新春特別企画

クローズドとアーカイブに注目――2013年のソーシャルネットコミュニケーション

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メディアとしてのFacebookとTwitterの価値,リアルコミュニケーションとの融合

続いて,全世界で最も使われているソーシャルネットFacebook⁠,そして,Twitterについて展望してみましょう。

きっかけとしての「いいね!」利用,そこから始まるコミュニケーションが進んだFacebook

2012年は,Facebookのシェアがますます強くなった1年でした。市場的な面で見ると5月にIPO(新規上場)を果たし,また,9月には写真共有サービスInstagramの買収を完了し,ますます動きが活発になっています。

今回の記事では,Facebookの市場的な見方の分析はしませんが,注目度がさらに上がり,個人ユーザだけではなく企業ユーザに対してより一層浸透し,Facebookを利用したさまざまなキャンペーンが行われた年でもありました。ただし,2011~2012年に多く見られたFacebookページの開設およびFacebookページ上で行うだけのキャンペーンではなく,たとえばいいね!と連動したアプリ型のキャンペーンであったり,チェックイン機能と連動したものなど,ユーザからのコミットメント・アクションの先を意識して行うタイプのものが多く見られました。

1つの例として,昨年末に開催された ⁠楽天市場】楽天Xmas Bazoooka があります。このキャンペーンの特徴は,Facebook上でのユーザとのコミュニケーションが「いいね!」だけという点です。そして,いいね!の先に楽天市場のキャンペーンページへの導線が用意されています。キャンペーンページに進んだユーザは,そこで行われる映像と連動した体験型のリアルタイムキャンペーンに参加することができるのです。

なお,このキャンペーンは「楽天お正月Bazoooka!」と名前を変えて,1月9日12:00より再スタートするとのことなので,興味のある方はぜひご参加ください。

こうしたキャンペーンの特徴は,ソーシャルネット上でアクティブかつコミュニケーションが活発なFacebookユーザに対して,⁠Facebook上でのいいね!という)ライトなアクションだけをさせた上で自社キャンペーンサイトへの囲い込みを行っているところです。入口としてFacebookを利用しながらも最終的には自社サイトに呼び込むという点で,先ほどのクローズドな感覚に通ずると考えられます。

それから,Instagramの買収に関してはたくさんのメディアで取り上げられ,Webサービス関連のニュースとして最も注目されたものの1つとなりました。その派生として,昨年末に発表された利用規約変更では,一部のユーザの間で議論を呼びましたが,現時点で使い勝手の面で大きな変化はなく,逆に,アプリの改善,Facebook連携の強化など,FacebookとInstagramを両方使っているユーザにとっては,ユーザビリティが上がったと言えます。また,画像共有が強化された結果,メディアとしてのFacebookの価値が高まったと言えるでしょう。

ここ日本でもインタレストグラフの公式活用が進み始めたTwitter

Twitterに関しては昨夏のロンドン・オリンピック,ここ日本では12月の衆議院議員総選挙や大晦日の紅白歌合戦でイベントページが開設され,多くのユーザが「#オリンピック」⁠#選挙」⁠#紅白歌合戦」など,特定のキーワードをハッシュタグとしたツイートが数多く見られた1年となりました。

第63回 NHK紅白歌合戦 をTwitterイベントページで楽しもう!
http://blog.jp.twitter.com/2012/11/63-nhk-twitter.html

⁠今さらハッシュタグ」と思う読者の方がいらっしゃるかもしれません。たしかに,ハッシュタグの利用はすでにユーザ主導で積極的に行われていますし,それを利用したTogetterのようなサービスも登場し浸透してきています。しかし,昨年のTwitterイベントページの登場は,そうしたユーザ主導の動きだけではなく,企業や組織から積極的にツイートを促す仕掛けになっていることが特徴で,今年以降,企業や組織からツイートを促す場面がますます増えていくと考えています。

補足として,昨年のロンドンオリンピックに関しては,2006年7月に誕生したTwitterが,全世界に浸透してから初のオリンピックで(北京の段階ではここ日本ではそれほどまだ普及していなかったので⁠⁠,衆議院議員総選挙も日本でTwitterが大きく浸透してから初の衆議院議員総選挙でもあったわけです。こうした,不特定大多数が注目し,興味を持つキーワード,とくに出来事とTwitter(ツイート)の親和性は非常に高く,Twitterイベントページという⁠場⁠が用意されることで,インタレストグラフによるコミュニケーションはさらに活性化していくと考えています。

メディア化するソーシャルネット,個人と組織との融合

FacebookやTwitterのこうしたユーザの動きの変化というのは,それぞれのサービスがより一層メディア(媒介)化しているものだと考えられます。いずれも,一個人の動きだけではなく企業や組織がますます活用できる(しやすくなる)サービスになるでしょう。

つまり,これまでFacebookやTwitterはサービス上のユーザ同士のコミュニケーションが主であったのが,これからはユーザ間だけではなく,企業や組織を含めた⁠場⁠としての存在意義が求められ,ユーザはその⁠場⁠の中で何をするのか,また何につなげていくのかを考えるようになっていくと思います。また,その結果として,つながっている人たちとのコミュニケーションの活性化,場合によってはリアルコミュニケーションにもつながっていくように思っています。2013年最注目分野?O2Oとソーシャルメディアの展望で藤井大輔さんが語られているO2Oの動きもその1つと言えます。

ソーシャルネット上の「共有」の先にあるもの

少し余談になりますが,これからのFacebookやTwitterのユーザの動きとして考えているのが,ソーシャルネット上での「没個性」です。あくまで私自身の感覚ではあるのですが,最近のFacebookに関しては,インターネット上の情報(ニュース・写真・映像・音楽など)が共有(シェア)される場面を見る機会が多くなってきていて,⁠一次情報として)自分の考えや動きの投稿を見る機会が減っているように思っています。また,Twitterでは,個人的なツイート数が増えていると同時に,RTされているツイートも年々増えています。Twitter社は2012年の人気ツイート(注目・RTされたツイート)についてゴールデンツイートとして発表しています。

このように,誰かの投稿内容を引用したり,伝達する要因として考えられるのは,Facebookのシェア機能やTwitterのRT機能の使いやすさの向上,そして,シェアやRTに対する心理的な気楽さでしょう。

おそらく,今後もこうした共有(シェア)する動きはますます増え,共有(シェア)を通じたコミュニケーションが活性化していくと思っています。一方で,共有(シェア)により情報発信欲が満たされたユーザが増えると,これまでのソーシャルメディアの特徴であった個人の考え,個の動きの多様性が薄れていくように感じています。その先にどういったコミュニケーションが生まれていくのかは,個人的に注目していきたい部分の1つです。もしかすると,その揺り戻しとしてブログへの回帰が増えるのかもしれません。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室部長代理。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属,同誌編集長(2004年1月~2011年12月)や『Web Site Expert』編集長を歴任。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)の責任者として,イベントやWeb・オンライン企画を統括。現在は,技術評論社の電子出版事業を中心に,デジタル・オンライン事業を取りまとめる。社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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