概要
「開発側は効率化されてきたのに,テストはいつも炎上ばかり」
「テストの数は増える一方なのに,コストを減らせと言われる」
「やっと自動テストを導入できたけど,逆に工数が増えている気がする」
開発技術の進化とともにテスト技術も着実に進化しているなか,テスト現場ではなぜこんな問題が絶えないのでしょうか? それは,自動テストに関する知識と設計方法を正しく知らないからだと言えるでしょう。
本書は,自動テストの基礎知識,設計・プロセスに焦点を当て,どのように進めればリスクを抑えながらコスト削減を実現できるかまとめた自動テストの教科書です。テスト会社のエンジニアとして数々の現場で自動テストを成功させてきた著者が,現場のさまざまな失敗例を交えながら,成功する設計ノウハウを伝授します。
テストに関わるすべてのエンジニア必携の1冊です。
こんな方におすすめ
- ソフトウェア開発の現場でテストを担当するエンジニア
- ITベンダーのテスト部門を担うSE
- 自動テストに失敗した経験がある方
著者から一言
システム開発の技術は進化しつづけ,現場の効率化や開発の品質向上が進んでいます。一方,テストの現場は昔と変わらず炎上しがちで,昔ながらの根性論で乗り切っていることが多くみられます。テストの現場が炎上している原因は,テスト技術が進化していないからなのでしょうか。
じつは,テスト技術は確実に進化し向上しています。それでもテスト現場が落ち着きを見せないのは,なぜでしょうか。
テスト技術とは以下の2種類に集約されます。
テスト現場が落ち着きを見せないのは,不具合検出に焦点を合わせた「品質を上げる技術」のみを高めていることが多いからです。品質を上げる技術だけを高めても,実施する試験が次から次へと積み上がるだけで,テストの工数が膨れ上がってしまいます。今,テスト現場に必要なのは「テスト工数を削減する技術」です。自動テストとは,「テスト工数を削減する技術」に着目した技術です。
現在,テストの現場には多くの問題があります。システムの複雑化・大規模化が進む中,高い品質や開発スピードの短縮を求められ,テストに関する予算削減圧力は高まっています。また,昨今の新型コロナウイルス感染症拡大により,出社が制限され成果が出せない状況下で,省人化・効率化が求められています。さらに,働き方改革による作業時間の制限などもあり,これまでと同じやり方では通用しなくなっています。システムの品質は製品にとってもちろん重要ですが,テストにかける工数を削減することも同じく重要な問題となっています。
そんな状況を脱却するために,自動テストを試したことのある現場は多いでしょう。しかし,うまく自動化できないまま品質は上がらず,逆に工数が増えてしまっているのではないでしょうか。さらに,自分では自動化に成功していると思っていても,工数の削減について着眼せず,自動で動いていることに満足しているだけというケースも多くあります。
自動テストの失敗のほとんどは,自動テストに関する知識が足りず,自動テストをどのように設計すればよいかわからないまま作業を進めてしまったことが原因です。しかし,自動テストについて調べても,「自動化ツール○○を用いた自動テスト」といったツール限定の内容が多く,現場に合わないツールを無理に導入して失敗してしまうことが多いと思います。
本書では,自動テストの設計・プロセスに焦点を当て,どのように進めればリスクを抑え,工数を削減できるか説明します。また,自動テストの現場の失敗例を挙げ,その問題点を通して,より自動化プロセスの理解を深めてもらえるようにしています。
自動テストは,特別なスキルが必要なものではありません。自動テストに関する知識を少し押さえておけば,誰でも成功するテスト技術です。テストを自動化し,テストを管理できる状態にし,効率の良いテストプロセスの構築を目指しましょう。
(本書「はじめに」より)