YAPC::Asia Tokyo 2015×gihyo.jpコラボ企画 ― YAPC::Asia Tokyo 2015の作り方

第3回 実装編

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スタッフ

この連載の最初の回では主催の筆者と一緒に企画・準備をしていただくコアスタッフの方々を紹介しましたが,当然当日のオペレーションを10人強で回すことは不可能ですので,例年通り当日の準備・運営を手伝ってもらうボランティアスタッフを募集することになりました。今回は5トラックが確定していたので一部屋に4~5人のスタッフを常駐させるのと,受付スタッフを10人前後配置するとして,そこに交代要員の分も追加すればだいたい50人くらいを考えてしました。

募集をGoogle Formを使い,一月ほどの間に連絡をいただいた方々に手伝ってもらう事になりました。蓋を開けてみたところちょうど55名の応募があり,一安心といったところでした。ちなみにこの応募プロセスでは「Google Formから応募があったらno-replyからメールが来る」という形にしたかったのですが,そのためのGoogle Formのプラグインを設定するのが一番難しかったです……。

ボランティアスタッフはとにかく数が多いので,イベント当日に会って終わったら解散ではさすがに何もつながりが生まれません。最低限知り合うきっかけを作るため,事前に顔合わせのための飲み会を開催するようにしております。今年はイベント開催前にコアスタッフ,ボランティアスタッフ,そしてネットワークを担当していただいているCONBUスタッフから都合の合う方々を招いての飲み会を都合2回行う予定です。

この飲み会はまずお互いの顔を知ってもらう事が最も重要な目的です。特にコアスタッフの顔を知っていただかないと当日の運営にも関わってきますので,ここで紹介をします。またCONBUの皆さまも当日は違うエリアで仕事をされているのでなかなか知り合いになる機会も少ないため,紹介をします。あとはスタッフ同士お互いに可能な限り前持って一通りの交流を持ってもらう事によって,当日に誰も知らない中でいきなり仕事をしなければならない状況が生まれないようにしています。

ノベルティの発注

Tシャツ等のノベルティの発注は運営側でかなり気を遣う事の一つです。なにせ本番の日から逆算して考えた締め切り日を逃してしまうと,当日必要なノベルティが届かないと言うことが充分ありえるのですから。逆に万が一余るほど発注してしまった場合は無駄な出費となってしまいますし,イベント後の処理も問題になってきます。

Tシャツに関しては「個人個人でサイズが違う」という悩ましい問題があります。サイズの合わないシャツをもらっても迷惑なだけですので,なんらかの形で参加者が望むサイズを提供する必要があります。

YAPC::Asia Tokyo ではTシャツは大まかにサイズごとの発注をしておいて,来た人から自己申告で自分に合ったTシャツサイズを持って行くというオペレーションにはしていません。100%全ての来場者に正しいTシャツサイズを渡すというのは無理にしても,可能な限り多くの来場者に希望するサイズのTシャツを持って帰って欲しいとの思いから,チケット購入の際に前持って申告してもらっています。この情報から,チケット販売終了のタイミングに合わせて合計値を出したうえで多少のバッファを追加して発注をかけています。なおこのバッファは筆者による長年の経験と勘によって算出されています。

スタッフ用のTシャツも同様に前持って申告された数に微妙な調整を加えてからの発注をしています。

Tシャツサイズはついつい聞き忘れてしまうものなのですが,一旦チケットを売り始めてしまった後に気づいてもそうそううまくリカバーできないので,事前にこの辺りのオペレーションを考えておくとよいでしょう。

ちなみに筆者は初めてYAPC::Asia Tokyoを主催した年はいくつかのノベルティを多く注文しすぎ,大赤字を出してしまいました。この反省をその後活かして可能な限りの厳密なカウントと微調整でロスを最小に抑えるようになりました。

予算管理

他のカンファレンスの予算管理を見たことはないのでどのような方針で管理しているのかわかりませんが,YAPC::Asia Tokyoでは予算の段階での黒字がしっかり出るように努めています。利益を出すことが目的ではないのですが,全てを滞りなくすすめるためには経費を予算内におさめることが予算管理責任者としての最重要事項だと思っています。

さらにYAPC::Asia Tokyoではこれまで数年間それなりに高額な予算を扱ってきましたが,YAPC::Asia Tokyoは継続的なビジネスではないので開催する際に上がる売上の中で全ての経費をまかなう必要があります。つまり赤字が出てしまうとそれを後の売上で補填することはできないのです。そもそもどれくらいのスポンサーを募集するか,チケットの代金をいくらに設定するかを考えるうえで,予算にある程度のバッファを作れるように計算しているのですが,経費とは必ず予想以上にかかるものです。

もちろん不必要な経費は削りますが,どうしても必要なものなら来場者達のためにも削るわけにはいけません。そうして結局経費は予想以上にかさむのです。そこで私の管理する予算表(Google Spreadsheet)には,毎年必ず全体予算の10%前後のバッファを最初から入れ込んでいます。

全体予算の10%前後のバッファを最初から入れ込んでいる

全体予算の10%前後のバッファを最初から入れ込んでいる

これを筆者は「下駄」と呼んでいるのですが,この値だけは全ての経費と収入が確定してから外します。そうすることによって早めに視覚的に,経費が予算の限界に近づいて行ってるのかどうかを確認することができます。

また収入に関してもチケット売上は蓋を開けてみるまでわかりません。ありがたい事にYAPC::Asia Tokyoのチケットは毎年それなりに売れていますが,だからといって運営側は今年もまた必ず売りきれるつもりで運営していると,予想が間違った時に取り返しがつきません。そこで最後まで未確定のチケット収入に関しても希望と現実を混ぜないように,チケットが実際に売れた数から計算した値,完売した場合,7割しか売れなかった場合等を必ず表示するようにしています。

チケットが実際に売れた数から計算した値,7割しか売れなかった場合,などを表示

チケットが実際に売れた数から計算した値,完売した場合,などを表示

ここまで神経質になるのも,やはり最初の開催で大赤字を出してしまったせいであるとは思います。その際は他に方法がなかったためいくらか個人的に補填しましたが,その後の予算管理体制を整えるきっかけになってくれたので比較的安い授業料だったと思っています。

おわりに

これら以外にも大小様々な準備が同時並行で走っています。カンファレンス運営にこれから望む方々に,少しでも参考になれば嬉しいです。

著者プロフィール

牧大輔(まきだいすけ)

オープンソース技術を使ったシステム開発をメインに,講師,執筆活動などを行う。2011年,Perlコミュニティに多大な貢献をもたらした人物に贈られるWhite Camel Awardを受賞。本業の傍ら2009年からのほぼ全てのYAPC::Asia Tokyoで主催をつとめ,その中で現運営母体のJapan Perl Associationも設立。LINE等を経て現在HDE, Inc.勤務。