児玉サヌールと田中ばびえの会社訪問

第5回ALPSLAB

はじめに

今回は本連載では初となるラボを訪問してきました。ALPSLABのあるアルプス社は、あのYahoo!地図情報を担当する「地図の会社」です。地図を使ったサービスの舞台裏についていろいろとお話を伺ってきました。

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自己紹介

――まずは自己紹介をお願いします。

大野道誉さん ラボ以外ではR&D部
(写真:平野正樹)
大野道誉さん ラボ以外では

大野:大野です。ALPSLABでは主にサーバ側の開発をしています。最近はJavaのエンジンをRubyで書き直したりしています。ラボ以外でもサーバ側の開発を行っていて、そちらはCとJavaが半々くらいです。

岩澤:岩澤です。普段の仕事は、略地図のような地図に関する研究開発をR&D 部で行っています。ALPSLABでは、ALPSLAB designALPSLAB printあとはモバイル版の開発をしています。

二宮:二宮です。ALPSLABでは企画とディレクションをやっています。普段の仕事は……社内ニートです(笑⁠⁠。

入山:入山です。私も二宮と一緒で、普段は何をやっているかわからない状態なんですけど(笑⁠⁠、ALPSLABでは外の方に向けた情報発信や各社さんとのコラボレーションの調整などを担当しています。

ALPSLABとは

――アルプス社は名古屋が本社なんですよね。みなさんも名古屋在住なんですか?

入山:オール名古屋です。純名古屋製。

――もともと地図が好きだったんですか?

全員:……。

――あれ?(笑)

二宮:たぶんみんな地図を使ってできることが好きなんだと思うんですよ。地図って表現方法の一つじゃないですか。そこに可能性を感じているというか、Webを使っていろんなことができるのが好きっていうか。まあ、会社には地図を眺めるのが好きという人もいっぱいいますけど(笑⁠⁠。

――ALPSLABを始めるきっかけは何だったんですか?

入山:もともと社内で新しモノ好きたちが勝手にいろいろやっていたんですが、⁠勝手にやっていても世の中には公開できないよね」という話になりまして、それで会社にALPSLABという形で認めてもらったんです。

――社内での位置づけはどうなんですか? 期待されてます?

二宮:割と冷ややか(笑⁠⁠。アルプス社は地図を作っている会社ですので、Webについて理解してもらうのが難しいかったんですよね。

入山:でも、ALPSLAB printという地図の印刷サービスを出したときは、紙だからですかね、⁠ラボって意外とやるじゃないか!」みたいな感じで、やっとわかっていただけましたね。

ALPSLAB入りたい!

――ラボのメンバーになるにはどうすればいいんですか?

入山:金曜日に定例会議をやっているんですが、そこにいると自然に「お前これやれ!」みたいに仕事がふってきますね。それでいつの間にかメンバーになるんだと思います。

二宮:でも、最初のときから正式なメンバーは増えてないんですよ。Webが好きな人たちがガーっと集まっただけなんで、あんまり組織化はしてないですね。

――メンバーの証みたいなのはあるんですか?

入山:証というか、マグカップは作りました。

――おそろいの?

入山:そう。50個作ったんですよ。でも、結構人気で、すぐに売れちゃいました。

――それは新しいビジネスの予感が(笑⁠⁠。ALPSLABにデザイナさんはいらっしゃるんですか?

二宮:デザイナじゃないんですが、デザインセンスのある人がいて、デザインはその人が全部やっています。

岩澤:今はアイコンを作ってくれるドッターが欲しいって言ってましたよ。

入山:ALPSLABに一番入りやすいのはドッター(笑⁠⁠。

岩澤:この前、萌えちずをデザインしてくれた人にも入ってもらいたいなあ。

――その方はまだメンバーじゃないんですか?

