書籍概要

テックネイティブ・カンパニー
~デジタル時代を生き抜く7つの戦略

著者
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概要

激動の時代を「好機」に変えるには何をすべきか? 数多の企業でIT戦略立案に携ってきた精鋭アナリスト陣が,

「これからの企業のあるべき姿」
「戦略導入にあたってのポイント」
「活用すべきテクノロジー」

など,未来を先導する企業になるための要点を描き出す!

こんな方におすすめ

  • 企業の新規事業担当の方
  • 組織改革を進めたい経営者/コンサルタントの方

著者から一言

はじめに
(株式会社アイ・ティ・アール 取締役/リサーチ統括ディレクター 金谷敏尊)

これからの時代は,あらゆるモノと人がつながり,さまざまな場面でデータやITをフル活用するスマート社会がいよいよ実現していきます。デジタル技術を活かした製品やサービスは,毎日のように産声を上げています。新たなワークスタイルやライフスタイルもまた日々提案され,私たちを取り巻く社会環境はさらなる進展を遂げようとしています。

  • 3D仮想空間がオンラインミーティング,展示会/イベント,SNSの新たな場となる
  • 工場の設備点検はスマートグラスが用いられ,農場では無人トラクターが土地を耕す
  • 量子コンピュータと自動運転により渋滞はなくなり,空飛ぶタクシーが街中を飛び交う

そんな光景も,そう遠い未来のことではないかもしれません。
こうしたDX(デジタルトランスフォーメーション)の波は,企業のビジネスのあり方にも多大な影響をおよぼしています。現在の産業界は,「第四次産業革命期」にあるといわれています。デジタル技術によりビジネスを革新し,新産業を興し,市場構図を塗り替える。伝統的企業もスタートアップ企業も,そうした新時代の担い手になることを求められています。
そこで注目されるのは,グーグル(Google),テスラ(Tesla),アマゾン(Amazon)といった現在の産業界のトップランナー達です。「デジタルネイティブ」と呼ばれるこれらの企業は,伝統的ビジネスを手掛けてきた企業と異なり,それまでの常識とは一線を画した新たな価値観を備えている点で通底します。
「CX(顧客体験)を重視する」「計画より実験に重きを置く」「個の能力を最大化する環境を作る」など,デジタルネイティブ企業に共通して見られる価値観はさまざまにあります。
その中で,大きく注目すべき1つは

  • テクノロジーの価値を高く評価する

という点でしょう。いずれの企業も,テクノロジーやデータを競争優位の源泉と位置づけ,他社に先駆けて研究/開発し,イノベーションを興すことで企業価値の向上に努めています。その投資対象は,クラウドコンピューティング技術や半導体の自社開発にまでおよびます。 折しも2020年初頭より猛威を振るうコロナ禍によって,私達の社会活動や日常生活は大きく制限されることとなりました。しかし,そうしたなかでも迅速に在宅ワーク体制へ切り替えることで業務を継続した企業も少なからず見られました。その多くは,平素からITやデジタルへの感度が高く,積極的にビジネスに取り入れてきた企業です。
あらゆる組織において,これまでにもましてテクノロジーへの注力が問われています。株式市場に目を向けても,デジタル/5G関連業種では,経済低迷に反して株価の維持・成長が見込まれる銘柄が少なくありません。まさに今,先進的テクノロジーにコミットしているかどうかで,企業が評価される時代になりつつあるのです。
ところが,実際にはテクノロジーの価値を認め,ビジネスに役立てる企業ばかりではありません。なかには「技術投資の意思決定が遅い」「経営幹部がIT用語を知らない」「内製すべき領域が外部任せ」などと軽視するような例も見られます。しかしもはやテクノロジーは何か特別な「道具」ではなく,ビジネス活動の「前提」に他なりません。テクノロジー活用が当たり前となった今は,それを母国語のごとく操り,使いこなす姿勢が重要です。日常的に先進テクノロジーを評価し,有益なものをいち早く取り入れて,企業価値の向上に取り組む。そのような方針の企業を,本書では「テックネイティブ・カンパニー」と呼ぶこととします。
では,テックネイティブ・カンパニーを標榜する企業は,具体的に何をどのように取り組めばいいのでしょうか。また,いかなるビジョンを掲げて,どのようにテクノロジーを活用すべきでしょうか。企業が新たな価値観に基づく理想的な企業像を体現しようとする時,そこへいたる道のりは1つではありません。「スマートプロダクトを開発して主力事業を育てる」といった手法もあれば,「ビジネスモデルを変革して収益性を高める」というアプローチもあります。「イノベーション体質の組織づくりへ向けて,チェンジマネジメントを進める」のも一案でしょう。 このような課題へ対処するためのヒントとして,本書ではテックネイティブ・カンパニーへ向けた,7つの戦略アプローチを示します。各々について,「なぜそのアプローチが有益か」「具体的なステップは何か」を解説するとともに,理想像に到達するために必要な活動やテクノロジーを紹介しています。
また本書は,各専門分野のアナリストが書き起こしたタイトルを編纂したアンソロジーです。各章のコンテンツは独立しており,ビジネス戦略,組織/カルチャーから,技術論にいたる幅広い内容となっています。興味を引くテーマやフレーズがあれば,ぜひそこからお読みください。テックネイティブな企業はどのような姿勢で,いかなる活動をおこない,どれだけの成果を得ているのか,さまざまな角度から感じていただければと思います。
私たちが所属するITRは,IT/デジタルを専門とするアナリストファームであり,日頃より各々が専門技術分野を活かしたリサーチ&コンサルティングに従事しています。この本は,多くの企業のビジネスの内情に触れ,技術革新の最前線に接するアナリストが各々の立場から書き起こした手引書です。DX推進担当者のみならず,経営者,技術職,営業職,クラウドワーカーから学生にいたるまで幅広く参考にしてもらいたいと思っています。
本書によってテックネイティブの重要性を感じていただき,

