ソースコード・リテラシーのススメ

第4回インターネット上の情報とのつきあい

近畿地方では梅雨も明けて真夏の日射しが降り注いでいます。私が子供だったころは、夏休みにプールで泳いで真っ黒に日焼けすれば冬も風邪を引かない、などと言われていましたが、最近では子供の日焼けも将来のシミやソバカス、皮膚癌の原因になりうるので、外で遊ぶ時は日焼け止めを塗るべきだと言われているとか。こんなところにも情報の賞味期限があるのだなぁ、と考えてしまいました。

さて、前回まではソフトウェアに付属の各種ドキュメントを中心にその役割や読み方を紹介してきましたが、今回は趣向を変えてインターネット上のさまざまな情報の読み方について考えてみたいと思います。

インターネット上の情報の注意点

Googleなどの検索エンジンのおかげで、インターネット上の膨大な情報をきわめて効率よく検索できるようになりました。最近では、何か調べものがある時は、まず検索エンジンに適当なキーワードを入力してみるのが習慣になっている人も多いでしょう。これらの検索エンジンのおかげで、情報のありかを探す苦労はほとんど無くなりましたが、大量の検索結果の中から有意義な情報をどのように抽出するかはユーザに委ねられています。

検索エンジンの側でも、指定したキーワードの位置が一目で分かるように表示を工夫したり、ページランキングなどの技術を使って質の高いページを上位に表示するような支援をしてくれますが、検索エンジンはあくまで検索した結果を表示するだけなので、ありふれたキーワードを指定すれば数万ページがヒットして、あまりの情報の多さに呆然とすることがあります。

膨大な情報の中から自分にとって必要な情報を素早く見つけ出すことは容易ではありません。今回は、そのような際に心がけるべきポイントをいくつか紹介してみます。

情報の賞味期限に注意

LinuxやOSSの場合、変化がかなり急速なので、古いバージョンについて記載された情報はそのままでは適用できないことがよくあります。賞味期限の切れた情報をつかまないためには、その情報が記載された日付や、扱っているソフトウェアのバージョンを確認することが必要です。とくにLinuxの場合、よりよいものにするためには過去との互換性はそれほどこだわらない、という立場を取っているので、ある時点では正しかった情報も、バージョンアップにつれて間違ったものになっているということがよくあります。

たとえば、各種ドライバをカーネルとは独立したオブジェクトファイルとして用意しておき、必要に応じて動作中にそれらを組み込んで新しい機能を利用可能にするモジュール機能の場合、モジュールを操作する際のコマンドは、名称(modprobeやdepmod,lsmod など)こそ変っていないものの、2.4系カーネルではmodutilsパッケージとして提供されていたのに対し、2.6系カーネルではmodule-init-toolsパッケージに変更され、内部的には全面的な書き直しが行われています。そのため、2.4系カーネル用のmodutilsについての解説、とくに設定ファイルである/etc/modules.confについての解説は2.6系カーネル用のmodule-init-toolsでは適用できません(module-init-toolsでは設定ファイルは/etc/modprobe.conf)。

Linuxの場合はやや極端ですが、どのようなソフトウェアでも、バージョンが更新されるごとに何らかの変更が行われているので、インターネット上で見つけた情報がどのバージョンを扱っているのかを確認することは必須です。

情報の具体的な賞味期限は一概には決められませんが、古いバージョンを扱っている数年以上前の記述は役に立たない可能性が高いでしょう。

情報の信頼性に注意

最近はブログや日記のように、HTMLファイルを記述しなくても簡単にインターネット上に自らのページを公開できるようになりました。Googleなどの検索でも、検索結果の大半がこの種のページで占められていることも稀ではありません。これらのページのおかげでインターネット上で利用可能な情報が爆発的に増えたことは言うまでもありません。しかし、公開が簡単に行える分、これらのページの中には裏づけに乏しい情報も散見されるようです。

最初に紹介した情報の賞味期限の問題は、日付さえ見れば誰でも判断できると思いますが、それ以外の観点から情報の信頼性を判断するのは、初心者の方には多少難しいかもしれません。しかしながら、そのページに記されている情報が何に由来するものかページの著者がどの程度丁寧にその情報を記述しているかといった視点から眺めれば、記述されている情報にどの程度の信頼を置いていいかを判断できる場合が多いように思います。

そのページに記されている情報がどこから得られたものなのか、具体的には、著者が実際に体験したことなのか、ソフトウェアのソースコードやドキュメント類を調べてわかったものなのか、メーリングリストなどで尋ねてわかったことなのか、あるいは Googleなどを調べた結果の孫引きなのか、等がわかれば、その情報がどの程度信頼できるかはおのずと明らかになるでしょう。逆に言うと、情報源がよくわからない情報はあまり信頼できるものではなく、著者が自らの情報源をきちんと紹介している情報ならば信頼性が高いと判断できる、ということです。情報源がわかっている情報ならば、情報源にさかのぼって調べることで、さらに新しい知見を得ることも可能になるでしょう。

また、著者がどのような調子でそのページを記述しているかを考えることも信頼性の判断に役立つでしょう。自分用のメモ程度のつもりで書いているページは概して粗略ですし、自分が経験したこと、見つけたことを広く知って欲しいと思って書いているページは他者にもわかりやすいように書いてあるように感じます。

複数の情報を検討する

検索エンジンで見つけた結果は、最初の1つが自分の求めている答だったとしても、それだけで満足するのではなく、関連する複数のページを参照するようにしましょう。複数のページが同じ内容を記載していればその情報は信頼性が高いと判断できますし、それぞれが矛盾する内容を記載していれば、なぜそのような矛盾が生じたのかを検討することで、より理解が進むことも期待できます。

このように、同じ質問に対しても時代や状況によって正しい答が異なる場合がよくあります。その意味でも、得られた最初の答だけに満足するのではなく、2番目以降の答も検討する態度を持つことが、インターネット上の情報を利用する際には必要となります。

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