概要
「コミュニケーションにおける不確実性を減らすには?」「技術的負債を解消する方法とは?」「経営陣とエンジニア間の認識のずれを解消するには?」
エンジニアリングにおける課題を解決する思考の整理方法やメンタリング手法を, さまざまな企業の技術組織アドバイザリーを務めている著者が解説。
若手を戦力として育て上げ, 成長する組織を設計・ 運営するためにおすすめの1冊です。
こんな方におすすめ
開発チームの生産性を上げたいエンジニア 社内組織を改善したい経営者
著者から一言
若手の頃, Webエンジニアとしての仕事は「コードを書くことだ」と単純にそう思っていた気がします。良いコードを書きたい, 悪いコードをリファクタリングしていきたいし, 何よりそれによってより良い社会になっていくことを目指していました。
より良いアーキテクチャで品質の高いコードを書くにはどうしたらよいのだろうか。そう考えていくうちに, 人々の思考の癖や人間関係, ビジネス環境の中で生まれてくる不合理が, 形を変えてコードの中に漏れ出ているように思えてきました。
そして, 問題解決のためには, コードだけでなく, 人々の思考・ 組織・ ビジネスの「構造」こそリファクタリングしなければいけないと考えるようになりました。それこそがエンジニアリングの本質なのだと気がついたのです。
エンジニアを取り巻く環境には, 様々な問題があります。
なぜ, いつまでも堂々巡りの議論をしてしまうのか
なぜ, 上司と部下のコミュニケーションは失敗するのか
なぜ, イケてるはずのアジャイルやリーンがうまくいかないのか
なぜ, プロジェクトは炎上し, スケジュール通りに終わらないのか
なぜ, 技術的負債が問題となるのか, その正体はなんなのか
なぜ, 経営者とエンジニアの認識が食い違うのか
これらの根源は, 「わからない」ことに対する不安です。未来や他人の考えていることは絶対にわかりません。ですから, 問題なのはちょっとしたきっかけから作られた「構造」であって, 誰かが悪いわけではないのです。しかし, 長らく続いた不況のためか, 日本社会は「わからないもの」に向き合う力が弱くなっているように思います。
けれど, 先が見えないという「不確実性」をどう扱うかを知ることができれば, 「不安」は「競争力」に変わります。エンジニアリングに必要な思考は, まさにこの不確実性を力に変えるという点なのです。
本書は, 「不確実性に向き合う」というたった1つの原則から, エンジニアリング問題の解決方法を体系的に捉える組織論です。わからないものを避けるという本能を, どのように理解し, 克服し, 導くのか。テクノロジーを力に変えたい経営者やエンジニアリーダー, そして, 今, かつての私と同じように悩んでいる人のチャレンジへのきっかけとなればうれしいです。
広木大地(ひろきだいち) 株式会社レクター取締役。
1983年生まれ。筑波大学大学院を卒業後、2008年に新卒第1期として株式会社ミクシィに入社。同社のアーキテクトとして、技術戦略から組織構築などに携わる。同社メディア開発部長、開発部部長、サービス本部長執行役員を務めた後、2015年退社。
現在は、株式会社レクターを創業し、技術と経営をつなぐ技術組織のアドバイザリーとして、多数の会社の経営支援を行っている。