「テクノロジーの見方が変わった」
「最新の市場トレンドを把握できた」
「DXを推進するうえでのヒントを得られた」

など,ビジネスに活かせそうな発見を何か1つでも見い出していただければ幸甚です。

目次

はじめに

第1章 テクノロジーから世の中を変えるビジネスを生み出す

イノベーションを起こすための考え方とは

  • 顧客の声を聞いても革新的な商品は生まれない
  • 「ニーズ志向」「シーズ志向」を超える「テックネイティブ」でイノベーションを起こす

ビジネスになりうるテクノロジーをどう見つけるのか

  • 「スケーラビリティ」と「サステナビリティ」を備えたテクノロジーが未来を形作る
  • 将来有望なテクノロジーを選別する5つのポイント
  • 「テクノロジーサイクル」をもとに未来型テクノロジーを発見する

自律的にテクノロジーを活用するには何をすべきか

  • テックネイティブで新しいビジネスを創生するために必要な5つのポイント
  • 小さな成功体験の積み重ねが「テックネイティブ」な文化を生み出す

第2章 サービスビジネスへの戦略シフト

産業界の「モノ」から「サービス」への潮流

  • デジタル技術やクラウドにより加速する「あらゆる産業のサービス化」
  • 産業のサービス化は50年前から予想されていた~ペティ=クラークの法則

テクノロジーがサービスビジネスの潮流を促進する

  • テックネイティブなサービスの4つの特性
  • サービスビジネスの優位性:「収益ルートの分散」と「定期収益性」
  • いち早い需要の把握で商品を差別化し,競争の優位に立つ

サービスビジネスにシフトするための重要指針

  • 製品販売モデルからサービス提供モデルへのシフトを阻む4つの壁
  • 変革へのモチベーションを高める施策を取ることで「人的リソース」を活かす
  • 事業資産の変動費化で「物的リソース」のリスクを軽減する
  • サービス化への転換がもたらす「財務リソース」への負のインパクトを軽減する
  • オープン&クローズ戦略で「情報リソース」を適切に管理する
  • 長期的なチェンジマネジメントを通じてサービスビジネスにシフトする
  • 「成長エンジン」を作り上げ,サービスビジネスを安定させる
  • サービスビジネスを支援するプラットフォームを活用し,業務負担を軽減する
  • 持続的な成長をビジョンに据えた施策で,ビジネスの好循環を生み出す

第3章 エモーション・ドリブンでプロダクトを提供する

エモーション(感情/感性)を推測し,顧客が求めるプロダクトを作る

  • 顧客の嗜好やエモーションを類推し適切なアクションを駆動する「エモーション・ドリブン・システム」
  • イベント・ドリブンとエモーション・ドリブンの違い
  • データの量と質で区分する,4段階のエモーション推察の仕組み

エモーション・ドリブン・システム導入の3つの課題

  • 製品にエモーションを推察できる仕組みが備わっておらず,導入にはコストがかさむ
  • 顧客関連データの点在と,それらの統合の際のプライバシーへの配慮のバランス
  • 顧客へ成功体験を提供できる組織体制になっていない

エモーション・ドリブン・システム導入のための5つの施策

  • IoTを活用したプロダクトを企画/開発する
  • AIを活用し,個々に最適化したプロダクトを能動的に提供する
  • 顧客を中心に設計したデータベースを構築/活用する
  • プライバシーに配慮するため,法規制を遵守し顧客から事前許諾を取る
  • テックネイティブな組織カルチャーを確立し,カスタマーサクセスに取り組む

