ライフハック交差点

第16回 GTDの生みの親 David Allenさんインタビュー特別編(4)Web2.0とiPhone時代のGTD

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2 分

新しいテクノロジーは新しい「問題」「挑戦」を明らかにした

Kathryn Allen(以下,KA⁠⁠:
⁠堀さんの質問は私にも興味深いわ。つまり携帯電話やネットは,リアルタイムに人をつないでいるけれども,そのせいで人は外からの割り込みに『ノー』といえなくなりつつあるということよね?」

MH:
⁠そうです。つい先日も,携帯メールへの返事が5分以内にこないと不安を感じ始める子供が多いとか,夜に眠るときにも『最後に返事をせずに眠った人』にならないようにするためにメールを打ち続ける子供がいるという研究が発表されていて,とても不安になりました。こうした機械は私たちに力を与えてくれるはずが,逆にストレスを生み出し,自由意志を奪っているのではないかと思うのです」

KA:
⁠でも面白いのは,こうしたデバイスは,その子供たちの『つながりたい』という欲求をさらに引き出しているということよ。つまり携帯それ自体は無実で,それは私たちの社会の中にあるもっと深い欲求や問題を引き出したに過ぎないのではないかしら。この違いを意識することはとても大事で,単にツールを責めるのは問題に対する間違った対処になりかねないわ」

MH:
⁠お察しの通り,日本でも子供が携帯を使うことを制限すべきか議論があります…」

DA:
⁠そしてアメリカの大企業では『金曜日は電子メール禁止』の日を作ったところもあるよ,おかしいだろう?(笑⁠⁠」

「ある意味,テクノロジーは私たちの神経システムを文化レベルでアップグレードしているといってもいいのかもしれない。進化の過程では,よりレスポンスの早い神経システムを手に入れた動物が食物連鎖の中で高い場所を獲得していったわけだけれども,そうなると今度はそれまで気がつかなかったたくさんのことが意識のなかに入るようになってしまうんだ。子供たちが感じている承認欲求の問題や,自信がもてないという問題も,携帯メールなどを通して初めて意識されるようになったものなのかもしれないね」

「メールで気が散ってしまって仕事に集中できないという人も同じだと言っていいだろう。それは本人の集中力の問題なのか,会社のなかのチームに内在する問題なのか,文化が直面している問題なのか,私にはわからない。ただ,メールそれ自体が問題というわけではないのだよ。GTDと同じで,メールはツールに過ぎないからね」

MH:
⁠DavidさんがGTDの基本コンセプトを子供時代から教育させたいとおっしゃっていた気持ちがわかります。フォーカスをもった考え方をはぐくむためにも,私もそれに賛成ですね」

画像


この会話の収穫は,ネットが進化し,⁠職場」「家」というコンテキストが消えたように見えたとしても,実際にはそれを選び取っているのは自分自身であるという意見を引き出せた点でした。

反面,ツールの側からやってくる情報やタスクの氾濫から身を守るために必要なのはGTDのような「仕事術」なのではなく,自分が「いま」⁠この場所で」何を引き受けるつもりなのかを選ぶ,明確な意志の力なのだということを諭された形となりました。

友達から認められたいという欲求で携帯メールに中毒となる子供がいるのと同じように,社会的承認を求めて私たちは限度を越えたタスクを引き受けてはいないでしょうか? それがGTDで処理できるレベルを越えているのなら,問題はGTDの方にあるのではなく,私たち自身の仕事のあり方の側にあるのかもしれません。

さてインタビュー最終回の次回は,世界と日本におけるGTDの広がり,そして価値観ベースの他の仕事術と行動ベースの仕事術であるGTDの比較という話題に切り込んでいきます。

インタビュー最終回もお楽しみに,Happy Lifehacking!

著者プロフィール

堀 E. 正岳(ほり E. まさたけ)

ライフハック,GTD,自己啓発などをテーマにしたブログLifehacking.jpの管理者。海外のブログを広く渉猟しているうちに見聞きしたことや考えたことまとめて,ちょっといい話にして紹介するのが何よりの楽しみ。ライフハックとは「自分を変える新しい習慣作り」をポリシーに,日々地味に更新中。

URLhttp://lifehacking.jp