Ruby Freaks Lounge

第20回Mitaka.rbの作り方

前回のおさらい

前回はRuby/Railsの地域コミュニティとは何か、日本各地のコミュニティ、⁠Seattle.rb」というロールモデル、様々な開催形態についてご紹介しました。

今回は地域コミュニティMitaka.rbがどのように開催されているか、主催者の立場からご説明します。あくまで一例に過ぎませんが、コミュニティへ参加したり、ご自分でコミュニティを立ち上げる参考になればと思います。

「Mitaka.rb」とは何か

Mitaka.rbは東京都三鷹市周辺で不定期に開催されているRuby/Railsの地域コミュニティです。参加者はRuby/Rails関係者、Webサービス関係者などです。

「たのしいRuby、おいしいMitaka」をコンセプトに三鷹市周辺の飲食店を会場に開催しており、懇親会の後にLT(Lightning Talks)をするのが通例です。参加人数は20~40人で武蔵野エリアを中心に東京全域から参加があります。今年の4月が初回で8月に第四回を迎えたばかりの比較的新しいコミュニティです。

「Mitaka.rb第三回」懇親会
「Mitaka.rb第三回」懇親会
Lightning Talksにおける発表
Lightning Talksにおける発表
Lightning Talksに聞き入る参加者
Lightning Talksに聞き入る参加者
Lightning Talks後の質疑応答
Lightning Talks後の質疑応答

コミュニティ立ち上げの経緯

筆者は2006年から当時恵比寿で開催されていたRails勉強会@東京に参加していました。その後2008年1月のRails勉強会@東京第26回を誘致して、三鷹で開催する機会をいただきました。三鷹開催はこの一回だけでしたが40人近い参加があり、物理的に都心でなくても開催可能という手ごたえを感じました。

「Rails勉強会@東京第26回」開催風景
「Rails勉強会@東京第26回」開催風景

一方で自社や三鷹市の第三セクター(株)まちづくり三鷹がRuby/Rails事業を開始するなど、⁠三鷹がRuby/Railsに力を入れているらしい」という話が認知されつつある中で、現場のエンジニアの交流・発信も必要だという思いもありました。

「Rails勉強会@東京」のように本格開催するのは大変です。まずは単発イベントを行ってどのくらい地域コミュニティのニーズがあるのか聞いてみよう、というのが2009年4月開催のMitaka.rb設立総会※1でした。⁠Mitaka.rb設立総会」というイベント名はジョークであって、実態はただの飲み会でしたが、以降「次はいつやりますか?」と言っていただけたことから「Mitaka.rb」として継続開催されるようになりました。

次に、具体的な各回の開催準備についてご説明します。

各回の開催準備

「Mitaka.rb」は不定期開催、飲食店貸切、懇親会+Lightning Talksという開催形態を取っています。各回の決定事項には以下のものがあります。

  • 日程決定
  • 時間帯・進行決定
  • 会場の選定
  • 料金・人数設定
  • 二次会の有無
  • アナウンス
  • 参加者登録
  • Lightning Talks(LT)
  • 当日

以下、それぞれの項目で配慮するポイントを説明します。

日程決定

「Mitaka.rb」は不定期開催のため、主催者の仕事の負荷によって決定しています。配慮すべきポイントとしては他のイベントと重ならないようにしています。

IT勉強会カレンダーを見るとわかるように毎週イベントが開催されています。他の地域コミュニティの開催日と近かったり、ゲストスピーカーを招きたいが別のイベントに参加予定だった、ということがあり得ます。特に東京では複数の地域コミュニティに参加する方向けの配慮が必要です。

時間帯・進行決定

原則20時以降に設定しています。これは都心から移動してくる方に配慮するためです。タイムラインは以下の通りです。乾杯の後は即飲食・懇親にしており、これは20人規模では全員に自己紹介を回すのが困難なためです。

  • 19:30~20:00:開場。一部スタッフが先行して会場準備と受付を行う
  • 20:00~22:00:飲食・懇親
  • 22:00~23:00:Lightning Talks
  • 23:00:解散