二宮:そうですね。社内でちゃんとした地図をデザインをしている人です。

岩澤:昔コミケで活動していたという話を聞いたのでお願いしたんですけど、最近の萌え事情はわからないと言ってましたね。

大野:だから、相談されましたよ。⁠最近の萌えってどんなの?」って。とりあえず、⁠メイドか妹?」という話をしたんだけど(笑⁠⁠。

萌えちず ALPSLAB print APIも使って、1枚の紙からミニ地図帳化
萌えちず ALPSLAB print APIも使って、1枚の紙からミニ地図帳化

地図データ

――地図データはアルプス社独自で持っているんですか?

大野:はい。すべて弊社内で作成して、日々メンテナンスをしています。

――メンテナンスというのは?

大野:現実の世界が新しくなると地図データはどんどん古くなっちゃうので、データを更新する必要があるんですよ。弊社はそのメンテナンスを毎日やっていますので、他社の地図と比べるとより新しい地図がご覧いただけます。

――メンテナンスは具体的にどうやるんですか?

入山:いろんなやり方があるんですが、たとえば、Yahoo!地図情報で提供しているワイワイマップというサービスで、ユーザの方からいただいた投稿をもとに情報を更新しています。

――投稿内容は検証するんですか?

入山:一定条件を満たせば正しいと判断していますね。実際にアルプス社で検証を行うこともありますけど。ユーザ参加型ですので、ほかのユーザさんが間違っていると指摘してくれることもあります。

Yahoo!地図情報

――御社とヤフー株式会社との関係は?

入山高光さん ラボ以外では
コンシューマ事業部のマネージャー
入山高光さん ラボ以外ではコンシューマー事業部のマネージャー

入山:弊社がヤフーの100%子会社なんです。僕たちは名古屋なんですが、この場所(東京ミッドタウン)にアルプス社の東京本社があるので、会議室とかは使わせてもらったりしています。

――ALPSLABとしては何かつながりがあるんですか?

入山:ウケのよいやつとか、ユーザからの反響が多いサービスに関しては、Yahoo!地図情報の担当にフィードバックしていますよ。ただ、直接的には絡んでいなくて、部品単位で作らせてもらっているという感じです。

大野:Yahoo!地図情報の地図エンジンは普段の仕事で作っているので、その成果を逆にALPSLABにも活かしていきたいなというのは思いますね。

サービスができるまで

――サービスのアイデアを出すときはどうするんですか?

二宮:何か思いついた人がメンバーにメールを送るんですよ。それで、たとえば大野なんかが気に入ってくれると、1日くらいでプロトタイプを作ってくれて。そこが第一関門ですね。

――そこでの判断基準は?

大野:フィーリング(笑⁠⁠。

入山:明確にダメ出しされることはなくて、ダメだと華麗にスルーなんですよね。

二宮:何が悪かったのかもわからない。

入山:「メールの書き方が悪かったのかな?」とかね(笑⁠⁠。日々鍛えられてます。

二宮:で、それを通過すると、今度はみんなでプロトタイプに対して意見を出し合うんですが、それが第二関門ですね。そこで意見が出ないとボツ。それを通過するとサービスとして外に出るという。

――FlashなどのUIはどうするんですか?

二宮:それを担当してくれる人間がいますね。

――じゃあ、そちらの方も説得しないといけない?

二宮:そこで説得というのはないですね。そこからは普通のプロジェクトみたいに進んでいきます。

――普段の仕事もそんな感じに進むんですか?

二宮:いや、普段はもっとちゃんとしていますよ!(笑)

岩澤:でも、私のいるR&D部だと、プロトタイプを作らないと誰も納得してくれないので、流れとしては同じような感じですよ。

――ALPSLABとR&D部の位置づけはどう違うんですか?

岩澤:基本は一緒じゃないですかね。

全員:えぇぇー⁠ー!

