OSSデータベース取り取り時報

第62回 「多様性時代のDB選択」報告,MySQL Database Service東京リージョン展開,PostgreSQL 13正式リリースとPGEConsの活動成果公開

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[MySQL]2020年9月の主な出来事

第61回でご紹介したとおり,MySQLをベースとしたクラウドデータベースMySQL Database Serviceがオラクルから提供され,9月24日から東京リージョンで利用可能になるなど,世界各地のリージョンでの本格展開がスタートしました。

MySQL開発元が提供するMySQL Database Service

MySQL Database Serviceの最大の特徴は,MySQLの開発チームがクラウドデータベースの開発,運用,サポートにも携わっている点にあります。他のクラウドベンダでは,オラクルが公開しているMySQLのコミュニティ版をベースに,何らかの改変を行ってクラウドデータベースとしています(改変の有無や改変箇所,内容の詳細やソースコードは公開されていない⁠⁠。

Oracle Cloud Infrastructure(OCI)でのMySQL Database Serviceは,オンプレミスで提供されるMySQLと同一のコードベースのクラウドデータベースのため,オンプレミスからの移行や,IaaS上やコンテナで管理されるMySQLへ移行する際にも互換性の心配はいりません。継続的にMySQL Database Serviceの強化が進められることとなっており,セキュリティ機能の追加や大規模データ分析基盤のMySQL Analytics Serviceの統合も予定されています。

MySQL Database Serviceはフルマネージドなクラウドデータベースで,MySQLインスタンスのプロビジョニング,パッチ適用やバージョンアップ,バックアップなどが自動化されます。MySQLサーバーの設定も動作環境に最適化された構成となっています。

オラクルが提供するクラウドデータベースというと,高額なイメージを持たれる方もいらっしゃるかと思いますが,OCIはCompute(サーバー)やストレージ,ネットワークなど,他のクラウドベンダに比べてコストを非常に抑えた価格設定になっています。MySQL Database Serviceの価格も意欲的な設定となっています。図は100仮想CPUと1TBのストレージを利用した際の価格比較です。

MySQL Database Serviceと各クラウドベンダの同種のサービスとの価格比較

MySQL Database Serviceと各クラウドベンダの同種のサービスとの価格比較

OCIの30日間無償トライアルを利用してMySQL Database Serviceを試用できます。

10月もMySQL Database Service関連のイベントが続々

MySQL Database Serviceに関してのセミナーが10月以降に予定されています。それぞれイベント申し込みページなどは現在準備中です。

日付概要
10月20日ごろオンプレミスのMySQLからMySQL Database Serviceへの移行方法&WordPressをMySQL Database Serviceで動かす方法
10月23日(金)MySQL Technology Café #10
10月27日(火)db tech showcase 2020
11月12日(木)日本オラクル株式会社主催 クラウドイベント(調整中)
11月中旬Amazon RDSからMySQL Database Serviceへの移行方法

また英語でのセミナーも複数予定されています。

日付概要
10月13日(火)
10月15日(木)
Oracle Developer Live—MySQL
(13日は日本時間の深夜開催,15日は16時~23時)
10月21日(水)Introduction to MySQL Database Service
10月22日(木)Running Drupal with Oracle MySQL Database Service

日本語版のWebセミナーの一覧はこちら英語版の一覧はこちらです。イベント個別の申し込みサイトは順次開設予定ですので,Twitterの@mysql_jpからの情報発信などをご確認ください。

[PostgreSQL]2020年9月の主な出来事

9月のトップニュースは,新メジャーバージョンPostgreSQL 13の正式リリースです。また,PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)が1年間の成果をまとめた報告書を公開しオンラインで発表会も行いましたので内容を紹介します。

新メジャーバージョンPostgreSQL 13正式リリース

9月17日にリリース候補版(RC1)が出て正式リリースはこの回には間に合わないかなと思っていましたが,なんと,RC1のたった1週間後,9月24日に正式リリースとなりました。それほど安定していたということの表れなのかもしれません。プレスリリースには日本語版もあります

