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2022年,カーボンニュートラルへの動きがソフトウェア/ITシステムの世界にやってくる

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Green by ITのところで,2022年に向けてこれが注目だ!というのを挙げると?

下垣:人流とか交通流を最適化するとか,何かを束ねるみたいなところかなと思っています。たとえば,車が排気ガスをたくさん出す時というのは,のろのろ運転してる,アクセル踏んでは緩めてみたいなを繰り返している時らしいのです。高速で一定速度で気持ち良く走っているときの方が,排出量は少ない。渋滞をどうやって解消するんだっけ,みたいなところは交通量の最適化といった話なので,そこにITが寄与する部分が大きいんじゃないかと感じています。

あとは地域分散電源の話でしょうか。地域のあちこちで再生可能エネルギーが創り出された時に,それを同時同量を担保しながらアグリゲートして,必要なところに必要な量を届ける話。電力を生み出すプレイヤーだけでなく,ITが寄与できるところがいっぱいあるんじゃないかなと。

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下垣徹(しもがきとおる)

NTTデータ グリーンイノベーション推進室長

2021年10月より現職。NTTデータグループのCO2排出量削減をリードするとともに,お客さまのカーボンニュートラルに寄与するビジネスを企画する役割も担う。

元々はPostgreSQL技術者。

風戸:Greenなことを自己顕示欲的に示すSNSなども出てきつつありますね。Instagramは自分が食べたもの,見たものを写真で投稿するわけですが,自分がやったGreenなことをひたすら顕示するっていうSNSで,いいね!って押されるとやる気が出ちゃう的な話。

村岡:行動変異を起こす部分は注目かなと感じています。頑張りましょうといっても,なかなか動いてくださらないんじゃないかという話があって,いかに行動変容を人々に起こしてもらうかっていうのは重要な問題です。ナッジ(nudge)という手法があって,人の心理的なバイアスみたいな個人データと提供する情報を掛け合わせて,もっと行動変容率を上げようという試みが進んでいます。

たとえば,損失回避傾向の高い人には「今渋滞に突っ込むと,あなたはこんなにお金を損します,ガソリンが無駄になります」といえば渋滞に突っ込まないでショッピングで時間を潰すのではないか,一方で,損失回避傾向の強くない方には,⁠いま渋滞に入らないで,ここで1時間,時間をつぶしてショッピングしてもらうとこんなに得しますよ」というメッセージを送った方が,近くのショッピングモールで買い物してくれる,みたいな。人の心理的なバイアスを取って,そのバイアスに合った形のメッセージの出し方を変えるといった考え方です。

人の行動変異を起こしているというところがたぶん達成できないと,市民とか生活者のかかわる部分のCO2ってなかなか減らないんだろうなという気がしていて,大きな着目点かなと思ってみています。

末永:マンホールのチェックを,普通に役所・水道局の人が全部回ると大変だから,マンホールの写真を撮って何ポイント,みたいな感じのサービスが出てきていますね。ITシステムで,余計なCO2排出や余計な移動を起こさないで,参加している人はポイントやインセンティブももらえて,老朽化したインフラの問題の芽を早期に摘み取れるっていう意味で,三方良しなサービスだなと。単純にそこでGreenにするとか,人の行動を起こすっていうのに,プラスで何か,例えばインフラ面だったり,過疎地域に人を呼び込むみたいな,1つ高付加価値が加わるWebサービスだったり,モバイルサービスだったりができたら,これからの時代にフィットするんじゃないかなっていうのは最近思っています。

2022年が始まったいま,正月のうちにこれを見ておけ,これが注目だ!というオススメは?

末永:Green Softwate Fundationで「Awesome Green Software」っていうのを出しています。読み物だったり,サービスだったりツールだったりっていうのがひとまとめになったサイトです。グリーンなソフトウェアっていう観点で,消費電力を図るツールだとか,CO2の排出量を見積もるウェブサービス,その他にも,寄与しそうな論文なんかもまとまっています。それを見ておくと,今後ソフトウェアのグリーン化が進んできた時に,あのツールが使えるかもしれないとか,自分でこう身近で試せるかもしれない,という1つの道しるべみたいな存在になるのかなと思うので,ぜひ見ておくとよいと思います。

awesome-green-software :GitHub

下垣:CO2排出量の見える化でしょうか。カーボンフットプリントの見える化のサービスといったツールが山ほど出ています。ITベンダーと言われるプレイヤーは軒並み出している状態です。この群雄割拠感を肌で感じるには,ちょうどお正月に調べるには面白いトピックかなと思います。

風戸:ぜひローコードプラットフォームを見ておいてほしいですね。End-to-Endで仕事のプロセスが見えるようになってきてるんですね。お客様から受注して,コールセンターとか,顧客接点から,フロントオフィス,バックオフィスまで最終的なサプライヤーまで全部つながりますと。そういう活動のデータを取れるプラットフォームが作られつつありますが,この上に,いずれグリーンの指標などが乗っけられるようになると思うんです。ビジネスプロセス周りですね,BPMやビジネスプロセスのマイニングっていうキーワードでも流行ってきていますが,ログ等を分析してビジネスプロセスをリバースエンジニアリングして,プラットフォームの上に乗っける。その時にこの活動はグリーンかGreenでないか,っていう技術を乗っけるっていうアドオンがこの後来るのかな,と思っています。

村岡:1つ目はペロブスカイト。ペラペラの印刷物のように作る太陽電池で,再生可能エネルギーを作るというもの。壁やいろんなところに太陽光が置けるというので,昼間ピクニックしながら充電する時にも持ち歩きができるかもしれません。

2つ目は,CO2の吸収技術。再生可能エネルギーで電気を作るのではなくて,もう大気中に出てしまったCO2を吸収する。発明ですね。これから盛り上がると思っています。

3つ目は,全く個人の想いなんですけど,コロナが行動変容をどれだけ起こしたかというのは勉強しといたらいいかなと思っています。新型コロナによって世の中こんなに変わった,というのをリストアップすると物凄いインパクトで,カーボンニュートラルにものすごく貢献してる部分も実はあったりします。

村岡氏はオンライン参加で,5人で対談を行いました

村岡氏はオンライン参加で,5人で対談を行いました

最後に

いよいよ,ソフトウェア開発やITシステムの世界にカーボンニュートラルの流れが入ってきそうです。今回は,省エネやサステナブルの観点を中心に話をしてきましたが,再生エネルギー活用の話なども関連が深まりそうです。まだまだ始まったばかりの話ですが,ソフトウェア開発やITシステム開発に関わる皆さんには,少しずつ意識し始めてもらうとよいと思います。よい1年にしましょう!

著者プロフィール

濱野賢一朗(はまのけんいちろう)

NTTデータ 技術革新統括本部 エグゼクティブ・エンジニアリング・ストラテジスト

株式会社びぎねっと 取締役副社長、リナックスアカデミー 学校長を経て,2009年より現職。1998年からオープンソースソフトウェア(OSS)の利用に向けた取り組みを継続している。

NTTデータでは,OSSミドルウェアや先進技術に関わる技術開発・高難度プロジェクトの支援などを主導している。

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