モダンPerlの世界へようこそ

第34回 Perl Mongers:顔の見える仲間を増やそう

この記事を読むのに必要な時間:およそ 5.5 分

YAPCとPerl Mongers

この特徴を最大限に活用しているのが海外のYAPCです。YAPC::Asiaについてはいまのところずっと東京で開催されていますが,海外のYAPCは,北米で開催されるYAPC::NAにせよ,ヨーロッパで開催されるYAPC::EUにせよ,会場は毎年公募で決められています。

●YAPC::NA

開催年開催地Perl Mongersグループ
2010オハイオ州コロンバスColumbus.pm
2009ペンシルヴァニア州ピッツバーグPittsburgh.pm
2008イリノイ州シカゴWindyCity.pm(Chicago.pm)
2007テキサス州ヒューストンHouston.pm
2006イリノイ州シカゴWindyCity.pm(Chicago.pm)
2005オンタリア州トロント(カナダ)Tronto.pm
2004ニューヨーク州バッファローBuffalo.pm
2003フロリダ州ボカラトンSouthFlorida.pm
2002ミズーリ州セントルイスStLouis.pm
2001ケベック州モントリオール(カナダ)Montreal.pm
2000ペンシルヴァニア州ピッツバーグPittsburgh.pm
1999ペンシルヴァニア州ピッツバーグPittsburgh.pm

●YAPC::Europe

開催年開催地Perl Mongersグループ
2010ピサ(イタリア)Perl.it※3
2009リスボン(ポルトガル)Lisbon.pm
2008コペンハーゲン(デンマーク)Copenhagen.pm
2007ウィーン(オーストリア)Vienna.pm
2006バーミンガム(イギリス)Birmingham.pm
2005ブラガ(ポルトガル)Braga.pm
2004ベルファスト(アイルランド)Belfast.pm
2003パリ(フランス)Paris.pm
2002ミュンヘン(ドイツ)Munich.pm
2001アムステルダム(オランダ)Amsterdam.pm
2000ロンドン(イギリス)London.pm
※3

Perl.itは日本のJPA,Japan Perl Associationに相当する団体で,Pisa.pm, Nordest.pm, Milan.pm, Roma.pmといったPerl Mongersグループを傘下に収めています。

もちろん運営にまつわるすべてが地元のPerl Mongersグループに丸投げされているわけではなく,YAPC::NAの場合はThe Perl FoundationことYet Another Societyが,YAPC::EUの場合はYAPC Europe Foundationのメンバーが継続的な支援活動を行っていますし,YAPCくらい大規模なイベントになるとホスト側のPerl Mongersグループにもそれなりの経験や準備が必要ですから,入札の際にはさまざまな要件を満たすことが求められています入札時の要件会場選定時の基準は一般に公開されています⁠⁠。ぽっと出のグループがいきなりYAPCの運営にあたる,ということはあまりありそうな話ではありません。

ただし,今年のYAPC::NAの会場になったオハイオ州コロンバスで人口75万人(都市圏全体で180万ほど。以下同じ⁠⁠,昨年の,そして最初の会場でもあったピッツバーグが人口30万ちょっと(235万⁠⁠,シカゴやヒューストン,トロントはそれぞれ都市人口だけで200万人を越す大都会ですが,バッファローも30万(125万)程度ですし,ボカラトンにいたっては国勢調査上の人口が10万人を切っています(ちなみにセントルイスが35万(290万弱⁠⁠,モントリオールが190万(380万⁠⁠。ヨーロッパのほうは各国の首都クラスが並んでいることもあって総じて大都会で開催されていますが,今年の会場ピサがやはり10万人を切っていますし,ブラガが18万(83万⁠⁠,ベルファストが48万(58万)といったところです⁠⁠。

これを単純に日本の状況にあてはめてみると,大都市圏を形成している政令指定都市はもとより,日本の市の上位1割程度を占める各都道府県の中核市であれば十分YAPCクラスの国際的なイベントを開催できる可能性がある,ということになりますし,もう少し小さな都市でも,しっかりとしたPerl Mongersグループを組織できれば,規模や経験に応じて国内限定ないし地方限定のイベントくらい仕切ることはできるでしょう。もちろん近隣の複数のグループが力をあわせれば,今年のYAPC::EUのように,それ以上のことだってできるかもしれません。

誰かが旗を振ればの話ですが。

日本にはもっとあってもよいと思います

2010年6月末の時点でmixiのPerlコミュニティに登録している人がほぼ6000人。Shibuya Perl MongersとKansai Perl Mongersのコミュニティに登録しているのがそれぞれ211人,79人。Shibuya.pmのメーリングリストには600人以上が登録しているので,Perl Mongersグループのメーリングリストには入っているけれどmixiのコミュニティには入っていない,という人も一定数いるのでしょうが,それにしても国内にはまだPerl Mongersグループに所属していないとおぼしきPerlユーザが少なくとも5000人くらいはいるのでしょうし,そのなかには現在Perl Mongers空白区になっている地域に住んでいる方も少なからずいると考えられます。そのことはTwitterのプロフィール検索などからも確かめられますし,シックスアパート社が公開しているProNetの企業一覧を見れば,いまはPerl Mongers空白区となっている地域にもPerl Mongersグループの核となれそうな企業はいくつも存在していることがわかります。もちろん地元の求人誌や大学のサークル一覧などを調べれば,その数はさらに増えていくことでしょう。

