エンジニアのための「失敗学」のススメ

第2回 失敗の「心理」学

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「落胆」のメカニズム(続き)

まずは,先述の式変形(式3)における (*1) 式に数値を当てはめてみましょう。

式4 ⁠落胆」式~その1

落胆
想定達成率
×
潜在難度
想定難度 + 潜在難度

この式において,⁠実力」⁠想定難度」を共に100で固定した場合の,⁠潜在難度」「落胆」の関係をグラフ化します。

「実力」⁠想定難度」を共に同値で固定していますので,⁠想定達成率」が1.0,つまり成功を期待していることを意味します。

図1 落胆と潜在難度~その1

図1 落胆と潜在難度~その1

「潜在難度」の増加=「実達成率」の低下ですが,式 (*1) を見れば明らかなように,⁠潜在難度」がどれだけ大きくなろうとも,⁠落胆」の最大値は「想定達成率」です。つまり:

どんなに達成率が低くても,落胆度合いは想定達成率で頭打ち

ということになります。

それでは次に,(*2) 式についても数値を当てはめてみましょう。

式5 ⁠落胆」式~その2

落胆
実定達成率
×
潜在難度
想定難度

「実力」を100,⁠実達成率」を1.0で固定した場合の,⁠潜在難度」「落胆」の関係をグラフ化します。

図2 落胆と潜在難度~その2

図2 落胆と潜在難度~その2

「実力」⁠達成率」を固定しているため,⁠潜在難度」が増加すれば「想定難度」は低下することから,⁠潜在難度」の高さは「想定達成率の高さとなります。つまり:

「実達成率」が一定なら,「想定達成率」が低いほど落胆せずに済む

ということを意味しています。

どちらも共に,⁠想定達成率」が必要以上に高い(=「想定難度」が低い)と,⁠落胆」が高くなることを表していますが,これらは決して実感覚から乖離したものではないと思います。

注意してほしいのは,本稿は「落胆するな」とも「希望を持つな」とも主張するものではありません

「想定難度」が不当に低い(=「潜在難度」が高い)のは,根拠の無い自信や思い込みに基づいている場合が多いですから,単に事の成否だけを見て「落胆」するだけで,⁠想定難度」が低い原因を直視しなければ, おそらく次回も同じ失敗を繰り返すことでしょう。

ひょっとすると,運や環境などの「外乱要因」に責任転嫁したり,取り組みを続ける意欲を失ってしまうかもしれません。

「落胆」という情緒的な振る舞いとは別に,自分の「落胆」そのものを冷静に分析する目を持つ必要を述べているに過ぎず,その上で,なお「落胆」したいのであれば,存分に「落胆」してください

繰り返しになりますが,新たな事に取り組む場合の成功率は「千三つ」なのですから,予期せぬ「潜在難度」「実力」の許容度を上回ることで「実達成率」が低くなる=失敗することも当然ですし,失敗すれば落胆するのは自然なことです(情緒的には⁠⁠。

「失敗することがわかっていて取り組むのか?」という疑問があるかもしれませんが,人は必ず死ぬから何をやっても無駄なのか?という命題に,自信を持って YES と答えられるのであればいざ知らず,取り組む価値があると思うならば失敗覚悟で取り組むべきなのです。

なお,周囲からの「期待」との落差で「落胆」することがあるかもしれませんが,そのような場合,まずは「自身の想定達成率」「周囲の期待」を分けて考えるようにしましょう。

「成功を期待されていたが,自身は成功するとは思っていない」場合なら,周囲との認識のギャップを埋める算段の方が重要ですが,⁠成功を期待されたことで,自身も成功すると(根拠なく)思い込んでしまった」場合は,そのような思考パターンに陥らないような対策の方が重要です。

著者プロフィール

藤原克則(ふじわらかつのり)

Mercurial三昧の日々が嵩じて, いつの間にやら『入門Mercurial Linux/Windows対応』を上梓。凝り性なのが災いして,年がら年中アップアップな一介の実装屋。最近は仕事の縁が元で,OpenSolarisに入れ込む毎日。