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LibreOffice/Apache OpenOffice ~2011年の総括と新たな選択~

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LibreOffice

OpenOffice.org/Apache OpenOfficeがまごついているのを尻目に,LibreOfficeは破竹の快進撃を続けます。2011年内に行なったリリースを表にまとめます。いうまでもありませんが,開発版は含んでいません。あくまでリリース版でこれだけです注6)⁠

日付バージョン
1月25日3.3.0
2月23日3.3.1
3月22日3.3.2
6月3日3.4.0
6月16日3.3.3
7月1日3.4.1
8月1日3.4.2
8月17日3.3.4
8月31日3.4.3
11月9日3.4.4

LibreOfficeの2011年最大のトピックは,3.4.xのリリースでしょう。3.3.xまではOpenOffice.orgとの機能に大きな差はありませんでしたが(それでもいくつか魅力的な新機能はありますが)⁠3.4.xでは独自性を打ち出しています。メニューやヘルプの日本語訳に関しては筆者も参加しており,人員の関係でヘルプの翻訳は後回しになっているものの,メニューに関しては目に付くところはほぼ全部日本語化されています。そしてOpenOffice.orgから引き継いだ誤訳やわかりにくい訳語の修正,統一なども並行して行なっており,日本語版OpenOffice.orgよりも使いやすいものになっているはずです。

9月28日には1周年を迎え,The Document Foundationの1周年を記念してという発表がありました。10月13日から15日まではパリでカンファレンスが行われ,LibreOfficeの未来について興味深い発表などが行われました。10月29日にはテンプレートと拡張機能を配布するWebサイトが公開されました。12月6日にはJA福岡市がLibreOfficeの導入を開始したと発表しました。日本における初めての大規模なOpenOffice.orgからの移行ではない導入事例です。2012年2月第2週リリース予定のLibreOffice 3.5.0の開発も活発に行われています。3.5.0も魅力的な新機能が多数搭載されているばかりか,Windows版のインストールがより簡単になるなどの特徴があります。

2012年は1年に2回のメジャーバージョンアップ,毎月のマイナーバージョンアップリリースという本来予定したリリーススケジュールにようやく則ることができるようになるばかりか,OpenOffice.orgからの機能取り込みがなくなって「真の」LibreOfficeとなり,今後ますます目が離せません。

注6
リリースはプロジェクトの活発さを表す一つのバロメーターですが,筆者がLibreOffice側の人間であることを差し置いても「信じられないほど成功している」プロジェクトだといえます。

LibreOfficeとApache OpenOffice,どちらを選ぶ?

これまでOpenOffice.orgをお使いだった場合,LibreOfficeに移行するのか,Apache OpenOfficeのリリースを待つのか,あるいはOpenOffice.orgを使い続けるのかの選択を迫られることになりました注7)⁠

10月5日,OpenOffice.org 3.3.0以前に存在するセキュリティホールが公表されました。これだけだと出どころ不明なDocファイルを読み込まないという対策も取れますが,今後もセキュリティホールが発見される可能性は十分にあり,やはりサポートのないアプリケーションは継続して使うべきではありません。LibreOffice 3.3.4と3.4.3以降ではこのセキュリティホールは修正されているため,これらのバージョンに乗り換えるか,あるいは元Oracleの社員で構成する社団法人Team OpenOffice.org e.V.が提供するOpenOffice.org 3.3.0の修正版であるWhite Label Office 3.3.1へのバージョンアップを検討するべきかと思います。今のところ日本語版はないものの,寄付ベースでの活動なので,相当額を寄付して要望を伝えれば日本語版を出してくれるかもしれません注8)⁠LibreOfficeだと機能が追加されているため,なるべく変更点が少ないほうがいいという大企業や大組織は,検討してみるといいのではないでしょうか注9)⁠

ユーザーの立場からすると,Apache OpenOffice 3.4の最初のリリースは魅力的とはいえません。予定どおり2012年Q1にリリースされたとしても,同じ時期には新機能が多数追加され,翻訳も行なっているLibreOffice 3.5.0がリリースされます。前述のとおりApache OpenOffice 3.4は機能が増えるどころかむしろ減っているのが事実です。今後の予定がわからないため,日本語の翻訳が行われるかどうかも未知数です。

2011年7月13日にIBMがLotus SymphonyのソースコードをASFに寄贈する旨の発表を行いましたが,現段階で続報はありません。2012年には何かの動きがあるのかも知れませんし,そのまま忘れ去られるかもしれません。詳しくは言及しませんが,仮に公開してApache OpenOfficeと統合するとしても課題がたくさんあり,一筋縄では行かないことが予想されます。

LibreOfficeの採用を検討する場合は,どのバージョンにするのかを考慮する必要があります。LibreOffice 3.3.xのバージョンアップ予定は今のところありません。3.4.xは3.4.5が2012年1月の第2週に,3.4.6が2012年3月の第4週にリリースを予定しています。3.4.xは十分に安定しているといえるので,中~大規模導入に向いています。前述のとおり3.5.0は2012年2月の第2週にリリースを予定していますが,新機能の追加と同時に大きな不具合が含まれている可能性もあり,導入する場合は慎重に検証してから行なってください。LibreOfficeの場合,安定版かどうかは下1桁の数字で判断します。下1桁のバージョンアップは不具合と翻訳の修正のみで,3ないし4ぐらいになると安定版と判断されます。バージョンアップが早くて検証も大変ですが,それは「コスト」として考えていただければと思います。とはいえ新しいバージョンを使用して不具合に遭遇し,かつ速やかに報告して修正された場合,その修正を施した新バージョンが短い間隔(通常1ヶ月)でリリースされるので,バージョンアップが早いメリットを享受できます。理想的には「コスト」として捉えるのではなく「メリット」として捉えて欲しいところです。

現時点でプロジェクト,プロダクトともにうまく機能していて,将来的にも持続する可能性がわりと高いLibreOfficeを軸に,LibreOfficeとApache OpenOfficeの統合といった多くの幻想に惑わされず,しっかり地に足をつけて現実的にメリットのある選択を行なっていただければと思います。

来年にはこの混沌としている状況がもう少しどうにかなっているといいのですが。

注7
LibreOfficeに乗り換える場合,OpenOffice.org日本ユーザー会が提供しているOpenOffice.orgユーザーのためのLibreOffice移行ガイドを参照してください。
注8
ソースコードを確認していませんが,自力で日本語版をビルドできるかもしれません。
注9
筆者の立場的にはThe Document Foundationに寄付を行なった上で,LibreOfficeに乗り換えるのをお勧めします。

著者プロフィール

あわしろいくや

Ubuntu Japanese Teamメンバーで,主として日本語入力関連を担当する。特定非営利活動法人OpenOffice.org日本ユーザー会。LibreOffice日本語チーム。ほか,原稿執筆も少々。

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