エンジニアをレベルアップさせる「ファシリテーション入門」

第11回 ファシリテーター型リーダー

2009年3月16日

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2 分

ファシリテーター型リーダーの実践

リーダーシップはいろんな定義がありますが,ここでは「組織の目的を示し,組織全体を動機付け,目的達成のために人を動かすこと」と定義してみます。ファシリテーター型リーダーは,ファシリテーションの技術を使い,こういった事を実現していきます。

具体的には,これまで説明してきたファシリテーションの技術を使いますが,私自身,ファシリテーター型リーダーとして注意している点を説明しましょう。

1.納得感を高める

重要視しているのが,メンバーの納得感を高めるということです。納得すれば自発的に行動します。納得していなければ仮に行動したとしても嫌々です。

モノづくりというのは嫌々していたら,良い品質のものは出来ないというのは私が経験上感じる事です。ソフトウェアにしても製造やテストの局面では手を抜こうと思えば,いくらでも抜けます。そして管理も限界があります。よい品質を作るためには納得感をあげ自発的にやってもらうことです。

納得感を高めるために特に意識しているのは,充分話をしてもらう事を心がけています。人はどのような決定であれ,思った事を充分発言し,聴いてもらったという実感があれば納得感は高まります(ここでファシリテーションの会議技術がものをいいます⁠⁠。

私自身,プロジェクトでスケジュールを作るとき,メンバーにもアイデアを出してもらい,かなり時間をかけて話し合います。何度も作り直しながら,お互いが納得のいくスケジュールを作るのです。

時間はかかるのですが,合意して作ったスケジュールは,メンバーも死守しようと真剣に守ってくれ,最終的には納期遅れは少なくなりました。

2.プロセスを管理する

納得感にも関係がありますが,プロセスを重要視します。きちんとしたプロセスを踏んで決まった事は,メンバーに任せても,それほど間違った事にはなりません。逆にいうとプロセスはきちんと管理しなければなりません。

何か決定するときにも,充分議論したか?対案も検討したか?別の視点からも検討したか?など,中身でなく正しいプロセスで意思決定したかはシビアに見極めます。

私はリーダーとして,正しい決定をするよりも,メンバーが納得する決定の方を大切に考えます。きちんとしたプロセスで,充分な議論をした場合,メンバーの納得する決定というのは,間違っていないと思っているからです。

リーダーになるために,ファシリテーションの薦め

私は会社員時代,技術の習得にあけくれ,リーダーシップについて学ぶ機会は,あまりありませんでした。管理職になる前に,数回リーダーシップの研修を受講しましたが,数日間だけの研修では正直あまり身についたとは思えませんでした。

私がリーダーシップを学んだのは,優れたリーダーの下で働いた経験からです。こんなリーダーになりたい,なぜ彼はこのような判断をするのか? そう思いながらメンバーとして体験した事が私にとっての学習の機会でした。

現在の状況をみてみると,プロジェクトも忙しく,部下を育成したりする余裕は少なくなってきているように思います。また運よく優れたリーダーにあたればよいですが,そうでない場合は,リーダーシップを学ぶ機会が限られているのが現状と思います。

そこで,オススメするのがファシリテーションです。ファシリテーションは話し合いの技術ですが,リーダーシップの技術が含まれています。

SE業務のかなりの時間を占める会議の技術が向上し,リーダーシップ能力も高まるファシリテーションは,SEにとってもはや必須の能力といえます。まだリーダーになっていない人は会議でファシリテーションを実践し,きたるべきリーダーになる日に備えましょう。この技術は絶対にムダにはなりません。

主人公はメンバー

最後に私の考えを少し言わせてください。私は仕事の主人公はメンバーだと考えています。設計するのも,プログラムを製造するのも,テストをするのも,顧客の要件を聞くのも,メンバーです。体制図ではプロジェクトマネージャ・リーダーをトップとして,階層構造になっていますが,最終的な製品(顧客に対するソリューション)の品質を確保するキーは,間違いなくメンバーです。

リーダーはメンバーが思い切り仕事を楽しみ,力が出せる環境を作る事に徹する。それが最終的な成果物の品質を向上させます。

私は自分の力を活かしてくれるリーダーと共に仕事をしたいし,自分自身もそんなリーダーになりたいと思っています。プロジェクトはいつか終了しますが,組織が発展していくためには,チームのメンバーは成長し続けなければなりません。

成長を続けるためには,メンバーが仕事を通じて,楽しみを実感する事が大切です。ファシリテーター型リーダーとは,メンバーが仕事を楽しめるように,環境を整える事だと私は考えています。

メンバーが活き活きと働けば,品質は向上し,組織の目標も達成する。これからの時代のリーダーのスタイル,それがファシリテーター型リーダーです。

著者プロフィール

野口和裕(のぐちかずひろ)

13年間の会社員時代,SEとして企業や官庁で各種システムの設計に従事。製造業,建設業,人事システムの構築を数多くこなす。その後,独立しフリーランサーのSEになる。現在有限会社NTX)を設立し,SEの傍らヒューマンスキルの研修を行う。

著書は『SEのための「どこでもやれる力」のつけ方』(技術評論社刊)。3度の飯はお好み焼きでOKという広島人。

ブログhttp://blog.livedoor.jp/facilitator/

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