概要
「役に立たないプログラムには価値がない?」
「プログラミングは仕事以外でやりたくない?」
本書には,アスキーアート化,自己生成,縛りのあるプログラミングなど,実用性を追求するだけでは出会えないテクニックが満載。プログラミングが好きな方はもちろん,プログラミングが苦手な方でも楽しめる遊びをIOCCC入賞常連の著者が紹介します。ちょっぴり不思議なプログラミングの世界をのぞいてみませんか。
【特別寄稿】序文:まつもとゆきひろ
こんな方におすすめ
- プログラミングが好きな方
- IOCCC,TRICKなどの一風変わったコンテストに興味がある方
本書に寄せて
子供のときの気持ちを思い出してみましょう。サーカスを見に行きました。猛獣使いに空中ブランコ,ナイフ投げ。素晴らしい技にワクワクします。これだけの技術を身につけるにはどれだけの訓練が必要なのでしょうか。感動します。でも,彼らがあまりにも自然にあまりにもかんたんそうに技を披露するのを見て,もしかしたら,ひょっとすると自分にも隠された才能があって,やってみたらあっさりできてしまうんじゃないだろうか,と思います。そうしたら自分もヒーローになれるかもしれない。期待に胸が膨らみます。
猛獣は身近にいないし,空中ブランコも用意できそうにありません。そこでナイフを投げてみることにしました。人を狙うのは危ないので(その程度の分別は持ち合わせています),ダンボール製の的を作って,それを狙うことにします。しかし,何度やっても狙ったところに刺さりません。それどころか的から遠く離れた壁にナイフが突き刺さって穴を開けてしまい,母親にひどく怒られてしまいます。全然うまくいかないし,ちっとも楽しくありません。とうとうあきらめて投げ出してしまいました。すごく悔しい思いでいっぱいです。
よくありそうな思い出ではないでしょうか。これは私自身の実際の経験です。おバカな子供だったんですね。最近も私の子供がまったく同じようなことをしていました。傍から見るととてもかんたんで楽しそうに見えることが実はたゆまぬ訓練の賜物で,素人が容易に真似できるものではないことは,子供の遊びに限らずしばしば起きることです。たとえば自転車に乗ることも,自動車を運転することもそうですし,私自身が日常的に行っているプログラミングだって,未経験者から見たらとても真似できない「技」に見えることでしょう。
本書はプログラミング経験者から見てもさらに超越的な技巧を凝らした「プログラミング界の大サーカス」と言ってもよいでしょう。正直言ってかんたんに真似できるものではありません。しかし,サーカスの観客のほとんどが自分では曲芸をしないように,それを鑑賞するだけでも十分に楽しめます。おまけにそのタネの解説までついています。
それに,もしかしたら,ひょっとすると,あなたには隠された才能があって,やってみたら本書のような超絶技巧をあっさり使いこなせるようになるかもしれません。
そんなあなたの知らない世界へようこそ。
2015年7月
まつもとゆきひろ