新春特別企画

2010年のインターネットと政治

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選挙でインターネットが活用できるようになれば

もし,Webサイトで選挙期間中に候補者が情報をもっと訴求できたら,前述のような費用を削減することはできるでしょう。むしろ,一番利益を供与されるのが,国民である私たちです。

選挙カーの騒音に悩まされることなく,しっかりと候補者の情報をWebサイトで比較検討し,各候補者の日常の姿をブログやTwitterで確認できます。メールマガジンを読み,YouTubeで演説を比較し,公示日以降に候補者をじっくりと選定することができます。まさにこれほどまでに,理想的な民主主義的なツールがないがしろにされてきたのです。

その一番の理由は,今までの既得権益の座にあやかってきた人たちにとって,不利益をもたらすからでした。選挙はできるだけ,各種企業と団体や組織,高齢者に支えてもらい,インターネットとは無縁なところからの票を集めていたからです。かつての利権体質による政治家は,献金とともに癒着体質を生み,地元への利益供与と貢献が常に問われてきました。

利益供与を得られる団体や業界がこぞって資金を供給し,最終的に利益を還流させるという古い政治の仕組みが,今までの選挙をしっかりと支えてきたのです。また,それらに選挙のたびに潤う印刷業界や新聞,放送業界もそれらに加担したとも受け取れます。

「ただし,インターネット利用を除く」の一文があれば

今,私たちが望むのは,公職選挙法第24条の「文書図画の頒布」の項目に,⁠ただし,インターネット利用を除く」のたったの1行を書き加えるだけの作業です。それによって利権とは無縁な,新たな議員たちを生むことができるのです。

国会議員の給与は月額137万5,000円,年1,650万円。ボーナスが720万円で合計年2,370万円。さらに文書交通費毎月100万円。政務立法調査費毎月65万円。しめて,年間4,500万円の収入がある。さらに,3人の公設秘書費が年間2,000万円。

合計1人の国会議員あたり年間6,500万円が国からまかなわれています。それが衆議院480人参議院247人で計727人。しめて,472億5,500万円が国会議員に支払われています。さらにだ,政党助成金として,6政党に対して319億4,200万円(2008年)もの金額が支払われています。合計791億9,700万円,1国会議員あたり,平均1億893万円が毎年,目に見える形で国会議員に対して支払われているのです。

その国会議員たちが国の予算を決める。その国会議員を決めるのが国民の仕事です。 私たち自身が選挙に行かないことで,1人あたり,1,120万円も4年間で損をしていることになる。有権者ひとりあたりに対して,年間280万円となります。

一般会計予算320兆円(4年分)+特別会計予算800兆円(4年分)=1,120兆円(4年分)÷有権者数1億人=有権者一人あたり1,120万円(4年分)有権者一人あたり280万円(1年分)

そんな重要な役割をも持つのが「選挙」です。その選挙で選ぶ人の情報が,限られた印刷媒体,街頭での握手,いつのまにか見過ごした政見放送,走り回る選挙カーそれらだけで1120万円の予算を投票で託しているのです。

その時代に即した,コミュニケーション手法が60年間も凍結されています。

これは,憲法第21条の表現の自由のうち,国などに対して情報提供を求める権利(積極的側面)が公職選挙法第24条によって,侵害されているといっても過言ではありません。

2010年夏の参議院選挙

2010年,おそらくこの夏の参議院選挙は,初のインターネット選挙「一部」解禁となる選挙になるのかもしれません。現政権でメジャーである民主党では,ネット活用にデメリットが少ないからです。よって法案改正が動きやすいと思われます。それによって2010年夏の参議院選挙は大きく変わることでしょう。

そのためには,いくつかの問題をクリアしなければなりません。なりすましやあらし行為,サイバーアタックなど,法案には想定されることをすべて盛り込まなければならないのです。

時代の変化と法律は常に乖離していきます。とくにIT技術に関しては,人間の想像以上に新たな問題が登場します。しかし,それらをも想定し,法案は決めていかなければならないのです。少なくとも,進化に追いつく努力は決して止めてはいけません。

これからの“国民のための”選挙の姿

21世紀もすでに10%を経過しました。前世紀で描いたような,夢の21世紀になっていません。まだ民間の月ロケットも自由に空を飛びませんし,宇宙時代とはまったく言えません。しかし,インターネットの世界だけは確実に進化し,人々のコミュニケーションを大きく変えました。

それに併せて政治も国も,そして国民の選挙の意識も変わらなくてはなりません。

著者プロフィール

神田敏晶(かんだとしあき)

KandaNewsNetwork,Inc.

ビデオジャーナリスト。ソーシャルメディアコンサルタント。神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て,コンピュータ雑誌の企画編集に携わり,1995年よりビデオストリーミングによる個人放送局「KandaNewsNetwork」を運営開始。ビデオカメラ1台で,世界のIT企業や展示会取材に東奔西走中。著書に『twitter革命』『ウェブ3.0型社会』など。宣伝会議講師,趣味はサーフィン,バンド等。

Twitterhttp://twitter.com/knnkanda