[自転車イラスト紀行]徒然走稿

第二十四回「バイバイ・オートバイ」

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そもそも自転車に乗るようになったのはオートバイの整備が自分で出来なくなったからだ。

「なんだバイク整備もできないのか、情けない」

といわれてしまうかもしれない。でも、出来なくなったものは仕方がない。

その昔、パンク修理やチェーンなど外回りの整備はもちろん、キャブレターのニードルを削ったり、プラグタイミングを調整したり、ブレーキオイルを総入れ替えしたり、ガスケットの交換、カムチェーンの調整、エンジンをばらして各パーツを磨いてから組みあげてみたり、はてはエンジンののせ替えまで自分たちでやっていた。

同時にニードルを削りすぎたり、ブレーキパイプに空気が残って軽自動車の4輪のホイールが全部ロックしてしまい、仲間4人で車を御輿のように担いで近所の整備工場に持ち込み、整備士に説教を食らったりもした。カムチェーンの調整をミスって、内側からチェーンがエンジンカバーを削って穴を空けてしまったり、エンジンを組みあげたもののパーツがいくつも残っていたり、エンジン探しのためにジャンク屋のジャンクパーツの山の中を、汗とオイルまみれになってうろついたりもしていた。

当時はガソリンスタンドでアルバイトをしながら、整備士の勉強をしていたこともあって、バイクでも車でも自分たちでいじっては、調子を良くしたり、悪くしたり、再起不能にしたりしていたのだ。

子供が生まれたのを機に、それまで乗っていた近所迷惑な爆音を轟かす単気筒のバイクを手放し、新車で4気筒のマシンを手に入れた。早速まずはキャブレターからだと手を出そうとして驚いた。見慣れない装置がそこにあり封印がされていたのである。

それでも構わずいじってみたら、4気筒のタイミングがガタガタになってしまった。バイク屋に持ち込むと「これはコンピューターで制御する燃料噴射装置なのだから勝手にいじってはいけない。この封印をとるとメーカー保証が効かなくなるのだ」と、怒られた。

磨くこと以外、自分でいじることの出来ない単車には、あまり愛着を感じることが出来なかった。

その後しばらくして、福生の米軍基地の前にある中古バイク屋でベスパの200ccをみつけ、その場でまだローンの残っている新車のバイクを売り払い買い換えた。

ベスパは、2サイクルオイルタンクも備えていないタイプで、給油のたびに計量カップを使い、オイルを量って燃料に混ぜてやるのも楽しい奴だったのだが、あちこちいじったのが悪かったのか、はたまた寿命だったのか、電気系統がおかしくなってしまった。いくら修理しても(修理に出しても⁠⁠、しばらくすると白い煙とともにどこかしらがショートして、電気系がストップしてしまうようになった。

その頃、ちょうど近所に出来た自転車ショップとのつきあいも始まっていた。自分でフレームから選んで、パーツも選んで、自分で組めるという、単純なのに洗練された自転車の構造に魅了され、スクーターは庭の隅で錆びついていった。

数年後、ベスパの存在を知った人から譲って欲しい、との打診を請け、喜んでお譲りすることにした。

お別れも近づいたある日。できるだけの整備・洗車をしてやった。

最後にキックペダルを一発。なんと一発でエンジンがかかった。パロランパロランと白い煙をはきながらボディをゆらしているマシンをみていると、なんだか手放すのが惜しくなった。

数日後、軽トラックがベスパを引き取りにきた。引き取ってくれる男の顔がなんだか急に頼りなく見える。

軽トラを見送った後、ランドナーを庭に引き出し磨いてやった。

絹の道・戦車道路/尾根道緑道(東京都・八王子、町田)

地図:旺文社・でか字マップ「東京多摩」

京王線高幡不動駅・万願寺ふれあい橋~片倉台・16号八王子バイパス~片倉IC・絹の道入り口~大塚山公園・道了堂跡~鑓水・絹の道資料館~小山内裏公園~尾根緑道・戦車道路~薬師池公園・町田リス園~京王線聖蹟桜ヶ丘

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男の子はいくつになってもメカが好き。

「戦争の道具なのだ」⁠人を殺傷するために作られているのだ」と理屈でわかっていても、やはり戦車や戦闘機には惹かれるものがある。等身大のガンダムがお台場にやってくればすぐに観に行ってしまうのです。

そんな私に、地元に『戦車道路』なるものがあることを教えてくれたのは、最近廃刊になってしまったタウン誌のガイドでした。

ネットに情報があふれているとはいうものの、ほとんどがアマチュアの発信しているもの。プロの目を一度通過した良質な情報を届けてくれるメディアが無くなっていくことに危機感を感じます。⁠ネットの情報はタダであたりまえ」という感覚が改められて、インターネットであれ責任のある情報にはお金を払う、という習慣が根付かないならアナログの情報メディアも大事にしていきたいなあ。

とひとしきり嘆いたところで、この話はまたいずれ。

さあ、戦車道路に出かけましょう。

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「戦車」と聞いてはじっとしていられません。高幡不動駅を出発して、ふれあい橋から浅川を遡っていきます。長沼橋で浅川と別れて、多摩丘陵へと上ります。

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坂を登り切り、野猿街道を渡ってしばらくいけば16号八王子バイパスを渡る陸橋があります。こいつは渡らないで防音壁の手前を左へ。

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バイパス沿いの道を橋本方面へ。

いくつか道を横切って行き止まりに突き当たります。

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行き止まりの横に、うんざりするような階段がそびえていますから、うんざりしながら担ぎ上げてください。

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がんばって担ぎ上げれば、素晴らしパノラマが待っていてくれるのです。