新バージョン13については,この連載でも春以降に4回にわたり取り上げており第56回第58回第60回第61回⁠,正式リリースで突然に新機能や改良点が増えているわけではありません。また,記事の冒頭で紹介した「オープンソースカンファレンスOnline/Kyoto」でも,SRA OSS, Inc.の高塚さんがバージョン13の新機能解説をされていますのでぜひそちらをご参照ください。

PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアムの活動成果公開

9月3日に,PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons)2019年度活動成果発表会がオンラインで開催されこれとタイミングを合わせて報告書本編もようやく一般公開することができました。成果物リストに⁠NEW⁠⁠update⁠の印が付いた部分が今回の公開および更新分になります。部会,ワーキンググループ(WG)ごとに参加メンバがたいへん精力的に活動をしているので,単年度分の成果ですら内容的にもボリューム的にもかなり多いものになっています。成果発表会のスライド資料を最初にご覧いただいて,より深く理解したい点について,報告書本編を紐解かれるのがよいかと思います。ここでは,成果発表会で発表された内容から,興味深い事項をピックアップしてみます。

機械学習によるパラメータチューニング自動化(WG3)

PostgreSQLを最適な状態で運用するためのパラメータ設定値を決めるのに機械学習の方法を利用しようという挑戦です。複雑化したITシステムのオペレーションにAI関連技術を応用しようという取り組みがあちらこちらで行われており,いわゆるAIOpsと呼ばれる領域になりますが,これもそのひとつでしょう。この検証では,Preferred Networksが開発したOptunaを使い,パラメータ変更と性能測定を繰り返し自動実行して,性能改善の程度と収束具合を探しています。パラメータを変更する度に一定時間の性能測定をするわけですから,機械学習を使ったとしても膨大な時間が掛かっているはずです。けれど,全体が自動化されていることと,他の方法によるチューニングよりも良い結果が得られたという大きなメリットが得られています。

AWSとAzureでのマネージド型PostgreSQLの調査と検証(WG3)

AWSとAzureの2つのクラウドサービスのそれぞれで,マネージド型のPostgreSQLの特徴と性能を明らかにしようとしています。AWSでは,コミュニティ版のPostgreSQL,RDS,Auroraの3パターンを比較調査し,性能測定をしています。結果的にはAuroraの優秀さが示された形となっています。また,Azureでは,基本的なマネージドRDBサービスであるSingleServerと,拡張機能が組み込まれたHyperscale(Citus)を比較しています。SingleServerの性能測定も実施していますが,Hyperscaleの性能測定は2020年度の実施テーマになっていますので,これが出そろうのが楽しみです。

性能トラブル事例と対処法の追加ケース(WG3)

性能はデータベースの定番トラブルのひとつです。このワーキンググループでは,PostgreSQLの性能問題について,予防,検知,ケースごとの対処の観点から継続的に活動してきています。今回は,新たに追加されたケーススタディについて報告されました。報告されたケーススタディは,監視ツールが収集するイベントデータという時間と共に増えていくデータでの性能トラブルを,アプリケーション(監視ツール)のプログラムを修正するのではなく対処する方法をいくつか検証しています。

異種DBMSからのストアドプロシージャ移行(WG2)

PGECons発足から継続して活動しているワーキンググループで,異種DBMSからPostgreSQLへの移行が主たるテーマになっており,これまでの膨大な成果の蓄積があります。ただ,PostgreSQL自体が発展しているので,見直す必要がある過去の検証成果もあります。ストアドプロシージャはその代表例でしょう。PostgreSQL 11からストアドプロシージャが追加され移行がしやすくなりました。とはいえ,移行に際してはそれ以前とは異なったいろいろな注意が必要となります。今回の成果が役に立つケースは多いでしょう。

PostgreSQLのメジャーバージョンアップのノウハウ(WG2)

正常かつ安定的に稼働しているシステムでは,DBMSのメジャーバージョンアップは極力避けられる場合もあります。その様な場合,結果的にメジャーバージョンが大幅にジャンプしないといけないことも起こりえます。今回の成果報告では,サポートが終了するバージョン9.4から最新のバージョン12に一気にバージョンアップするためのノウハウが示されています。いくつかの移行の手段が考えられ,それらを比較して示している点が有益です。

新バージョンの特徴と性能(WG1)

