概要
激動の時代を「好機」に変えるには何をすべきか? 数多の企業でIT戦略立案に携ってきた精鋭アナリスト陣が,
「これからの企業のあるべき姿」
「戦略導入にあたってのポイント」
「活用すべきテクノロジー」
など,未来を先導する企業になるための要点を描き出す!
こんな方におすすめ
- 企業の新規事業担当の方
- 組織改革を進めたい経営者/コンサルタントの方
著者から一言
はじめに
(株式会社アイ・ティ・アール 取締役/リサーチ統括ディレクター 金谷敏尊)
これからの時代は,あらゆるモノと人がつながり,さまざまな場面でデータやITをフル活用するスマート社会がいよいよ実現していきます。デジタル技術を活かした製品やサービスは,毎日のように産声を上げています。新たなワークスタイルやライフスタイルもまた日々提案され,私たちを取り巻く社会環境はさらなる進展を遂げようとしています。
- 3D仮想空間がオンラインミーティング,展示会/イベント,SNSの新たな場となる
- 工場の設備点検はスマートグラスが用いられ,農場では無人トラクターが土地を耕す
- 量子コンピュータと自動運転により渋滞はなくなり,空飛ぶタクシーが街中を飛び交う
そんな光景も,そう遠い未来のことではないかもしれません。
こうしたDX(デジタルトランスフォーメーション)の波は,企業のビジネスのあり方にも多大な影響をおよぼしています。現在の産業界は,「第四次産業革命期」にあるといわれています。デジタル技術によりビジネスを革新し,新産業を興し,市場構図を塗り替える。伝統的企業もスタートアップ企業も,そうした新時代の担い手になることを求められています。
そこで注目されるのは,グーグル(Google),テスラ(Tesla),アマゾン(Amazon)といった現在の産業界のトップランナー達です。「デジタルネイティブ」と呼ばれるこれらの企業は,伝統的ビジネスを手掛けてきた企業と異なり,それまでの常識とは一線を画した新たな価値観を備えている点で通底します。
「CX(顧客体験)を重視する」「計画より実験に重きを置く」「個の能力を最大化する環境を作る」など,デジタルネイティブ企業に共通して見られる価値観はさまざまにあります。
その中で,大きく注目すべき1つは
という点でしょう。いずれの企業も,テクノロジーやデータを競争優位の源泉と位置づけ,他社に先駆けて研究/開発し,イノベーションを興すことで企業価値の向上に努めています。その投資対象は,クラウドコンピューティング技術や半導体の自社開発にまでおよびます。
折しも2020年初頭より猛威を振るうコロナ禍によって,私達の社会活動や日常生活は大きく制限されることとなりました。しかし,そうしたなかでも迅速に在宅ワーク体制へ切り替えることで業務を継続した企業も少なからず見られました。その多くは,平素からITやデジタルへの感度が高く,積極的にビジネスに取り入れてきた企業です。
あらゆる組織において,これまでにもましてテクノロジーへの注力が問われています。株式市場に目を向けても,デジタル/5G関連業種では,経済低迷に反して株価の維持・成長が見込まれる銘柄が少なくありません。まさに今,先進的テクノロジーにコミットしているかどうかで,企業が評価される時代になりつつあるのです。
ところが,実際にはテクノロジーの価値を認め,ビジネスに役立てる企業ばかりではありません。なかには「技術投資の意思決定が遅い」「経営幹部がIT用語を知らない」「内製すべき領域が外部任せ」などと軽視するような例も見られます。しかしもはやテクノロジーは何か特別な「道具」ではなく,ビジネス活動の「前提」に他なりません。テクノロジー活用が当たり前となった今は,それを母国語のごとく操り,使いこなす姿勢が重要です。日常的に先進テクノロジーを評価し,有益なものをいち早く取り入れて,企業価値の向上に取り組む。そのような方針の企業を,本書では「テックネイティブ・カンパニー」と呼ぶこととします。
では,テックネイティブ・カンパニーを標榜する企業は,具体的に何をどのように取り組めばいいのでしょうか。また,いかなるビジョンを掲げて,どのようにテクノロジーを活用すべきでしょうか。企業が新たな価値観に基づく理想的な企業像を体現しようとする時,そこへいたる道のりは1つではありません。「スマートプロダクトを開発して主力事業を育てる」といった手法もあれば,「ビジネスモデルを変革して収益性を高める」というアプローチもあります。「イノベーション体質の組織づくりへ向けて,チェンジマネジメントを進める」のも一案でしょう。
このような課題へ対処するためのヒントとして,本書ではテックネイティブ・カンパニーへ向けた,7つの戦略アプローチを示します。各々について,「なぜそのアプローチが有益か」「具体的なステップは何か」を解説するとともに,理想像に到達するために必要な活動やテクノロジーを紹介しています。
また本書は,各専門分野のアナリストが書き起こしたタイトルを編纂したアンソロジーです。各章のコンテンツは独立しており,ビジネス戦略,組織/カルチャーから,技術論にいたる幅広い内容となっています。興味を引くテーマやフレーズがあれば,ぜひそこからお読みください。テックネイティブな企業はどのような姿勢で,いかなる活動をおこない,どれだけの成果を得ているのか,さまざまな角度から感じていただければと思います。
私たちが所属するITRは,IT/デジタルを専門とするアナリストファームであり,日頃より各々が専門技術分野を活かしたリサーチ&コンサルティングに従事しています。この本は,多くの企業のビジネスの内情に触れ,技術革新の最前線に接するアナリストが各々の立場から書き起こした手引書です。DX推進担当者のみならず,経営者,技術職,営業職,クラウドワーカーから学生にいたるまで幅広く参考にしてもらいたいと思っています。
本書によってテックネイティブの重要性を感じていただき,
「テクノロジーの見方が変わった」
「最新の市場トレンドを把握できた」
「DXを推進するうえでのヒントを得られた」
など,ビジネスに活かせそうな発見を何か1つでも見い出していただければ幸甚です。