YAPC::Asia Tokyo 2015×gihyo.jpコラボ企画 ― YAPC::Asia Tokyo 2015の作り方

第2回 設計編

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予算! 予算! 予算!

ここまでで「いつ,誰のため,どのようなイベントを行うか」ということが大枠で見えてきました。ここからは純粋な設計ではなく若干実装部分にもかかってくるタスクがいくつか出てきますが,この辺りがちゃんとできていないとより詳細な内容に踏み込んでいけないので,今回の「設計」の記事に含めます。

次に何を考えないといけないかと言うと……みんな大好き予算です。予算が決まらないと今後のほぼ全てのタスクに血を通わせることができません。例えば何人ゲストを呼べるのか,食事は出すのか,同時通訳を入れるのか,デザイン費等にどれだけのコストをかけられるのか,等とにかく予算ありきの決定事項がたくさんあります。その中でも会場にどれだけの費用をつぎ込んでいいのかはイベントそのものを開催できるかどうかが直接関わってくる重要事項です(これについてはこの次のセクションで触れます⁠⁠。

予算はイベントの内容によって大分違いますので一概には言えませんが,YAPC::Asia Tokyoは過去9回の開催の経験により様々な平均値がわかっていますのでその値を使用して大枠の予算が計算できます。なお本記事に書いている値はどれもこれも大雑把な平均値であり,実際には様々な因子により変動します。

では早速計算してみましょう。

YAPC::Asia Tokyoを開催するには参加者1人あたりにつき約1万円のコストがかかる事がわかっていますので2,000人が参加する場合は経費は約2,000万円です。ちなみにこれまでの経験から,予算の半額前後が会場費およびその回りのために使われる事もわかっています。大変ですね!

収入に関してもある程度の概算を行う事が可能です。これまでの経験から参加者1人あたり3,500円の収入が見込めます。これはチケット販売枚数だけでなく,ゲストスピーカー等の招待客も含めた全ての来場者でチケット売上額を割って出した平均値です。ということは2,000人の参加者が集められる場合,チケット収入は700万円です。あれ……経費は2,000万円で収入が700万円だと……1,300万円の赤字ですね。これだとイベント開催自体が無理になってしまいます。なんらかの形で収入を増やすか,経費を大幅に削るしかありません。

経費を削ることはそれほど難しくありません。でもそれは同時に参加者が楽しみにしていたり,あったら便利だと思っている催しをカットしていくことになります。それでは本末転倒ですね。そこで登場するのが協賛スポンサーの皆様です。スポンサーをしてくださる皆様には本当足を向けて寝られません!

スポンサーとして参加していただく形は様々で,単純にお金に換算はできません。どんな形であっても協賛していただくのはありがたいのですが,ここではあくまで予算の予想をたてているのでスポンサー協賛金の額面の話をしますと,これまでの開催ではスポンサー企業1社あたりからの平均収入は30万~40万となっていました。ということは1,300万円の予算不足がある事がすでにわかっているため,約40件~50件のスポンサーが必要となることがわかります。

40件のスポンサーが必要ということは,説明のためにそれだけの会社を訪問する必要があります。単純計算で2ヶ月以上かかる計算となりますので,そのための時間をスケジュールに組み込む必要があることがわかりました。

会場

さて,予算の大枠が見えてきたところでいよいよ会場探しです。なお現実的には予算決定を待ってから行動を起こすのではなく,最初から全て同時並行で動いています。

前項にも書いたようにこれまでの経験から会場関連の予算は全体の約50%です。ということは会場費は約3日間で1,000万円以内に収めるべきなのがわかります。そのうえで以下の条件を満たしている会場を探していくことになります。

  • 東京都近郊で2,000人を同時に収容できる
  • 複数トラックを同時に行うために近くに部屋が複数個ある
  • それぞれの部屋の大きさが適度である
  • 立地がそれほど悪くない

探してみるとすぐわかるのですが,東京近郊で予算とこの条件を満たす会場というのは実に少ないです。今回YAPC::Asia Tokyo 2015のために会場を探してみた時にはコネも使い様々な施設に問い合わせをした結果,2件しか見つけることができませんでした。それ以外のところは会場費をあと500万円積むとか規模を縮小するというような事をしないと,利用することが難しい施設ばかりでした。

さて,この条件に当てはまる2個しかチョイスがないということは……はい,当然他の皆さんもみんなこの施設を使いたがるわけです。コンタクトを取ってみたところ,まっさきに「2015年ですか? 2016年じゃなくて?(意訳⁠⁠」という反応をいただきました。前回までのYAPC::Asia Tokyoのような1,000人規模でも1年前には予約をしないといけなかったのですが,やはりこのサイズになってくると1年中何かしらイベントが入っていてなかなか予約は難しいようでした。そこで駄目元で「とりあえず木曜,金曜,土曜の3日間というスパンでスケジュールが空いたら連絡をください!」とだけ言い付けて後は運を天に任せることになりました。

結果的には皆さまもご存じの通り,奇跡的にスケジュールが空いたという連絡があったため今年の会場は無事ビッグサイトに決まったのです。

まとめ

というわけで今回は,カンファレンスで具体的に何をするのかを決める前に考えないといけない諸々について説明してみました。会場と予算,期間,狙っているオーディエンス辺りの大枠が決まるとだいたい一安心です。ここまで来るとかなり現実的な限界を意識しながら,カンファレンスの内容の企画等に入っていくことができます。

次回は

次回はスポンサー対応を含めた「実装編」に入っていく予定です。

著者プロフィール

牧大輔(まきだいすけ)

オープンソース技術を使ったシステム開発をメインに,講師,執筆活動などを行う。2011年,Perlコミュニティに多大な貢献をもたらした人物に贈られるWhite Camel Awardを受賞。本業の傍ら2009年からのほぼ全てのYAPC::Asia Tokyoで主催をつとめ,その中で現運営母体のJapan Perl Associationも設立。LINE等を経て現在HDE, Inc.勤務。