エンジニアのためのイベント映像活用方法

第5回 大規模イベントでのUstream配信の設計(その2)

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ここまでの構成図

では,ここまでの機器の構成を図にしてみましょう。

図5 機器の構成

図5 機器の構成

図の中で,会場の音響機器から伸びているケーブルを「XLR / LINE」としていますが,これは会場によりマチマチな部分です。会場側の担当スタッフにこちらの機材構成を伝え,どのようなケーブルで配線可能かを事前に相談しておきましょう。

XLRというのは聞き慣れない方もいるかもしれませんが,よくマイク用のケーブルとして使われているものです。

音声用としてよく見かけるミニプラグ付きのケーブルやピン端子ケーブルと比較するとノイズに強く,長い距離を伝送できることから,業務用としてよく使われています。また楽器の世界でもよく使われているようで,家電量販店の楽器売場などでも手に入れることが可能です。

ケーブルの話

音声ケーブルの話が出たところで,大きめのイベントで関連してくるケーブルの話をもう少ししておきましょう。

先ほどの構成図には含めていませんでしたが,イベントで配信をするためには電源ケーブルやネットワークの配線も考えなければなりません。

電源の配線

電源の配線に関しては,多くのイベント会場では何かしらの準備がされています。機材を設置したい場所まで延長して頂けるかどうか事前に相談をしておきましょう。もしも会場側での延長が難しいようなら,自前で電源リールなどを用意しなければなりませんので,明確にしておくべきポイントです。

とはいえ,今まで電源延長について「何も用意がない」と言われたことはないので大丈夫だとは思います。

ただし,自分の機材だけでもかなりの数の電源を利用するはずなので,手元の機材分をまかなえる程度の電源タップは自前で用意しておくのが良いでしょう。

ネットワークの配線

次にネットワークの配線に関してです。

これまでの連載では,ネットワークについて特に触れてきませんでしたが,Ustream配信をするなら,可能な限り有線LANを使うべきです。

無線LANや各キャリアのデータ通信端末などでも配信することはできるのですが,トラブルの発生可能ポイントが増えてしまう印象を持っています。

例えば,次のようなトラブルのパターンがありました。

  • 無線LANルータとの接続が不安定になった
  • 端末のアンテナ表示は何本も立っているものの速度が非常に遅い
  • データ通信端末を忘れた(!)

最後のは笑えない冗談だとしても,通常時は大丈夫でも人が集まった際には繋がらなくなる恐れが多いのが無線LANやデータ通信端末です。

では,有線LANなら何も問題がないのかというとそうでもありません。

例えば,会場側で用意してもらえる有線LANの場合,上位の接続も確認しておきましょう。近年は上位が光回線の場合が増えていますが,少し前にはADSL回線のところもありました。

ADSLは下り方向のスピードは速くても,上り方向(Ustreamサーバへのデータ転送方向!)のスピードが遅いという特徴があるため,高品質な配信を目指す場合には適しません。

また,上位が光回線だと言っても次のような構成にしてしまうと,トラブルが発生する場合があります。

図6 トラブルが発生する可能性がある構成

図6 トラブルが発生する可能性がある構成

会場提供のネットワークは,多くの場合,DHCPでIPアドレスが割り振られます。そのDHCPを担う機器がどのような設定なのか,どのくらいの性能なのかによってトラブルが発生する恐れがあります。

例えば,上記の図のように,⁠無線LANルータ」でDHCP機能をオフにしていた場合は,DHCP機能でIPアドレスを割り当てる役割が「会場のルータ」になります。さらに,この機器でDHCP用に割り当てられているIPアドレス数が(極端ですが)2個だとします。

この状態だと,図の中で合計4台ある「Ustream配信機器」⁠参加者PC」⁠参加者モバイル」が,2個のIPアドレスを取り合う形になってしまい,通信が不安定になる,という自体が発生します。

この問題への簡易的な対応としては,無線LANルータでDHCPの機能を有効にします。

図7 無線LANルータのDHCPを有効にする

図7 無線LANルータのDHCPを有効にする

このように比較的簡単に解決できる問題もありますが,他にもたくさんの課題が出てきます。

正直なところ「大きめのイベント」で,ネットワーク関係のことまで配信担当者がカバーしていると,手が回らなくなってしまうと思います。

できることなら,ネットワークに強い(特にインフラ系)の方々の手を借りましょう。イベントの開催に協力してくれる「仲間」がいると思います。

もし,それも難しそうであれば,各イベントでのネットワーク構築のノウハウも公開されていますので,参考にしてみましょう。

また,こういったイベントの開催に協賛してくださる企業の中には「ネットワークスポンサー」になっていただける事例もあります。各種機材の準備から配線作業まで行なっていただきき,快適な通信環境を提供していただきました。大変ありがたいことです。

著者プロフィール

鈴木則夫(すずきのりお)

株式会社クロコス所属ではあるものの,本連載と業務とは特に関係がない。

個人的な興味として,勉強会やカンファレンスのUstream配信を行なってきており,ときおり「KaigiFreaks(配信班)」の名の元に活動している。

「suzuki」というアカウントを取得するのが好き。

Web日記:http://suzuki.tdiary.net/
Twitter:@suzuki
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