[自転車イラスト紀行]徒然走稿

第五回「夕日」

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磐越東線・夏井川と走る 線路は続くよ川沿いに走

国土地理院五万図…今回はプロアトラス出力地図で動いてしまいました。

芝山自然公園キャンプ場・小野まで16.8km⁠⁠~磐越東線・小野新町駅(0km⁠⁠~夏井川渓谷~小野郷駅~JR常磐線いわき駅(40km⁠⁠~⁠新舞子浜~塩屋崎~いわき湯本・JR常磐線ゆもと駅/積算90km)

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下りまくりのコースです。下りまくるだけで時間が余ってしまうからおまけコースも前後につけておきました。

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テントを叩く土砂降りの音を聞きながら,⁠こいつは明日も走れないなあ」とあきらめつつ目覚める。と,降りがずいぶん弱くなっている。携帯サイトの天気予報では町に降りれば,ここ芝山のてっぺんよりは天気がよいとのこと。

小雨の中,芝山公園キャンプ場を出発。牧場の中の道を下りきれば雨は降っていない。このキャンプ場を拠点に動くのであれば,最後の2kmちょっとは激坂を登り切らないとテン場にたどり着けないことを覚悟しておきましょう。

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やんだと思ったら降ってくる,降ったともうと日が照ってくる。降ったりやんだり,上がったり下ったりをここまめに繰り返し,リカちゃんキャッスル※5を過ぎれば,小野新町駅。磐越東線と夏井川をたどる旅はここから始めることにしよう。

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本当にずっと下りのコースだから,ガンガン走っているとすぐに終わってしまう。併走している磐越東線と夏井川がコンビネーションでつくり出してくれているビューポイントをじっくりと楽しみながら下りたい。

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川前駅を過ぎると,このあたりが一番の見所⁠夏井川渓谷⁠奇岩を縫うように清水が走っていく,江田駅手前を少し入ったところには名所・背戸峨廊の遊歩道なんぞもあるから是非立ち寄っていきたい。江田を過ぎて支流の小さな橋を渡れば,そこはカエルの詩人として有名な草野心平の故郷。葦船みたいな建築の草野心平記念文学館がある,ここも是非立ち寄っていきたい。

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さっきから「じっくり楽しみたい」だの「是非立ち寄っていきたい」だの,希望ばかり述べているのは,私自身が是非楽しんで,立ち寄りたかったから。実のところ,夏井川渓谷にかかる手前から雨脚がひどくなり,途中でやんだりはするものの速乾性のウェアが乾く間もなく下着までビチョビチョ。靴の中はズルベチャ。

着替えは一揃いしか持っていないから,風呂に入る前に着替えたくない。雨具を着るタイミングはとうに逸している。こんななりでじっくりビューする気にも,文学するわけにもいかず,ひたすら下ってきてしまった。

小野郷を過ぎると,雨もあがり,日も差して,身体も乾いてきた。常磐線いわき駅をゴールに設定していたのだけれど,午前中に辿り着いてしまった。

なんぼなんでもなあ,というわけで,国道6号・水戸街道をたどって太平洋に出ることにした。しかし,この水戸街道というやつは,かなり自転車に優しくない道で,交通量が多い上,路肩も歩道も走りにくい。早々にめげて,ショートカットで新舞子浜に出る。

怒濤の波頭の太平洋。それでも果敢に沖へと向かってゆくサーファーに敬意を表して塩屋崎へ。

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塩屋崎灯台は霧に隠れて足下がうっすらと見えているだけだ。それでも,霧にむせぶ灯台に寄っていきたいところ(またです)だが,実はこの少し前から,土砂土砂と降ってきて濡れ鼠に戻ってしまっていた。シャッターを切ったら急に歌い出す美空ひばり像にビックリしつつ,鳴いてくれない鳴き砂の浜にがっかりしつつ,江名の集落で太平洋に別れを告げて(やや道に迷いながら⁠⁠,再び山の中へ。

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山越え,と気負っていったわりには,一山あっさり越えたところがいわき湯本だった。駅前の観光番屋でタウンマップをもらい,その前にある地獄のように熱い足湯(59.8度!)で,マップを検討。一番安い公共の湯「さはこの湯」※6で身体をあたため,念願の着替えをすませ,温泉神社に手を合わせて旅を締めくくったのでした。

※1 芝山自然公園キャンプ場(芝山・標高819m)
磐越自動車道,いわき三和ICまたは小野ICから車で20分くらい。素晴らしいロケーションで無料のキャンプ場。あたりにはダートの林道がまだまだ残っている。
難点は駐車場からサイトまでの荷物の担ぎ上げと,嘘のような数のアブとブヨ。そして毎日やってくる土砂降りと大風の定期便。海が近い上,ぽこっとたっている山のせいなんでしょうか,コロコロ天気が変わります。

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降っても吹いてもすぐにあがって,パーっと晴れて気持がよい,と思っていたら,ある日のこと,バケツをひっくり返したような雨量,それがおさまったとも思いきや次にやってきたのが突風。メインタープはすっ飛び裂けてしまいました。メッシュの虫除けテントも飛ばされ,林につっこんで骨組みがめちゃめちゃ。野外用キッチンもポールが折れました。被害甚大……それでも,現地でタープ買い直してさらに滞在していたんだから,いいところなんです。
※2 猿子平
名前の通り,夜になると猿がやってくる。ギャアギャア鳴きながらー⁠ー慣れてくるのかー⁠ーだんだんサイトに近寄ってくるのが分かる。うちは犬が二匹もいたんでさすがに手を出しこなかったけど,食べものはしまっておいた方が無難。
※3 眺望
太平洋どころか,条件が良ければ260km(だったかな)先の富士山が見える! 富士山を望む最長距離なんだとか(あれ?他にもあったような⁠⁠。案内板がたっています。
※4 しょぼい電装
前照灯,テールランプなど自転車の照明関係のこと。この場合,前照灯は車や人に対する注意を喚起する程度の光量で,林道の路面を照らす能力を持っていない器機,と言う意味。

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※5 リカちゃんキャッスル
小野町にあります。私は単なるお土産やさんかと思っていたら,ちゃんと入場料を払ってはいるテーマパークでした。
※6 さはこの湯
安くて泉質もいい,でも狭くて熱い。

著者プロフィール

杠聡(ゆずりはさとし)

イラストレーター,ライター。東京都日野市在住。技術評論社刊の単行本カバーなど広告,出版でのお仕事をベースに,自転車旅行で出会った風景や人を題材にした作品づくりを続けています。

URLhttp://www.yuzuriha.com