概要
昭和の常識,もうおしまい! 累計20万部突破「問題地図」シリーズ著者・沢渡あまねの新境地
「郵送」「印刷して配布」
「とりあえず打ち合わせ」
「手書き」「メールを送ったら電話で確認」「押印」
「メール添付で圧縮してパスワードつけて,パスワードは別送」
「ひたすらテレアポ」「とにかく相見積り,コンペ」
「年末年始の挨拶や表敬訪問」「スーツ&ネクタイ」「ダイバーシティごっこ」
ちょっと待って,それってホントに必要ですか?
仕事のスピードを遅くし,時間をムダにし,成長機会を奪い,社外の人とのコラボレーションを邪魔し,優秀な人を遠ざける慣習やルール――それが,“仕事ごっこ”。
これまでの常識を,シニカルなものがたり+ツッコミで,笑い飛ばしながらアップデート!
こんな方におすすめ
- ムダだらけ・意味不明な慣習やルールに嫌気がさしているすべての方
著者から一言
むかしむかし,あるところに小さな王国がありました。かつてはさかえていたものの,最近ではいきおいがおとろえ,思うようにかせぎをあげられなくなってきました。
ある時,王様は「はたらきかたかいかく」をめいじました。
「いままでのはたらきかたをよくしてほしい。みんなに,いきいきしてほしい」と思ったのです。
またある時は「いのべーしょん」をかかげ,国の民にはっぱをかけます。
ところが,民たちはいっこうにかわろうとしません。それもそのはず。
「だって,そんなことしたってボクたちトクしないし」
「仕事がへるわけじゃないし」
「まっぴらごめんだね。むしろ,よけいな仕事がふえそうだもの」
こうして,いままでのやりかたを続けました。あるものは,せっき時代とかわらない仕事のやりかたを,またあるものは貴族のお作法そのままに,ゆっくりのんびり仕事をしています。
やがて,いしきの高いわかものや,やる気のあるものは,海のむこうにいってしまいました。
いったい,この国はどうなってしまうのでしょうか。
「がーっふぁっふぁっふぁ」
海のむこうの国から,高らかなわらいごえが聞こえてきました。
私たちは「仕事ごっこ」にまみれている!
「働き方改革」「イノベーション」「生産性向上」
ある日突然,上から降ってきたこれらのマネジメントキーワード。政府の仰せのまま? あるいはどこぞの外資系コンサルタントに言われるがまま?
背景はよくわからないものの,とにかく何か考えて,経営層に提案しなければならないらしい。あなたはさっそく,次のような段取りをします。
とりあえず,社内の関係者を集めて,情報共有のための会議をしよう。
↓
まずは,そのための説明資料を作らなければ。
↓
相当な人数になりそうなので,外部の貸し会議室を借りないといけない。
↓
そのための稟議を回覧しないと。
↓
まずは課長のハンコをもらわなくては。
↓
おっと,貸し会議室の提供会社から見積もりをもらわないといけない。
↓
3社から相見積もりをとって,最安値のところから見積もり原本を取り寄せなければ……。
ざっと,1ヶ月……ちょっと待った!
- そもそも,その会議をする必要ありますか?
- キレイな説明資料,必要ですか? しょせん社内なのに?
- その会議,対面でする必要ありますか?
- わざわざ,稟議を回すのですか? 会議室を借りるだけで?
- ハンコじゃないとダメな理由は? サインや電子で済ませられるのでは?
- 相見積もりにかける時間とコストが無駄では? 取引先にタダ働きさせるよね?
- 紙の原本,本当に必要ですか?
このような,ビジネスの場においてあたりまえとされているけれども,ムダに私たちの足をひっぱる慣習――それが「仕事ごっこ」です。
【仕事ごっこ】
- 生まれた当初は合理性があったものの,時代や環境や価値観の変化,および技術の進化にともない,生産性やモチベーションの足をひっぱる厄介者と化した仕事や慣習。
- コラボレーション,ひいてはその組織とそこで働く人の健全な成長を邪魔をする形骸化した仕事や慣習。あるいは、仕事のための仕事。
「仕事ごっこ」は迅速なコラボレーションを阻害する
これからの時代,自社単独あるいは自部署だけで問題解決をしたり,新たなビジネスを生むのは難しくなりつつあります。少子高齢化による労働力不足で,社外の力も借りなくてはなりません。コラボレーション,すなわち他との協業こそが組織力の源泉。
- 社外(取引先,お客さん,地域社会,海外など)と。
- 社内の部署間で。
- 会社を越えた,同業他社の人たちと。
- 自社でともに働く候補者(新卒,中途採用,派遣社員など)と。
これらのパートナーとコラボレーションを迅速にできるかどうか? それが組織の命運を決めます。
あなたたちが「仕事ごっこ」で苦戦している間,競合他社はとっと意思決定し,とっとと決裁しているかもしれません。その結果,よきパートナーとささっとつながり,いちはやく成果を出すことができます。
さて,あなたは意思決定や行動のスピードが速い相手と遅い相手,どちらを信頼できますか? どちらといっしょにお仕事したいですか?
こうして,どんどん成長機会が奪われていく
もう1つ質問です。あなたの(あるいはあなたが所属する組織の)本業は,資料を作ることですか? 会議に参加することですか?
- その時間,お客さんのところに行って(あるいはリモートでつないで),企画を進めるのに使ったほうがいいのでは?
- その時間,自己研鑽や研究に費やしたほうがいいのでは?
- その集中力,ほかのことに使ったほうがいいのでは?
- そのコスト,外注費用に回して業務改善を進めたほうがいいのでは?
- そのぶん,早く帰って休んだほうがいいのでは?
- そのぶん,有給休暇が取得できるのでは?
「ごっこ化」した資料作成や会議。いずれも個人と組織の成長機会をやさしく奪っていきます。いつの間にか時代遅れに。
時代遅れになった組織はどうなるか?
コラボレーションしてくれる相手がいなくなります。顧客,取引先,協業先,従業員,株主・投資家……あなたの組織からじわりじわりと遠ざかっていきます。
当然ですよね。成長欲求の高い人(組織)ほど,スピード感があり正しく成長できる組織と(で)仕事をしたい。形骸化した「ごっこ遊び」にまみれている組織は,コラボレーションを遠ざけるのです。
さらに,そこでぬくぬくと育った人の人材価値もどんどん下がります。人生100年時代。60歳で現役引退して,スローライフを送れる時代は過去のものとなりつつあります。「仕事ごっこ」しかできない人が,定年後に雇用延長してもらえるでしょうか? あるいは,故郷に帰って再就職できるでしょうか?
「仕事ごっこ」は,組織の生産性と価値のみならず,個人の“Employability"(雇用されうる能力)をも下げかねないのです。
仕事は生きもの,だからこそアップデートが必要
仕事は生きものです。生まれた当初は意味があった。しかし,時代の変化,法制度の変化,テクノロジーの変化,働く人たちやお客さんの価値観の変化……さまざまな変化の中で,やがて陳腐化し,時代遅れになります。そうして,いつの間にか私たちの足をひっぱる厄介者になってしまっているのです。
仕事は生きもの。だからこそ,いったん立ち止まり,正しくアップデート(最新化)していかなければなりません。
本書では,私たちの日常に潜む「仕事ごっこ」を,「ものがたり」と「解説」の2パートで成敗していきます。私たちの職場の常識,みんなで笑い飛ばしながらアップデートしていきましょう!
すべては,迅速なコラボレーションと未来の私たちの成長のために。