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次の10年に向けて――2014年のソーシャルネットコミュニケーション

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2014年は日本でソーシャルネットが登場してから10年目――The Next Decade

最後に,2014年のソーシャルネットコミュニケーションについて展望します。

2014年は日本のソーシャルネットが生まれて10年目の年

2014年は,日本のソーシャルネットが登場してちょうど10年を迎える年です。今から10年前の2月,日本最大のソーシャルネットとなったmixiが誕生しました。当時の日本では,Googleが開発したorkutというソーシャルネットサービスが,一部のアーリーアダプターに使われ始めていて,まだまだソーシャルネット(SNS)という概念が一般化していない時代でした(余談ですが,このorkutはGoogleの20%ルールで登場したサービスで,今もなお運営されています⁠⁠。

それから10年という月日が立ち,日本ではSNSという概念が一般化した後の,2007年の第1次Twitterブーム,2009年の第2次Twitterブーム,2010~2011年のFacebook登場,2012年のLINEおよびLINEタイムラインという流れが生まれています。この10年で,ソーシャルネットを通じて,次のような単語と概念が生まれました。

 ソーシャルネットを通じて生まれた概念・単語

グラフ(つながり)
リアルグラフ
ソーシャルグラフ
インタレストグラフ
アイデンティティ(名前)
実名(ハンドルネーム)
匿名
自己顕示・承認欲求
いいね!/シェア
足あと
タグ付け

これらは,ソーシャルネットを表現する上で生まれた単語ですが,突き詰めていけば,ソーシャルネットにかぎらず,実際の社会,人と人とのコミュニケーションにも存在するものです。それらが,言葉として認識され,そして,コミュニケーションのインフラになってきたということは,ソーシャルネットが一般化してきた事実ではないかと思います。この状況を生み出した存在として,mixiが担ってきている役割は非常に大きかったと,筆者は改めて思います。

ソーシャルネット新世代登場

とは言っても,日本全国でソーシャルネットが使われているわけではありません。たとえば年齢が上の世代にとってはそもそもソーシャルネットを使わない数のほうが多いわけですし,今の20代より下の世代はLINEによるメッセージングコミュニケーションがメインで,ソーシャルネットを通じたコミュニケーションは行わないユーザが数多くいるかもしれません。

とくに,最初のツールとしてLINEに触れた世代とっては,mixiあるいはFacebookにまったく触れていない可能性があるわけです。そして,LINEを通じ,LINEタイムラインが初めてのソーシャルネットコミュニケーション体験だというユーザが今後増える可能性はあります。この点については,LINE株式会社CSMOの舛田淳氏が,2013年8月に開催されたLINE-Hello, Friends in Tokyo 2013-のプレゼンテーションでも触れており,mixiを知らない,次の,ソーシャルネット新世代が登場する時代になったと言えるでしょう。

ここで,mixi登場と同じく10年前の2004年11月に公開されたFlashムービーを紹介します。

30代中盤以降でWebやIT業界に携わっていた方であれば一度は観たことがあるかもしれない,⁠EPIC 2014」に関するムービーです。これは,2004年当時,10年後となる2014年時点の架空の「メディア史博物館」が持つ視点を描いた内容であり,Googleニュースのような人気のあるニュースアグリゲーターやブロギング,ソーシャルネットといった技術の収束が与える影響,その結果,ユーザが仮定的な未来でジャーナリズムや社会に大々的に参加できることを扱った内容となっています。この中に登場する,⁠Googlezon」というのは,GoogleとAmazonから生まれた造語で,インターネットにおける検索とレコメンドの組み合わせが与える影響の可能性について,架空のストーリーが描かれたものとなっています。

引用:2014年のメディア史博物館が作成した(という想定の)メディアヒストリー史ビデオ。2005年以降は仮想のストーリーです。2004年制作。⁠CC CC BY-NC-SA 2.1/表示-非営利-継承 2.1)

guided by Kensuke Suzuki, sociologist

2014年が,この内容どおりに近づいているかどうかというのは意見が分かれるところかと思いますが,筆者としては「人は興味以外のことは気にしなくなる」といった部分はそのとおりになってきていると感じていて,それがまとめ系メディアの登場であったり,上記で述べた自分だけのタイムラインの考え方なのではないかと思っています。

一方,Googlezonでは触れられていなかった,⁠自分だけのタイムラインなどネット上の情報は)覗かれるという部分,また,ここ数年のスマートフォンおよびインフラの普及による,全活動時間のインターネット化というのは,EPIC2014では想定されていなかったことで,それが2014年のソーシャルネットコミュニケーションの実情になっていくのではないかとも思っています。

少し発散してしまいましたが,ソーシャルネット登場から10年,新しいサービスや技術の進化により,次の10年に向けた動きが見えてきました。それでも,ソーシャルネットを使うのは人であり,コミュニケーションの本質は人と人とのつながりです。これから数年は,このつながりにおいて,経験値の差というのが顕著に見え,ソーシャルネットコミュニケーションに影響を与えるのではないかとも考えています。

また,この先は,今の子どもたちが各種デバイスに触れる瞬間からソーシャルネットが在ることがあたりまえという仮定も考えられます。そのときにソーシャルネットが健全に使われるための環境づくり,たとえば使い方を含めた教育や考え方の共有ということが,ソーシャルネットの次の10年に求められていく課題ではないかと考えています。

著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室部長代理。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属,同誌編集長(2004年1月~2011年12月)や『Web Site Expert』編集長を歴任。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)の責任者として,イベントやWeb・オンライン企画を統括。現在は,技術評論社の電子出版事業を中心に,デジタル・オンライン事業を取りまとめる。社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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