[自転車イラスト紀行]徒然走稿

第三回「ポタリング」

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「いい天気だねえ」
「どこか行きたいねえ」
「どこへ行こうか」
「とりあえず出かけましょう」

小さめのフロントバッグに、最低限の工具、タオル。タウンマップはサイドポケットに─⁠─メモ帳やスケッチブック、カメラもあってもいいかもしれません─⁠─放りこんで、ぶらっと出かける。

ぶらっと出かけて、ぷらぷらとペダルを漕いでゆく。

こんな風に自転車に乗ることを⁠ポタリング⁠といいます。

ポタリング。響きのいい言葉だと思いませんか。

「ポタポタとペダルを漕ぐから⁠ポタリング⁠っていうんですか?」と、聞かれたことがあるけれど、本当にそう思ってしまいますよね。欧文で書くと⁠puttering⁠⁠。

putterは─⁠─だらだら仕事をする、ぐずぐずする─⁠─⁠時間を)だらだらとすごす─⁠─という意味だそうです(三省堂EXCEED英和辞典・goo辞書⁠⁠。

ポタリングは季節を選びません。お日さまがかーっと照りつけるこの時期でも木陰を拾いながら、だらだらポタポタと自転車を流してゆくのは、とても気持ちの良いものです。

ただし、古株の自転車乗りの「ポタリングでもどう?」には要注意。

ポタリングの途中に峠があったり、林道があったり。ポタリングのはずなのにシャカリキになって多摩川土手を走って、往復100kmを超えた上、帰りは上流に向けて上り勾配。おまけに山から海への向かい風がビュウビュウと吹き付けてきたりします。

ポタリングに行くのに「朝六時、現地集合」なんていう時も怪しい。

自転車乗りは嘘つきが多いのです。

上り坂で「あのカーブを曲がったら峠だから」と言われてから、五つも六つもカーブを通過して来たのに、またカーブだったり、⁠素人ばかり参加するお祭りみたいな大会だから、気軽に参加してよ」と言われて、ジャージにスニーカーでレースに出たら、まわりはみんなバリバリのウェアにレーサーシューズ。ビンディングペダルをパッツンパッツンさせた、太ももとウエストが同じサイズの人間ばかりだったり、と実例をあげたらキリがありません。

おっとっと、話しがが変な方向に行ってしまいました。今回はうそ無し。だらだらポタポタのポタリングをご一緒しましょう。

川越ポタリング 国土地理院五万図、よりも各駅前で配布している観光マップがおすすめ

喜多院駐車場~西武新宿線・本川越駅~妙善寺~天然寺~川越城跡・本丸御殿~蔵づくりの町並み/時の鐘/菓子屋横町~見立寺~妙昌寺~蓮馨寺~大正浪漫通り~成田山~喜多院/中院(積算距離13km程度。~小江戸ブルワリーまで+3km)

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今回は車で川越入り。ステップワゴンには自転車7台と大人が6人[1]⁠、この車の積載能力は計り知れない(無理矢理積んでいるだけ、でもある⁠⁠。

喜多院の駐車場[2]に預け、その場で自転車を組む。川越城跡などに市営の無料駐車場があるけれど、そちらは車がすし詰め状態だから自転車を積みおろしていると、ひんしゅくを買うかもしれない。

電車組との合流のため、西武新宿線・本川越駅へ。駅前で観光マップをもらう。

徒歩なら市内を巡回しているボンネットバスを利用するといいだろう。各停留所に20分間隔で発着しているから便利。しかし休日は渋滞による遅れと、車内の混雑を覚悟しなくてはいけない。その点自転車の場合は、思いつくまま気の向くまま、市内を走り回ることが出来る。

とはいうものの、この思いつくまま、というのが結構くせ者で、川越のように道が網目状に走っている町中だと、目的地にたどり着くのにいったりきたりしたあげく、結局タイムオーバーとなってしまうことがままある(のんびりしすぎてタイムオーバーになることもままある…のです⁠⁠。

で、今回は地図にのっていた『川越七福神巡り』をベースに回ることにした。

1番目は川越駅からすぐの妙善寺・毘沙門天。観光色の全くないところだ。境内に川越芋地蔵がひっそりたっている。木枠と陶器で出来た車井戸が珍しかった。

2番は天然寺・寿老人。こちらはうってかわって拵えあげたプチな見所を境内に点在させている。

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3番は喜多院。でもそれではスタートに戻ってしまうことになるから、七福神のコースをはずれて新河岸川沿いを川越城跡へと遡る。新河岸川は葦がびっしり茂った中州が作あり、国道沿いを流れているにもかかわらず、たくさんの生き物が暮らしているようだ。

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川越城跡には本丸御殿が残されている。入館料100円で御殿づくりを観てまわり、日本庭園に面した陽当たりの良い縁側でのんびりとできる。庭には何故か、木戸孝充が使っていた井戸の石が景観作りに使われていた。

市役所の前を通過して、札の辻を左へ。ここから仲町までの間が『蔵づくりの町並み⁠⁠。昔ながらの建物では実際に店舗が営業している。ただ、この町並みを貫く川越坂戸毛呂山線は交通量が多く、側道は人があふれているから、自転車は札の辻からすぐのところにある『川越まつり会館』※3の駐輪場に停めておくことにした。

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まつり会館裏手の鰻屋で鰻丼と卵焼きの昼食をすませて、蔵づくりの町並みと菓子屋横町を散策する。ここいらには屋台風の食べもの、駄菓子、甘味処、小間物なんぞの店が集まっているから、若い(若くなくても)女性やこどもが一緒だと、時間がガンガンすぎてゆく。現に私らも時間をつぶしすぎて、この後が駆け足になった。

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時間も食べものも食い過ぎた[4]⁠。一日に四回しかならない『時の鐘』※5を櫓の真下で聞き、予定ではもっと離れた場所で聞かなくてはいけなかったことに気づき、いそいで自転車へと戻る。

さあ、駐車場が閉まるまで後1時間少し、さらに追い打ちをかけるように降ってきた雨にもせかされて駆け足。

見立寺・布袋尊、妙昌寺・弁財天、蓮馨寺・福禄寿。蓮馨寺で強く降り込められしばしの雨宿。厚く茂った木の葉の下で、昔の遊び体験かなにかなのか、子供たちがボランティア風の兄ちゃん達とベーゴマで「チッチーノォチッ!」と一緒に遊んでいた。

雨は小降りになったものの、もう駐車場の営業時間が残っていない。

残念ながら『大正浪漫通り』は素通りして成田山・恵比寿天へ。そして、お隣、喜多院・大黒天でゴール。喜多院の『五百羅漢』は是非とも観たくて、最後の楽しみに取っておいたといいうのに、もはやタイムオーバー。好きなものを最後に食べようとして、結局お腹いっぱいになって食べられなかった気分を残し、車と併走しながら、本日最後の目的地『小江戸ブルワリー・小麦市場』※6へ。

芋ビールや有機野菜を使ったイタリアンをたらふく詰め込んで帰路についたのでした。

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