組み合わせテストをオールペア法でスピーディに!

第5回 PICTの機能説明と使用例 (後編)

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原型ファイル

原型ファイルには2つの使用方法があります。

(1)前に使用したモデルを変更する必要がある場合,以前のモデルで作成したテストケースを再利用して,できるだけ少ない変更で新しいテストケースを作成します。
(2)生成されるテストケースに必ず含まれるべきである重要な組み合わせを指定します。指定された組み合わせで出力が初期化され,次に残りの組み合わせが生成されます。

テストケースの原型を原型ファイルで定義します。 PICT実行時に/e:オプションを使用して原型ファイルを指定します。

図1 原型ファイルの指定例

pict model.txt /e:prototype.txt

原型ファイルはPICTによって生成されたテストケースと同じフォーマットを使用します。1行目はTABによって分離されたパラメータ名で構成されます。2行目以降の行はTABによって分離された値の並びで構成されます。

原型ファイルはエディタで作成することもできます。必ず1行目から記述し,各行の1桁目から記述しなければなりません。異なる記述を行うとエラーとなります。原型ファイルができあがったら文字コードを日本語(EUC)でセーブします。

重要な注意

(1)原型ファイルが現在のモデルにないパラメータを含んでいる場合,そのパラメータの列全体が削除されます。
(2)原型ファイルが現在のモデルにない値を含んでいる場合,そのパラメータの値の組み合わせは行われません。現在のモデルに含まれるパラメータの値の組み合わせだけが生成されます。無効とされた値の列は不完全であるか部分的な列になります。
(3)原型ファイルの値の列が現在の制約条件のどれかに違反する場合,その列は無視されます。

原型ファイルの使用例を以下に示します。

[例1]新しい値を追加する

リスト4 ⁠新しい値の追加例]原型ファイル:old.txt

A   B   C
a1  b2  c2
a1  b1  c1
a3  b2  c1
a2  b1  c2
a2  b2  c1
a3  b1  c2

リスト5 ⁠新しい値の追加例]モデルファイル:m.txt

A:  a1, a2, a3
B:  b1, b2, b3
C:  c1, c2

新しいモデルファイルでは,パラメータBに値b3が追加されています。原型ファイルを流用して新しいテストケースを作成するため次のコマンドを実行します。

図2 リスト4の原型ファイルにリスト5の内容を追加して新しいテストケースを作る

pict m.txt /e:old.txt >new.txt

表4 新しい値が追加されたテストケース

No.ABC
1a1b2c2
2a1b1c1
3a3b2c1
4a2b1c2
5a2b2c1
6a3b1c2
7a3b3c1
8a1b3c2
9a2b3c1

新しく生成されたテストケースには,原型ファイルの内容がそのまま流用され,追加した値b3に関する組み合わせのみが追加されています。これにより既存のテストケースでテストした後で仕様変更などにより,新しい値を追加してテストを行う必要が生じた場合,追加された値に関する組み合わせだけテストすればよいことになります。

[例2]必ず含まれなければならない組み合わせを指定する

リスト6 ⁠必ず含まなければならない組み合わせの指定例]原型ファイル:init.txt

A   B   C
a1  b1  c1
a1  b1  c2
a1  b2  c1
a1  b2  c2

リスト7 ⁠必ず含まなければならない組み合わせの指定例]モデルファイル:m.txt

A:  a1, a2, a3
B:  b1, b2
C:  c1, c2

エディタで作成した原型ファイルでは値a1について,他のパラメータBとCのすべての値と組み合わされています。このような,あるパラメータの特定の値についてのみ,ほかのすべてのパラメータが持つ値と組み合わせることは,PICTの柔軟な制約条件指定機能をもってしても指定することができません。したがって,このような複雑な組み合わせは原型ファイルを使って指定することができます。

原型ファイルをもとに新しいテストケースを作成するため,次のコマンドを実行します。

図3 リスト6の原型ファイルを使用

pict m.txt /e:init.txt >new.txt

表5 指定した組み合わせが含まれたテストケース

No.ABC
1a1b1c1
2a1b1c2
3a1b2c1
4a1b2c2
5a3b2c2
6a2b1c2
7a3b1c1
8a2b2c1

新しく生成されたテストケースには,原型ファイルの内容がそのまま流用され,その他のパラメータの組み合わせが追加されています。この例のように,制約条件では指定できない複雑で特殊な組み合わせでも,エディタを使用して原型ファイルで指定することにより,簡単に指定することができます。

これまでの説明で,PICTの使いやすさがおわかりいただけたでしょうか。同様なことを直交表ベースで行おうとすると,専用のソフトウェアを自力で開発しなければ不可能だと思われる機能がほとんどです。人手でもやれる機能もありますが,その場合でもPICTに比べてはるかに時間がかかってしまいます。ここにPICTの優位性があります。直交表ベースの組み合わせテスト技法に対して,PICTは飛躍的な柔軟性を備えており,無償で使用することができるからです。

さて次回は最終回になります。次回ではPICTの柔軟性をさらに高めるテストケースの作成支援機能も備えた,Excel上で動作するテストケース作成支援ツールを詳しく紹介します。

著者プロフィール

鶴巻敏郎(つるまきとしろう)

岩崎通信機株式会社でビジネスボタン電話機,構内PBXなどのソフトウェア開発を担当。

デジタルコードレス端末(PHS)のソフトウェア開発を経て,2002年より岩通ソフトシステム株式会社に出向。以来,統合テストを中心に組込み系機器のテスト業務にあたる。

URLhttp://www.iwass.co.jp/index.html