会場の選定

「Mitaka.rb」のコンセプトは「たのしいRuby、おいしいMitaka」ですので、会場の選定には力が入ります。基本的に食べログで評価3.5以上の店を探しています。コミュニティでイベントが開催されることで若い人が来て活気が出る、地元の店も潤う、ということで地域共生になればと思っています。なお筆者の場合、味・サービスの確認と、内装的にプロジェクタを映せる場所があるか確認するため下見を行っています。

「Mitaka.rb第四回」会場。吉祥寺Bistro epices
「Mitaka.rb第四回」会場。吉祥寺「Bistro epices」

料金・人数設定

料金は料理+飲み放題で基本的に実費です。ただし、貸切の場合最低人数または予約人数分の料金が発生する点に注意が必要です。当日ドタキャンがあると赤字になります。20人規模で初参加の方もいる場合、1割はドタキャンが発生すると機械的に考えておくと主催者の気持ち的に楽です。金額的には予め1割を乗せた金額設定にして、余った分は二次会または名札ケースなどの文房具に充てるのが良いのではないでしょうか。

また、人数の増減については当日の飛び入り参加を考えて、事前にお店と相談しています。飲食店側もたいてい数人分予備を用意していることが多いです。また料理が大皿の場合は、食事の量は変わらないけれど飲み放題だけ人数分払ってください、というようなパターンがあります。

二次会の有無

二次会参加が10人以上になる場合、予約が必要です。その場で参加人数を確定させたり入れる店を確保するのは主催者の負担が大きいため、一次会とは別に二次会参加希望を取るのが良いです。一回締めた後、同じ会場で時間を延長するのも一つの方法です。

アナウンス

Twitterをメインの告知手段として、MLやコミュニティの公式サイトも活用しています。

  • Twitter
  • コミュニティの公式サイト
  • メーリングリスト
    • ruby-list
    • railsメーリングリスト
    • rails-tokyoメーリングリスト

参加者登録

無料のWebサービスATND(アテンド)を利用しています。⁠ATND」では告知ページの作成と参加者登録の受付が可能です。そのほか無料のwikiを使う地域コミュニティもあります。

Lightning Talks

Lightning Talks(LT)を行う意義としては技術情報の習得、自分のサービスのPRとともに、より大規模なカンファレンスに備えた練習にもなり発表者、聴衆双方にメリットがある点などが挙げられます。

基本的にTwitterやATNDでLTを募集するとともに、ゲストスピーカーとして主催者から声を掛けてお願いしています。プロジェクタは持ち込みで、ノートPCは発表者各自のものを使用しています。会場によっては声が通らないため、できればマイクがあると良いです。

「Mitaka.rb第四回」石原さんLT発表風景

「Mitaka.rb第四回」石原さんLT発表風景

LT発表資料の例:Meadowy.orgの大場光一郎さんと(株)万葉の大場寧子さん

当日

主催者は参加者とのあいさつ、飲食店とのやりとりがありますので別途受付担当の方をお願いするのがベターです。受付時に料金の徴収、名札ケースの装着をお願いしています。名札ケースには大判のものを使用しています。名刺サイズの場合、文字が小さくて近くに寄らないと読めません。大判の名札ケースの方がすぐ名前がわかり、お互いに声を掛けやすくなるようです。

会場のレイアウトが着席の場合、飲食中に主催者が各テーブルを回ったり、意図的に席替えを発生させています。参加者が「自分のテーブルの人としか話せなかった」ということがないように気を配ります。

まとめ

いざイベントを行おうとすると気になることがあれもこれも出てくると思います。そういう時「みんな大人なので」というコメントを思い出すようにしています。三鷹開催の「Rails勉強会@東京」の下打ち合わせで主催者の諸橋さんの発言でした。RubyKaigiスタッフの標語が「Matz is nice, so we are nice」であるように、主催側が「おもてなしの心」を持って接すれば参加者もRubyist、大人力を発揮して協力してくれるはずです。

本記事がRuby/Railsの地域コミュニティ運営事例として参考になれば幸いです。

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