PostgreSQLに追加された機能の検証や,新バージョンの性能特性を明らかにする活動をしているワーキンググループです。今回は,バージョン12で導入されたPluggable Storageの特徴比較と性能検証,継続的に強化されつつあるパラレルクエリの性能測定,バージョン11とバージョン12の性能を比較する定点観測が報告されています。

2020年10月以降開催予定のセミナーやイベント,ユーザ会の活動

引き続き新型コロナウイルス感染症への警戒が必要な状況の中,各種イベントがオンライン開催が中心になっていますが,通常開催のイベントもあります。オンラインか通常開催かにご注意ください。

オープンソースカンファレンス2020 Online/Fall

日程2020年10月23日(金⁠⁠,24日(土)10:00~18:00
場所オンライン開催
内容オープンソースカンファレンスは,オープンソースの「今」を伝える総合イベントとして,東京だけでなく,北は北海道,南は沖縄まで全国各地で開催していますが,2月以降はオンライン開催になっています。今回はオンラインであるメリットを活かして全国から講師を募り,参加者も全国から集まることが期待されています。OSSコンソーシアムでは,データベース部会と他部会,さらに今回もオープンソースビジネス推進協議会(OBCI)との共同企画を実施します。初日の金曜日,テーマは「企業ITのクラウドマイグレーションとOSSの役割」です。OSSデータベースに加えて,レガシーシステムで使われている言語や,ID/認証系など幅の広いテーマ設定にします。データベース関連のセミナー枠は他にも予定されています。セミナーのタイムテーブルは10月上旬に発表予定です。
主催オープンソースカンファレンス実行委員会

MySQLウェビナーシリーズ - MySQL Database Service

日程【詳細調整中】10月20日頃開催予定
場所オンライン開催(Zoom)
内容MySQLの開発チームが開発,運用,サポートを行うクラウドデータベースMySQL Database Serviceのウェブセミナーを開催します。⁠オンプレミスのMySQLからMySQL Database Serviceへの移行方法」「WordPressをMySQL Database Serviceで動かす方法」の2つをテーマに開催,詳細は近日公開予定です。
主催日本オラクル株式会社 MySQL Global Business Unit

EDB Postgres Vision Tokyo 2020

日程2020年10月5日(月)10:00~10月11日(日)21:00
場所オンライン開催
内容EDB社(EnterpriseDB)のイベントで,さまざまな事例や日本国内での取り組みが紹介されます。
主催エンタープライズDB株式会社

SRA OSS Inc. PostgreSQL / PowerGres ハンズオンセミナー

日程2020年10月15日(木)15:00~17:00(11月以降も開催予定あり)
場所SRAグループ池袋オフィスビル
内容PowerGresの全体像を理解しつつ実際に機能を体験いただくコースです。ノートPCを持参すると,インストールや設定を行うことができます。
主催SRA OSS, Inc.

PostgreSQL Conference Japan 2020

日程2020年11月13日(金)10:00~18:00
場所AP日本橋(東京駅より徒歩5分)
内容日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)主催の,PostgreSQLの総合カンファレンスです。午前は基調講演を含む2講演を予定,午後は3トラックにて12講演程度が予定されています。現時点では会場での通常開催の予定となっています。9月15日にプログラムが一部公開され,早割チケット発売も開始されました。早割は10月14日までで発売数も限定されています。
主催日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)

著者プロフィール

梶山隆輔

MySQL Sales Consulting Senior Manager。

日本オラクル(株)において,MySQLのお客様環境への導入支援や製品の技術解説を担当するセールスコンサルタントチームのアジア太平洋地域リーダー。多国籍なMySQL部門にて,オーストラリア,インド,台湾などに在籍するチームメンバーを束ね,アジア太平洋地域の25以上の国や地域でのMySQL普及やビジネスの拡大をミッションとする。


溝口則行(みぞぐちのりゆき)

TIS株式会社

OSSコンソーシアム副会長,オープンソースビジネス推進協議会(OBCI)副理事長。その他,PostgreSQLエンタープライズ・コンソーシアム(PGECons),日本OSS推進フォーラムなどにも少しずつ関与。勤務先メンバに,PostgreSQL,Zabbix,Ansibleやコンテナ技術などに強みのある癖のある芸人を抱え,タレントマネージャ業が中心になりつつある。