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Gihyo Digital Publishingを紹介します!

電子出版で目指すこと

これまでの「電子出版サイトにあたり」と題した記事では,日本の電子出版市場を俯瞰してきました。記事中に触れてきたように,今回で何度目かになる“電子出版元年”の2010年,そして2年目である今年の場合,過去の電子出版ブームとは異なり,提供側となるプレイヤーたちが継続的に物事を考えるようになりました。また,読者の皆さんにとっても,スマートフォンなどデバイスが登場したことにより,電子出版に対する意識や期待が高まっているのではないでしょうか。

この流れを見据え,技術評論社では新しい電子出版サービス「Gihyo Digital Publishing(GDP)」の提供を始めます。ここまでかなりお待たせしましたが,今回は,GDPの開発背景と狙い,概要について紹介します。

Webの技術を活用した理由

ポイントの1つ目は「Webの活用」です。「これまでのWebサイトと違うのか?」と思われそうですが,さまざまな環境の変化により,Webというメディアが電子出版とマッチしやすくなってきたといえるでしょう。

まずは,技術面の進化。

具体的にはHTML5などの標準化が進み,言語仕様としてさらに表現力が高まったことが挙げられます。これに伴いWebブラウザも進化を続け,Webブラウザだけで以前と比較して可読性・視認性が大幅に高いコンテンツを提供することが可能になりました。

加えて,スマートフォン/スマートタブレットの進化やインフラ環境の整備により,誰もがいつでも手軽にインターネット/Webに接続しやすくなっています。

こうした環境の変化により,これまで「WebはPCの前で見るもの」だったのが,「Webはいつでもどこでも見られるもの」に変わってきているのです。

もう少し詳しく説明すると,たとえば,紙の書籍・雑誌に慣れた読者に対して,本や雑誌と同じサイズ(スマートフォン/スマートタブレット)で,ページ単位でのレイアウト,しおりといった機能を提供できるほか,たとえば文字サイズを変える,検索機能,インターネットを通じた外部情報収集など,従来の読書体験を包含しつつも新たなメリットを付加した,デジタル時代の読書体験を提供できるようになります。

次に,ビジネス面の進化について触れます。

これは,今のスマートフォン/スマートタブレットに限らず,携帯電話(フィーチャーフォン,いわゆるガラケー)で生み出された環境でもあるのですが,ユーザはキャリアを通じて手軽にコンテンツが購入できるようになったという点が重要です。その後,Amazonなどのネット販売の普及により,ユーザがインターネットで決済することに抵抗がなくなり,日常的に利用しやすい雰囲気が生まれています。雰囲気と書くと曖昧に聞こえるかもしれませんが,この“雰囲気”はとても重要な要素だと,僕は思っています。

ここまで,一般論としてのインターネット決済の普及について述べてきましたが,出版社の立場からすると,キャリアを通じた販売にはデメリットもあります。それは同じ価格で直接販売する場合と比べて売り上げが減ってしまう点です。キャリアを経由すると,販売やお客さんの管理に付随する使用料や契約料等が引かれてしまうため,出版社(コンテンツプロバイダー)の手元に入る金額は,当然少なくなります。

これを避け,より読者の皆さんに近いところからコンテンツを提供するため,GDPでは独自の販売ページを用意し,PayPalを利用した決済システムを採用することにしました。こうすることで,たとえば,iPhone/iPadやAndroid端末向けにコンテンツを販売する場合も,GDPでは専用アプリの購入は不要なため,AppleやGoogleにネットストアの使用料を支払うことなく,読者にコンテンツを提供することが可能になります。

流通にかかる手数料が軽くなることにより,販売価格を調整する際の幅が広がり,販売後に発生する執筆者へのインセンティブを大きくできるなど,さまざまなメリットが出てきます。

以上,技術面・ビジネス面両方の観点から見た,GDPがWebの技術を採用した理由についてお話ししました。

多くのデバイス,環境で

ここまでの説明で,GDPではなぜWebを活用することを決めたのかがおわかりいただけたかと思います。しかし,Webの活用はWebが使えなければできません。禅問答のような書き方でスミマセン(笑)。ようは,オフラインの環境では電子出版は読めないのか?ということです。

この課題に対して,僕たちはEPUBを利用することにしました。元々Web(HTML)ベースでコンテンツを配信しているため,それをサーバ側でEPUBデータとしてパブリッシュすれば,ほとんど手を加えずに,EPUBコンテンツの電子出版が行えます。

GDPでは,読者が一度コンテンツを購入すれば,Web経由での閲覧,EPUBデータのダウンロードによる閲覧の二種類を選択することが可能です(このほか,PDFで提供するコンテンツもあります)。

技評出版システムの仕組み

このように,GDPでは,さまざまなデバイス,さまざまな環境で読書体験を得られる電子出版サービスを目指していきます。

また,すでに技術評論社で発行している書籍・雑誌についてもPDF等の形式にして,準備ができたものから順次電子書籍コンテンツとしてGDPのサイトで販売していく予定です。

次回は

次回以降は,GDPの取り組みについて内容を掘り下げて紹介します。

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