岩澤直樹さん
ラボ以外ではR&D部
岩澤直樹さん ラボ以外では

岩澤:ただ、ALPSLABで出せるかどうかというのはありますよね。たとえば、新しいミドルウェアを作っても、そのままでは出せないじゃないですか。

――ユーザには見えませんからね。

岩澤:エンジンやミドルウェアをどうやってサービスまで昇華させるかというのが課題ですね。ただ、WebのAPIなんかは、ほとんどミドルウェアみたいな感じでしょ。

――UIをつければいろんなサービスになりますからね。

岩澤:そう。ハンマーでぶっ飛ばしたりとか(笑)

アイディアが多すぎる

――これからやりたいサービスはあるんですか?

二宮一浩さん ラボ以外では
コンシューマー事業部のマネージャー
二宮一浩さん ラボ以外ではコンシューマー事業部のマネージャー

二宮:携帯や3Dなんかはこれまでやってこなかったので、ちゃんとやりたいなとは思っていますけど……。

岩澤:もうちょっとリッチなことをやろうかなと思いつつ、あんまり進んでないんですよね。

――携帯だとリッチにならなくないですか?

岩澤:最近だとFlashも動きますし、従来の携帯サイトではできなかったことに挑戦していこうかなって思っているんですけど、なんか物足りないというか、どんどん新しいアイデアがメールで送られてくるんで、そっちを優先的にやっちゃってるというか。

入山:やることが多過ぎて、手が出せない。

二宮:すぐやりたいことってたくさんあるじゃないですか。WiiとかiPod touchとか新しいWebのサービスとか。そういうのを調べてプロトタイプまで作るんだけど、そのまま、ってのがありがちな形です。⁠そういえばアレどうしたっけ?」みたいなのが多くなる。

岩澤:そういえば新しい携帯電話を買いましたよね?

二宮:まぁまぁまぁ(笑⁠⁠。

入山:金だけ使ってあんまり進んでないという(笑⁠⁠。

――逆に「これはダメ」というアイデアはありますか?

入山:ダメっていうのはあんまりないよね。

二宮:なんだろう……。GoogleマップのAPI使うとか?(笑)

――Googleマップってどうですか?

岩澤:APIが使いにくい(笑⁠⁠。

二宮:Googleはコンテンツがたくさんあっていいですよね。ウチは低予算でがんばっているので、コンテンツを自分で集められないんですよ。だから、もともとアルプス社で持ってるものか、マッシュアップしたものか、あとはユーザさんからの投稿くらいしかなくて。そこはうらやましいなぁって思います。

新しいサービスと運用

――ユーザさんからの反響はどうですか?

入山:最初は「楽しんで頑張れ」みたいな感じだったんですけど、最近は結構厳しいご意見をいただくこともあります。それだけ使っていただいているということですので、非常にありがたいお話なんですが、いわゆる普通のWebのサービスになってしまっては、ALPSLABの役割や目指していることとは違ってくるので、悩ましいところなんですよね。

――サービスはすべてβ版なんですよね?

入山:そうですね。基本的にはサイト丸ごと。

――サービスをやめちゃうこともあるんですか?

入山:これまでのサービスについてはやめないと思います。ただ、その数が30や40になってくると、新しいサービスを出すスピードの妨げになることもあるので、そのときは淘汰するものが出てくるかもしれないですね。

――インフラは? アクセス数とかは大丈夫ですか?

二宮:今たぶん煙出てます(笑⁠⁠。

――サーバは自分たちで調達するんですか?

二宮:土下座して研究開発部門にもらっています(笑⁠⁠。

今後の展望

――最後に、今後のALPSLABの方向性を教えてください。

入山:ALPSLABは、アルプス社の会社としての研究開発の場というか、新しいことをやってますよというのを世の中にお見せする場なので、日々新しいものを出していけるようにしたいと思っています。これまで出したサービスについては、今後もクオリティを向上させていきたいと思っています。運用については、まあ、気長に見ていただいてですね、一部我慢していただきながら(笑⁠⁠、末永く愛して使っていただければうれしいなぁと思います。

――ありがとうございました。

全員:ありがとうございました。

みんなで記念撮影
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