでは、他言語開発、あるいはWebアプリ開発を行う開発者にも便利な機能が多数実装されてきています。

そこで、本記事では、最新のVisual Studio 2013に注目しながら、とくにスマートデバイス向けアプリ開発者が知っておきたいポイントについて紹介します。

なお、Visual Studio 2013は上記URLから無償試用版をダウンロードすることが可能ですので、興味のある方はまずダウンロードして触ってみてください。

Visual Studio 2013、ここがポイント

それではさっそく最新版Visual Studio 2013のおもな特徴を紹介しましょう。

CodeLends

まず最初に紹介するのは「CodeLends(Code Information Indicators⁠⁠」です。これは、プロジェクトメタデータとTeam Foundation Server 2013(チーム開発用の構成管理ツール)の両方の情報を使い、コード内の各メソッドにデコレーターを追加し、作成や最新の変更が行われた変更セット、そのコードを最後に編集したユーザ、そのメソッドをカバーする単体テスト(合格/不合格の最新の状態⁠⁠、存在するコード参照などの情報を表示する機能になります。

これにより、開発画面内におけるチーム開発の生産性を向上し、より効率的な開発を実現できます。たとえば、以下の図では4つのテストのうち3つに合格し、1つは不合格の状態ということがわかるわけです。

CodeLens機能
CodeLens機能

内容については他のメンバーや担当者へ通知することができるため、コードレビューなどの見落としを防ぐことができます。

Windows 8.1アプリ開発に最適

続いて、2013年10月18日にリリースされたばかりのWindows 8.1に向けたアプリ開発をサポートする、さまざまな機能追加・向上が行われています。

たとえば、

  • 新しいコントロールの追加(AppBar、DatePicker、Flyoutなど)
  • デバイス アクセスの強化(POS、USBなど)
  • Direct X 11.2サポート
  • 新しいウィンドウ化モード/検索の変更

などが挙げられます。

その他、ストアアプリの回帰テスト自動実行(UI操作の自動再現およびUI要素の情報取得など)やテスト用アプリの配置とリモート取得、それによる情報管理がしやすくなっているため、とくに実機を想定したテスト効率が向上したと言えるでしょう。

Windows 8.1アプリ
Windows 8.1アプリ

Team Foundation Serverとの連携(開発環境のクラウド化)

前述のTeam Foundation Serverとの連携も強化されており、開発環境そのものをクラウド化し、プログラマやテストエンジニアの他、インフラエンジニアを含め、さまざまな職域の開発者にとって、開発しやすい環境が提供されています。

さらに、Webクライアントを強化したことによって、Visual Studio 2013がない環境からも、アプリの開発状況やテスト結果など、作業項目を閲覧することができます。

Webクライアントからの作業項目の確認
Webクライアントからの作業項目の確認

TFS(チームルーム)との連携

おなじくTeam Foundation Serverの一機能である「チームルーム」との連携が行えるのもVisual Studio 2013の特徴です。下図のように、対象プロジェクトに対して、参加者同士のリアルタイムコミュニケーションを実現できます。こちらもWebクライアントでの閲覧ができるため、該当者以外のメンバーからも確認することができ、チーム内の状況および情報共有を高めることが可能です。

チームルーム
チームルーム

スマートデバイスアプリ開発者のためのVisual Studio 2013活用講座

最後に、スマートデバイスアプリ開発の視点から見た、Visual Studio 2013の機能、ポイントを紹介します。この1~2年のスマートデバイスの普及・ユーザ利用率の向上には目を見張るものがあり、今後、この状況はさらに加速すると予想できます。

こうした背景において、開発者には「スマートデバイス専用アプリの開発」という新しい課題が課され、裏を返せば、そこを押さえることが次世代開発者として成功するかどうかの鍵を握っていると言っても過言ではないでしょう。

マルチデバイス開発(HTML5/JavaScriptアプリ開発のサポート)

Visual Studio 2013は、.NET環境やC#以外に、HTML5/JavaScriptを中心としたWebアプリケーション開発にも向いています。最近のスマートデバイス用のアプリは、iOSやAndroidといったOS依存のネイティブアプリだけではなく、そこにWeb標準技術を含めたハイブリッド型アプリ、あるいは、Webブラウザ上で稼働するアプリというのも多数存在します。

Visual Studio 2013では最新のHTML5やJavaScriptのコードサポートはもちろんのこと、Webアプリとして成立するために欠かせないインフラ側との連携に関してもWindows Azureをはじめとしたクラウド環境をサポートしているので、DevOps型開発を1つの環境で実現できるのです。

プロファイル機能~Windowsストアアプリ電源消費状況の分析

他の開発環境と比較して、今、Visual Studio 2013を注目したい最大のポイントが、このWindowsストアアプリ電源消費状況の分析です。アプリの開発を行う場合、実機での利用は行うのはもちろんのことですが、まずは稼働するかどうか、そのときのパフォーマンスがどうかという部分に目がいきがちです。しかし、スマートデバイスに関しては、そこに利用時に消費される電源というのも非常に大切になります。

Visual Studio 2013には、Windowsストアアプリ電源消費状況の分析機能が実装されており、下図のように、開発中のアプリを実行したと仮定して、上部に推定消費電力、また、推定エネルギー仕様の概要などを計測することが可能です。これを見ることで、実行時にどこが一番電源を消費するのか、パフォーマンスの観点とは別の分析ができるようになります。

Windowsストアアプリ電源消費状況の分析
Windowsストアアプリ電源消費状況の分析

プロファイル機能~Windowsストアアプリ(XAML)の描画ボトルネックを分析

前述の電源消費状況分析と同じく、実際にアプリを実行した際に気になるのが端末上での描画パフォーマンスです。これは、開発環境上では判別しづらいものではありますが、Visual Studio 2013には、XAMLでの描画ボトルネックを表示し、分析する機能が用意されています。

Windowsストアアプリ(XAML)の描画ボトルネックを分析
Windowsストアアプリ(XAML)の描画ボトルネックを分析

上図では、たとえばUIスレッドの使用状況(上部)を表示し、ここでXAML懐石とレイアウトなどの時間を出力します。ここで、描画状況を把握できるわけです。また、下部では、XAMLの解析(パース)時間を表示し、どこがボトルネックなのかを判別することができます。

こうしたところは、スマートデバイスを開発するときにとくに意識したい部分で、端末によって画面サイズが異なるなど、ユーザ環境が多様化した時代に合わせた機能と言えます。

まとめ

以上、駆け足でしたが、最新のVisual Studio 2013を紹介しました。まずは一度、無料試用版をインストールして、その機能を試してみてください。

Microsoft Visual Studio
http://www.microsoft.com/ja-jp/dev/

さらに、2013年11月21、22日に開催されるThe Microsoft Conference 2013では、Visual Studio 2013に関するセッションや展示が行われる予定です。こちらにも足を運んで、さらにその魅力を体感してみてください。

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