もちろん可能性があるからといって何でもPerl Mongersグループにしてしまえばよい,というものでもありません。実際,世界的には過去10年で3分の2近いPerl Mongersグループが活動停止に追い込まれていますし,その整理が管理者メンバーの課題のひとつとなっています。いたずらにグループを乱立させても,管理者側の事務手続きが増えるばかりで,誰の得にもならない,という結果になる可能性も否定はできません。

ただ,国内ユーザの実態がつかめない,という現状は,さまざまなところでPerlユーザに不利益をもたらしています。Perlで仕事をしたくても,仲間がいないから大口の仕事は受けられない,とか,聞けばすぐにわかることなのに,聞く相手がいなくて結局Perlを諦めてしまうとか,地方でイベントを開きたくても,どこに話を持っていけばよいかすらわからない,とか。

いくらきれいなコードが書けるようになっても,戦力が分散されすぎて各個撃破されているようではじり貧です。肩をいからせて「我々は団結する必要がある」などと息巻く必要はありませんが,日本にはもっとPerl Mongersグループがあってもよいと思いますし,それだけの余地は十分にあると思っています。

Shibuya.pmのように質量ともに世界有数のグループを参考にしてしまうと萎縮してしまう部分もあるかもしれませんが,ブライアン・フォイ氏らが管理しているPerlコミュニティのイベントカレンダーなどを見てみれば,世界的に名を知られているPerl Mongersグループであっても,そのイベントの多くは「Social Meeting」などと銘打たれた飲み会でしかないことがわかるでしょう。実際,Shibuya.pmのように600人ものメンバーを抱えているような大きなグループは,世界的に見てもそれほど多くはありません。その大半は数人から数十人程度ですし,100人も集まったらかなりの大所帯です。Shibuya.pmの場合はまともに飲み会を開くと人数が多すぎて大変なことになってしまうので,ふだんは特に気の合う仲間同士でばらばらに集まり,グループとしてのイベントは何かきっかけがあったとき,ということになっていますが,そのやり方をまねする必要はどこにもありません。Perl Mongersグループとしては,毎年顔の見える仲間が少しずつ増えていけば,それで十分に目的は達成できています。そこからどう欲張るかは,みなさんのグループの方針次第です。

新しくグループをつくるときには

これを読んで,新しいPerl Mongersグループをつくりたいと思われた方がいるようでしたら,まずはPerl MongersグループのFAQと,同じく数百人の参加者を誇るLondon.pmでリーダーをつとめたデイヴ・クロス(Dave Cross)氏のノウハウをまとめた記事をよく読んでおきましょう。また,できればPerl Mongersグループの登録を行う前に何人か同郷の仲間を見つけておいたほうがよいと思います。

申請にあたっては,FAQにも書いてあるように,タイトルには申請したいグループ名と,新規のリクエストなのか,既存のグループを復活させたいのか,本文には,グループのリーダー名,メールアドレス,svn.perl.orgで利用したいアカウント名,グループの所在地となる都市名,県名,地方名(空欄でOK⁠⁠,大陸名(日本の場合はAsiaとしておいてください⁠⁠,国名,都市の緯度,経度,それからpm.orgにサイト(ブログツールなどを使いたい場合は自前でサイトを用意する必要があります)やメーリングリストのホスティングをお願いするかを(英語で!)明記して,指定のメールアドレスにメールを送ってください。リクエストトラッカーにチケットが切られ,自動返信メールが届くはずです。なお,このチケット対応については,一般のCPANモジュールの場合と同じく有志が自分の余暇を使って作業してくれていることですから,気長にお待ちください。わからないことがあればグループリーダー向けのメーリングリストで質問するか,IRCチャンネルで確認する手もありますが,これも時差のある話ですから慣れていない方はご注意をば。

無事に申請が通ったら,www.pm.orgのユーザグループ一覧に登録され,***.pm.orgにもアクセスできるようになります。

なお,Perlのロゴや,Perl Mongersのロゴは,法的に保護されている登録商標です。公認されたグループについてはFAQに書いてある一文を明記することで(Perl Mongers Inc.が必要な手続きを代行したものとして)使用が認められるようになりますが,それ以外で勝手に使用することは禁じられています。余計な混乱を招かないためにも,Perl Mongersという名前のグループを立ち上げるのであれば,ぜひ本家に登録をお願いしたいところです。また,その際にはJPAをはじめとする国内の関係グループにも連絡してあげると喜ばれることでしょう。

ほかの地域のグループなんて関係ない,と思われるかもしれませんが,先日設立されたHokkaido.pmのメンバーには少なからず首都圏在住の人が混じっていることからもわかるように,昔そこに住んでいたとか,親族に住民がいる,あるいは仕事でよく出張する等々の理由で複数のグループに所属している人はそれほど珍しくはないのですから。

著者プロフィール

石垣憲一(いしがきけんいち)

あるときは翻訳家。あるときはPerlプログラマ。先日『カクテルホントのうんちく話』(柴田書店)を上梓。最新刊は『ガリア戦記』(平凡社ライブラリー)。

URLhttp://d.hatena.ne.jp/charsbar/