新春特別企画

2021年のAIアシスタント

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4 分

あけましておめでとうございます。よういちろうです。今年もよろしくお願いいたします。

昨年は,皆さんが体験したとおり大変な年になってしまいました。移動が制限され,人と会うことも難しく,生活に大きな影響が出てました。それは日本だけでなく地球規模で起きたことであり,多くのことが「止まってしまった」一年だったと思います。特に,当たり前だったことがそうではなくなってしまい,前提条件が崩れてしまった結果,人々のコンピュータやインターネットへの接し方も大きく変わった印象があります。

しかし,進化の歩みが完全に止まってしまったわけではありません。昨年,主要なAIアシスタントについては,当初よりもゆっくりになってしまったとは思いますが,着実に新規機能の提供や改善が行われてきました。そして,大きな方針転換も垣間見えてきていました。

本記事では,AIアシスタントが今年どのように進んでいくのか,筆者の考えを紹介したいと思います。取り上げるAIアシスタントは,日本においてプラットフォーム化をすでに遂げているGoogleアシスタントやAmazon Alexa,Apple Siriを対象とします。

AIアシスタント対応ウェアラブルデバイスの普及がさらに拡大する

新型コロナウイルスの流行が止まらず,人々は他人との接触を避けるべく,行動を制限している国が多い状況です。そのため,多くの人々が自宅で過ごし,外出は必要最低限となっています。ロックダウンという強い行動制限をかけている国もあれば,日本のように個々人の行動にある程度任されている国もあります。制限の度合いは各国の政策に依存しますが,積極的な外出を避けている点では共通しています。

MMD研究所による7月に行われたスマートフォンの利用時間に関する調査では,4月から5月にかけて行われた緊急事態宣言の前後で,スマートフォンの利用時間の変化があったことが示されています。結果としては,緊急事態宣言後に,スマートフォンの利用時間が増加しています。

筆者が想像するに,行動が制限された結果,今まで行ってきた様々なことが行えなくなったために,他のことをしていた時間が「暇な時間」に変化したことが要因かな,と考えます。逆のことを言うならば,スマートフォンの利用時間が増えたことは,それだけ家にいる時間が増えたことの証明かもしれません。

スマートフォンはインターネット利用の中心的デバイスであり,外出先ではなく家で利用する時間のほうがもはや多い印象がありますが,⁠外出時に身につけて利用するデバイス⁠⁠,つまり「ウェアラブルデバイス」も近年注目を浴びてきました。しかし,そもそも外出機会が減ってしまったためにウェアラブルデバイスを利用する理由がなくなってしまい,普及が滞ってしまったのではないか,と想像する方が多いかもしれません。2020年はウェアラブルデバイスは冬の時代を迎えてしまったと筆者も考えていました。

昨年の記事にて,筆者は昨年ウェアラブルデバイス(特にスマートイヤホン)にAIアシスタントが搭載されて利用が進むと予想しました。よって,新型コロナウイルスの流行が拡大するに連れて「あ,予想を外してしまったかな」と思っていましたが,実際には期待通りの結果となったようです。

IDCが今年9月に発表した調査報告によると,2019年と2020年との比較にて,ウェアラブルデバイスの出荷台数は14.5%の増加で着地すると報告されています。

“Global shipments of wearable devices are expected to total 396.0 million units in 2020 according to new data from the International Data Corporation (IDC) Worldwide Quarterly Wearable Device Tracker. This marks a 14.5% increase from the 345.9 million units shipped in 2019.”

新型コロナウイルスの影響によって各メーカーが出荷台数を一時的に制限するに至りましたが,需要自体は縮小することがなく,結果として昨年末までに4億台近くまで到達するのではないか,と予想されています。

“The first half of 2020 delivered positive results despite the impact of COVID-19 on the global economy. Even though vendors scaled down production and end users were quarantined, demand for wearables remained steady. The market was propelled by near-record demand for hearables, which was enough to offset slightly lower demand for watches and wristbands. The second half of 2020 is on pace to continue this trend and with the launch of new products – including hearables, watches, and wristbands – from multiple vendors, the wearables market is on track to reach nearly 400 million units this year.”

需要が落ち込まず,むしろ成長するに至った理由としては,新型コロナウイルスの流行拡大に関連して,人々の健康志向が今まで以上に加速したのではないかと説明されています。

特にスマートイヤホンといった「Hearable」デバイスに対しては,AIアシスタントが搭載されているモデルが多くなってきました。日本でも,GoogleからPixel BudsというGoogleアシスタント対応のスマートイヤホンが発売されていますし,ソニーなどの各種メーカーが発売しているハイエンドのスマートイヤホンでは,AIアシスタント対応を遂げているモデルが当たり前になってきました。

昨年のウェアラブルデバイスの普及スピードは,今年も維持されると予想されます。これは,多くの人々がAIアシスタントを利用する頻度が今後もより加速していくことを意味しています。残念ながら人々の活動の制限はまだしばらく続きそうです。しかし,その状況下においても,AIアシスタントをいつでも利用することができる環境が整いつつあります。

例えば,今年後半から年末にかけて人々の行動が徐々に元に戻っていくとするならば,ウェアラブルデバイスとAIアシスタントとの組み合わせを活かした数多くのサービスが一気に登場し,スマートフォンだけではないサービスの提供形態の模索が進んでいくと期待できます。特に,しばらくは非接触というキーワードが重要になりますので,その点においてもAIアシスタントの活用が多く模索されると予想できます。

著者プロフィール

田中洋一郎(たなかよういちろう)

1975年2月生まれ。Tably株式会社所属。業務アプリ向けの開発ツールやフレームワークの設計に携わった後,mixi Platform,LINE Platformの技術統括を行う。日本でのソーシャルアプリケーションの技術的な基礎を確立しただけでなく,メッセージングアプリにおいても世界に先駆けてBOT Platformの立ち上げを主導した。その後もプラットフォームのさらなる進化に日々チャレンジしている。趣味で開発しているChromebook向けアプリは,Google Open Source Programs Officeから評価を得ている。Google Developers Expert(Assistant, Web Technology担当)。Mash up Award 3rd 3部門同時受賞。著書『OpenSocial入門』,『開発者のためのChromeガイドブック』,『ソーシャルアプリプラットフォーム構築技法』。