概要
全世界80ヶ国・約2億件のイノベーションデータから近未来のライブシーンを描き出す
環境に応じて色や形が変化する服,砂漠でも宇宙でも作れる寿司やステーキ,空飛ぶ車椅子が飛び交う都市……
夢から“あたりまえ”になっていくこれからの進化,そしてそれらを形にするために必要な「未来の部品」とは?
生活・文化,食と農,都市と交通,知覚と身体性,医療・ヘルスケア,宇宙・地球・環境,知の未来・知の進化などあらゆる領域について,全世界80ヶ国・約2億件のイノベーションデータから未来像を描き出す。
イラストは『えんとつ町のプペル』をはじめ美麗なイラストレーションに定評ある六七質氏。
こんな方におすすめ
- これからの生活・社会がどうなるかを知りたい方
- テクノロジーの進化がもたらす未来を知りたい方
著者から一言
空中リムジンが翔けぬける透明チューブがジェットコースターのように空を横切り,スカイバイクやフライコミューターが飛び交う未来都市。年中花と緑が豊かなスカイポートでは,エアーバスを待つ人影。人々が着るシャツは,人体通信機能も備えたウェアラブルコンピューター。古代建造物のようにも見える多目的タワーの後ろには,巨大な透明ドームに包まれた高速交通網が延びる……
そう,この本のカバーに描かれたテーマパークのような情景は,2060年の都市生活のワンシーンをイメージしたものです。
小さい頃,だれもが,未来の夢を絵に描いたことがあるでしょう。でも,大人になった今,そんな未来への夢を自分であらためて描くことはほとんどなくなり,ニュース映像やネット記事の中で見るばかりではないでしょうか。
たしかに,昔,思い描いた未来の一部は,GAFA(Google,Amazon,Facebook,Apple)のような先進的企業群やMIT(マサチューセッツ工科大学),NASA(米国航空宇宙局)やDARPA(米国国防高等研究計画局)がすでに実現したり,方向性を示してくれていたりするかもしれません。でも,まだ実現していない夢のような技術,解決の糸口すら見つけられていない課題は,たくさん残っているはず。それを形にするために必要な「未来の部品」は,まだまだ不足しています。
2030年から2060年ごろまでの近未来,テクノロジーによって,生活がどう変わるか,働き方がどう変わるか――それが本書のテーマです。その発想の軸になるのは,アスタミューゼ株式会社が提唱する約180の技術分野や事業カテゴリーが含まれる「有望成長領域」です。今後10~20年の間に大きく成長が見込まれる領域で,現時点で市場の成長拡大が続くブロックチェーンやクラウドサービスのほか,研究人材や研究資金の投入が増大し始めている量子コンピューターや脳インターフェースなどの萌芽領域と,それを支える基礎領域としてのナノ光学やバイオミメティクス,さらに既存の産業分類や特許分類では定義しにくいeスポーツやライブエンターテインメントのような新しい技術コンセプトやビジネスモデル,それらを網羅して,独自に再定義したものです。その中から,本書では特に生活に関連性の高い分野を中心に取り上げました。生活関連といっても,ヘルスケアからエネルギー,環境,人工知能など広範な領域に及びます。
各章各節は,【未来予想図】と【未来の部品】に分けてまとめています。
【未来予想図】は,概ね,2030~2060年に起こり得る変化を書き綴っています。未来の年代は目安にすぎませんが,単なる夢物語にはならないよう,科学技術的エビデンス(論文・特許,公的研究費採択情報,コンベンション情報,プレスリリース,ベンチャー企業設立・資金調達情報,クラウドファンディング情報など)を集めて統計処理をおこなうなどして,実現可能性の高い未来を提案するよう心がけました。技術情報の解析手法や,解析結果から事業化仮説を導く方法も,「参考資料」や「おわりに」で簡潔に紹介しています。
【未来の部品】には,本書執筆中の2019年末までの技術動向をまとめ,各分野の俯瞰的知識も得られるようにしてあります。ここには,私自身が展示会やアトラクションで体験した内容や,当事者から直接お話を伺った内容も多く盛り込まれています。
また,各章末の参考情報には,本文中で紹介しきれなかった注目スタートアップや研究プロジェクト,本文に関連の深い「有望成長領域176」と「解決すべき社会課題105」がまとめられています。
さらに,すでにデータがあるものだけでは「未来」とは言えないので,イマジネーションやインスピレーションで補うほか,未来の世界観のイメージを膨らませるために,各章冒頭に,さまざまな年齢・性別・職業の人々をモデル(ペルソナ)化し,その章を象徴する未来の生活のワンカットを寸劇的ショートストーリーとして挿入,エビデンスから予想されるライブシーンを描き出す工夫をしています。
こうしたペルソナストーリーは,技術シーンの紹介に加えて,未来のキャリアパスは,これまでの自動車や医療といった専門性や業界の軸から,UX/UI,環境意識など仕事の提供価値や社会課題の軸へシフトするということをも表現しています。
アスタミューゼでは,さまざまな手法を用いて,企業様に事業戦略策定のコンサルティングをおこなったり,大学や公的機関へ情報提供や研究提案をおこなったりしています。同じ発想で,個々人の生活を豊かにする小さな未来創出は可能であり,そうした発想の積み重ねが大きな社会イノベーションにつながる可能性は少なくありません。
未来を創る仕事は,いくらでもあります。しかもそれは,一流大学の学生や知識人,エリートビジネスパーソンだけの特権ではありません。高齢者も若者も子供も,国籍も性別も問わず,未来を生きるすべての人々に平等に与えられたチャンスなのです。まさに「未来の民主化」です。
私たち1人ひとりの尽きない知的好奇心こそが,未来を創る源泉なのです。
未来は,与えられるものではなく,自ら関わって創るものなのですから。