エモーション・ドリブンなプロダクトの提供は,カスタマーサクセスへの着手から始まる

第4章 デジタルトークンを活用し新しい経済圏を作る

購買の新たな可能性を切り開く「デジタルトークン」

  • 購買にまつわる不正の余地をなくし,購買循環を作り出す
  • 所有している商品の仮想空間への持ち込みを可能にし,顧客のファン化を促進する

企業がデジタルトークンを活用する6つのアプローチ

  • デジタルトークンを推進する体制を作る
  • 顧客視点で購買意欲の向上策を考える
  • 現実だけでなく,仮想空間でも宣伝をおこなう
  • 仮想空間を利用して商品企画をおこなう
  • 商品のデメリットを軽減する
  • 複数の企業でデジタルトークンを活用し,新たなエコシステムを創生する

第5章 テックネイティブな組織カルチャーを確立する

テクノロジーを「前提」とした組織が備える6つのカルチャー

  • だれもがテクノロジーの本質的な価値と可能性を理解し,活用を前提に動くことができる
  • 日常の業務に埋没せず,創造的な活動が自由におこなえて,支持される
  • すべての意思決定がファクトに基づいておこなわれる
  • あらゆるデータが全社員から同一かつ透過に閲覧できる
  • 人材の多様性と組織の「トライブ化」に対応できる
  • 企業内の組織や他者への貢献が称賛され,その度合いで評価される

「人的側面」と「テクノロジー活用」の両方を高めテックネイティブ・カンパニーへと組織を改革する

  • テクノロジーを日常と感じられるような環境を企業内に作る
  • アイデアを提案し,その価値を検証し,洗練させる「バーチャルラボ」を創設する
  • 大きな意思決定プロセスを市場原理を取り入れることで民主化する
  • 日々の小さな意思決定をテクノロジーで自動化する
  • 意思決定の民主化と自動化のための仕組みを作る
  • 付加価値業務とオペレーション業務の配分を変え,質を高める
  • タレントマネジメントを拡充し,成果や貢献を可視化して個人に報いる
  • 組織カルチャーが変革できれば「テックネイティブ・カンパニー」は実現する

第6章 ギグエコノミーを活用した柔軟な事業運営スタイルの確立

ギグエコノミーは「ニューノーマル」時代に対する解決策

  • デジタル化を阻む人材不足
  • 断片化された労働力を活かす

ギグエコノミーはなぜ求められ,普及していくのか

  • ギグエコノミーとは何か
  • ニューノーマルの時代にギグワーカーが増える理由
  • 企業は何をフックにギグエコノミーを採用するか

ギグエコノミーに適応するために企業が押さえるポイント

  • ギグエコノミーに適した業務を見い出す
  • ギグワーカーを戦力化する
  • 円滑なコミュニケーション環境を築く
  • 望ましい雇い主となるために

ギグエコノミー力の活用の有無は,企業の競争力に大きく作用する

第7章 企業のバーチャルトランスフォーメーション(VX)戦略を計画する

変革を迫られているビジネス環境の今

  • 否応なしにデジタルの普及を進めているCOVID-19
  • DXのプロセスを仮想空間で実現させる「VX」

企業がVXを導入すべき10の理由

  • 導入がますます進むテレワーク
  • 人口減少に伴う労働人口の不足
  • IT専門職の需要の高まり
  • 商品の設計および,製品ライフサイクルの改善のしやすさ
  • 環境への優しさ
  • 資産を最小化するビジネスモデルの浸透
  • ギグエコノミーの成長
  • 安全とセキュリティの向上
  • XRデバイスの普及
  • 働き方改革の推進

VXソリューションを把握する

  • バーチャルミーティングでリモートでも協調的なコミュニケーションを実現する
  • バーチャル研修で安全性とコスト効率を向上させる
  • 場所を選ばず,広範な人が参加可能なバーチャルイベント
  • 大幅にコストを削減するバーチャル商品設計/プロトタイプ作成
  • リモートワーカーにもバーチャル環境で福利厚生プログラムを提供する
  • バーチャルで商品をデモし,営業活動を拡張する
  • より効果的な人材雇用/維持を実現するバーチャルHRテクノロジー
  • 仮想世界で商取引し,購買を拡張する
  • バーチャルで双方向的に顧客サービスを提供する
  • バーチャルで顧客を獲得する

VXを推進するおもなテクノロジー

  • 今後スマートフォン並みに不可欠なサービスになるXRテクノロジー
  • 高速で低遅延な通信を実現する5G
  • 現実の資産をそのままデジタルに複製するデジタルツイン
  • バーチャルアバターでデジタル世界に自分の分身を作る

VX戦略推進のために何をすべきか

  • 導入可能性を探り,土台となるロードマップを作り上げる
  • VXの普及は,新時代のコミュニケーションを切り開く

おわりに

サポート

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