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そして、ここが『絹の道』の始まりです。始まり、というのは間違っていますね、拠点は八王子市街。本来は八王子から横浜へ、幕末には貴重な外貨獲得の物資だった絹織物を運んだ道なのです。

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このあたりは大塚山公園として整備されていて、絹の道で一番標高の高い場所です。明治時代には、絹の道の難所であるこの峠を越える商人や旅人の安全を祈願して道了堂が建立されました。いまではその礎石が残っているだけです。

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そしてこの先は少しの間ですが時代を感じさせる峠の道を楽しむことが出来ます。かなり急勾配で、落ち葉がたくさんつもって路面の状況もわかりにくい、無理をせず押していくのもいいと思いますよ。

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峠道を抜けて一般道と合流した角には絹の道資料館があります。何度か訪れているので今回は通過しましたが、初めてなら見学の時間を行程に入れておいても損はありません。

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絹の道資料館を過ぎ、柚木街道を渡ると、右手にこれまた歴史を感じさせる小泉家屋敷が建っています。養蚕農家がそのまま残っている佇まいに思わずふらふら近寄りたくなります。でもそれはNG。棲んでいる方がいらっしゃいますから、見学は敷地の外からにしておきましょう。

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顔を上げれば大きな給水塔が目につくはずです。この給水塔の下あたりに『戦車道路』の起点・小山内裏公園があります。

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『戦車道路』は小山内裏公園内を貫いています。

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戦車道路は第二次世界大戦末期に、戦車の性能テストのために造られた道です。今でも相模原には三菱キャタピラーの工場がありますね。

現在は緑がいっぱいの『緑道』として管理されています。

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自転車と歩行者は同じ道を共有しています。もちろん歩行者優先。追い抜いてもびっくりさせないスピードでペダルを踏んでください。ゆったり走ってこそ味のある道です。

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公園内の案内板です。今は右端の赤で記された現在地にいます。公園はここで終わります。

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小山内裏公園の出ると目の前に『尾根緑道』の看板が。両側の開けた尾根の道が始まります。

青空が映える季節もいいけれど、新緑の季節、紅葉の時期に再訪してみたいものです。さくら祭りも開かれるとのこと。

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緑道沿いに教会が建っていました。石造りのこの素敵な建物なのに、白地に赤をぶち抜いた看板が残念……

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ここが尾根緑道の終点です。振り向いて撮っています。

緑道を出てすぐに右折すれば町田街道に出ます。できるだけ幹線道路は避けたいということで、目の前にあるリサイクルセンターの脇にある小道を選びました。坂の下に見えているのは処理熱を利用した室内温水プール。この坂を下りてすぐにまた登り返せば芝溝街道に出ます。左折して坂を下り、すぐに鶴見川を渡ります。ここで川沿いの道を選んでみたものの、途中で尽きてしまい、結局芝溝街道に戻ることになりました。

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ここは我慢して車と併走し、右手に小田急の津田物流センターが見えたらセンターへ向かって右折します。道なりに入っていけば整備された鶴見川沿いの道に出ることが出来ます。

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橋のたもとに渋いお米屋さんのある参宮橋を渡って…

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薬師池公園に到着です。

公園内は自転車乗り入れ禁止。私たちは端っこの入り口の階段から入ってしまったのでそれを知らず、お店の人にさりげなく注意されました。正門から入れば、入口に自転車置き場があります。

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公園の由来になった薬師池。農業用水だったそうです。

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そして、こちらが池の由来になった薬師堂。

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薬師堂の右横にある急な階段を登って一度公園から出ました。そこは谷戸の集落を望むサンサンと日が降り注ぐ斜面です。ここでお昼にします。

本日は手製のおにぎりの他に、インスタントラーメンを作るので、火気厳禁の公園内では昼食に出来なかったのです。

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公園には武蔵野の旧家が移築されていますから、火を使ってはいけないというのも頷けます。

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お昼を持参していないなら、雰囲気のある茶店に腰をかけて軽食をとることもできますよ。

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斜面が多いせいか地図で見るよりも広く感じる公園です。周囲を巡る散策路もあって、半日たっぷり遊べそうです。

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公園を出て鎌倉街道をはさんだお向かいに、本日もうひとつのお目当て町田リス園があります。

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門をくぐればすぐに愛らしい姿に出会えます。家族ツーリング、家族候補の女性とのツーリングにももってこいの目的地です。

敷地内には台湾リスたちが放し飼いにされています(もちろん逃げ出さないようケージ囲われています。人間がリスの家にお邪魔する形です⁠⁠。ひまわりの種などが売られていて、直接餌をあげることが出来ます。平気で手の平にのってくる愛らしさ。

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放し飼いの台湾リスの他にもたくさんの種類のリスやウサギ、プレリードッグなどが飼育されています。風の谷のナウシカに出てきたキツネリスそっくりの格好いい奴もいました。でも、私は、もっかダイエット中という、この元の姿がどんなだったのかわからないこいつが一番のお気に入りです。

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さあ、日も傾いてきました。リス園も閉園の時間です。

再びサドルにまたがり、鎌倉街道を北上します。途中で旧鎌倉街道に入り、知る人は知っている酒のこやま・小山商店で反省会用の酒を買い込みます。

デイパックとフロントバッグに一升瓶を突っ込んで、京王線・聖蹟桜ヶ丘駅。そして多摩川堤~浅川とつないでゴールの高幡不動に戻りました。

今回のイラスト

「あ、フロントのマッドガードを描き忘れている」と思われたでしょうか。

違うのです、天候の心配もなく、ロングツーリングでもないとき彼女はフロントマッドガードを外したままにしているのです。

私の相方も「輪行の時面倒くさい」といって、マッドガードをつけてくれません。つけた方が絵になるときは付け加えてしまったりもします。

が、今回はなんか無い方がいい感じなのでママいきました。

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