YAPC::Asia Tokyo 2015×gihyo.jpコラボ企画 ― YAPC::Asia Tokyo 2015の作り方

第3回 実装編

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ゲストスピーカーとの交渉

今回のYAPC::Asia Tokyo 2015は我々がこの数年間目指していた「多様な技術コミュニティの人達が集まるお祭り」の集大成にしたいという運営としての密かな野望がありました。これを実現するため様々な人に助言をいただき,本当に幅広いジャンルの方々に声をかけさせてもらいました。

ゲスト候補の方々に登壇を打診し始めたのはYAPC::Asia Tokyo 2015の計画が始まった直後の2014年11月頃です。この頃にまずその時点で少しでも「来て欲しい!」と思った方々10名弱に予定を伺うという形でまず意向を聞いていました。開催8~9ヶ月前くらいの事です。ほとんどのゲストは海外からの方でしたので,細かい条件はともかく来日する意思があるということと,スケジュールの押えだけはこれくらい前にしておいたほうが良いと個人的には思っています。

ゲスト招聘の最初の一手はまずとにかく一度打診してみることです。今回打診した方々の中には元々つながりのある方々もいましたが,大多数はその際初めて連絡をする方々です。一切のコネはありませんがとにかくまず1回連絡をしてみるのです。イベントが盛り上がるためならとにかく行動あるのみ! 断られたところで少なくとも損はしません!

ちなみに打診したゲストの人達全員が実際に来られるわけではありませんし,やはりある程度は来てほしい優先順位というものは存在します。手当たり次第声をかけてしまい予想より多くの方がやる気になってしまった場合はオーバーブッキング状態になってしまいます。そこで折角来てくれると言ってくれたのに断るのは辛いので,このような場合はいきなり⁠Invite(招待)⁠というような表現を避け,⁠Preliminary(予備・準備的な)⁠⁠Inquiry(質問・問い合わせ)⁠という表現で,まずはスケジュールの空きの確認としてとどめるだけにして,正式な招待状はまた別途送付するのが楽です。以下,私が実際に送ったメールの一部抜粋です。

Subject: Preliminary Inquiry About Your YAPC::Asia Tokyo 2015 Attendance

It's still 2014, but yes, we're already working on YAPC::Asia Tokyo 2015 :) We just got the Tokyo Bigsight venue for 8/20-8/22 2015, and we have a capacity of 1800+ (!) people. We are aiming to gather around 2000 attendees.

This year we're working on this even earlier than previous years because of a few reasons -- but most notably: this is going to be the last YAPC::Asia Tokyo. Unlike previous years where we were just hoping to get new organizers, JPA is calling it quits -- at least in the YAPC format... I don't know if we'll do some other type of conference in the future.

We intend to send you a formal invite come next year, but for now we just wanted to check your availability. Let us know if you can make it. We hope to see you soon!

このようにして打診をいくつかした後,予定が合いそうな方々の中からゲストを選んでいきます。

蛇足ですがこれまでの経験上,最悪の場合でも登壇お願いメールを無視されることはあっても怒られるような事はまず滅多にありません。誠意を持ってメールをすれば断られるにしてもちゃんと丁寧な返事がきますので,皆さまも恐れずに自分の主催するイベントでしゃべってほしい人に連絡をするべきだと思います。

その後まず最後のYAPCということで,Perlの産みの親であるLarry Wall氏はすぐ決定しました。またPerl 5のPumpking(開発責任者)であるRicardo Signes氏もすぐに決まりました。交渉に時間がかかったのでイベント発表当初には公表できませんでしたが,Perl 6の主要開発スタッフであるJonathan Worthington氏も決まりました。

ここまではいかにもYAPC(Yet Another Perl Conference)という感じですが,もう一人すぐ決まったのはGo言語の開発に携わっているBrad Fitzpatrick氏です。氏はもともとPerl界でも有名な方でしたのでまんざら縁が無いわけでもなかったのですが,実は彼を招聘することは1年以上前から密かに目論んでいたことだったのです。彼が2014年のGoconという別のイベントで来日していた際,別のミートアップに偶然彼が顔を出すと聞きつけた筆者は即座に予定を変更しそのミートアップに参加することにしました。彼とは面識はありませんでしたが,ガンガン話をしてついでに「YAPC::Asia Tokyoを運営していた」⁠そのうち機会があったらまた呼んでもいいか」などと話しておいたのです。その後ゲストスピーカー選定の際に「は,今だ!」と思い彼にオファーを出したところ快諾していただきました。個人的には全ての布石がピタリとはまった気持ちの良い瞬間でした。

ここまでは外国の方を中心に考えてきましたが,最後のYAPC::Asia Tokyoにふさわしい国内の大物も呼びたいという事も考えていました。一応面識はあるものの大したコミュニケーションを取った事もなかったのですが,ゲスト招聘モードの自分には怖いものなぞありません。スタッフと軽く相談したうえですぐにまつもとゆきひろ氏にメールをしました。ちょっと時間はかかりましたが,無事ゲストスピーカーとして招待する事ができました!

YAPC::Asia Tokyo 2015の軸となるゲスト達が決まったところで,さらに2015年2月~4月にかけて今度は自分の直接の観測範囲にいない人達にも声をかけようと色々と手を打ちはじめました。知り合い通して「誰かその話を聞いてみたいスピーカーはいない?」⁠誰か知り合いでおもしろそうな話をしてくれそうな人はいない?」など聞いて見て回り,直感で面白そう! と思った人には全て一度お伺いのメールを出しました。実はかなりの大物にもメールを出したところ「行きたいけど残念ながら予定が合わない……」⁠ぜひ来年声をかけてくれ!」と言われました。来年ないんですが……なにか他のイベントを主催したらまた絶対に声をかけてやる! とリベンジを誓いました。

そんなこんなや他のスポンサー関連のツテなどでGitHubのBen Lavender氏,そしてCoreOSのKelsey Hightower氏の参加が決まりました。お二人は正直全く個人的にはつながりがなかったのに,快く招聘に応じていただけてかなり興奮しました。さらにGitHubつながりでBen Ogle氏,そして現在Pivotalで活躍されているCasey West氏も来日していただけることになり,ついにYAPC::Asia Tokyo 2015のゲストスピーカーラインアップが決まったのです。

著者プロフィール

牧大輔(まきだいすけ)

オープンソース技術を使ったシステム開発をメインに,講師,執筆活動などを行う。2011年,Perlコミュニティに多大な貢献をもたらした人物に贈られるWhite Camel Awardを受賞。本業の傍ら2009年からのほぼ全てのYAPC::Asia Tokyoで主催をつとめ,その中で現運営母体のJapan Perl Associationも設立。LINE等を経て現在HDE, Inc.勤務。