モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第14回 「議論を上手に整理したい」と思っている人へ

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

議論を上手に"1つに"まとめたいですか?

設定していた議題,課題,ゴールイメージのとおりに
流れていかないのが議論

GFで〈拾う〉→〈振り返る〉という作業を繰り返すと,当初予定していた会議のアジェンダや目標設定とは,全く意外な切り口で突然整理されたり,想定していたゴールとはまったく違う新たな方向へまとまっていくことが多々あります。グラフィックの中でこうしたことを体感するたびに,⁠整理しよう」とすることが時に意図的な作業のように感じてしまい,⁠議論から生まれた本来の姿にどこまで即しているのかなあ?」と思ってしまいます。

限られた時間の中で日々議論をしていると「整理しよう」と先を急ぐのは当然かと思います。何かしらのアウトプットも必要でしょう。そんな議論の流れ方はどこか「1つのゴールに絞り込んでいく」ような印象を受けます。スピード感を持って議論の流れを「1つのゴールに絞り込んでいく」進め方は,例えば,すでに,明確な数字目標を実現するために何かを判断・決断する会議には向いていると思います。

画像

しかし,例えば「課題が山積みで何から手をつけていいか,もう一度整理したい」と集まったのに,議論の時間がなくなってきて,突然アウトプットを出そうと,なんだか力技でゴールに絞り込んでいくような感じを受けるときがあります。⁠みんなのゴールイメージがバラバラなので整理したい」と言っていながら,どこかすでに決まったゴールに議論が押し進められてく感じを受けたときもあります。

そんな進め方を感じたとき,私の右手は,どこか"上手く""意図的に"まとめられていく違和感を覚えますし,その推し進めるスピード方に「待って~」と言いたくなるときがあります。

推し進めて絞り込んでいく〈整理〉術と
拾ったものを再編集する〈整理〉術

「ゴールに絞り込んでいく」議論のまとめ方に比べると,GFの整理の仕方は次のようなイメージといえるかもしれません。

これまで1時間議論してきた,たくさんの発言カードが神経衰弱のときのように机の上に散らばっている。そこで,仲間同士のカードを束ねてみたり,関係しているカード,連鎖しているカードを並べ替えてみたり,という作業をしている。〈整理する〉というより"編集しなおしている"という感じ。

画像

このとき,カードの束ね方も1つとは限りません。だから同じカードを複数枚用意する必要もあります。

結論を急ぐ会議に慣れていると,こうした作業は,もどかしく,じれったいように思えるでしょう。でも,ちょっと立ち止まって,これまでのカードを振り返り眺めてみると,〈束ねて一気に捨てられるカード〉もあれば,並べ替えたら優先順位が明確になって〈一番最初に手をつけるべきカード〉が嫌でも見えてくる。結果として目に見える具体的な結論が現れてくるという効果があります。本音を拾いやすいGFでは,きちんと出てきた発言カードを"編集"するという作業は,本来〈整理〉されていくはずの姿にとても近いのではないかと思っています。

答えを急いではいけない議論も
共存している

たった2~3時間の議論でも〈振り返る〉作業というのは,効率を要求されるビジネス社会では,手を出しにくいと思います。でも,

  • 本当の「効率のよさ」って何でしょう?

決裁を目的にした会議には当てはまりませんが,新規サービスを企画・検討するような会議では,特に斬新なアイデアを探しているせいか,みんなが前ばかり向いているように感じることがあります。⁠前回までの議論はなんだったの?!」と言いたくなるぐらい,大事なものが足元に落ちているのに,それに気づかずどんどん歩いて行く感じ。たった2,3時間の会議でも「1時間前の議論はなんだったの?!」と思うぐらい,毎回新しい議論が展開される。その一方で,必ずといっていいほど「あれ? 前回もその議論してましたよね?」といった堂々めぐりの発言も聞こえてくる。

いったん立ち止まって〈振り返る〉という作業は,遠回りしているように思えます。でも,結局は,後から一足飛びに追い越してトップに走りだせるようなパワーを秘めているんです。そしてこの作業は一度やっておくだけで,もう二度も三度も同じ議論を繰返さなくて済むという,効率のよさも発揮してきます。

1時間でも2時間でも人が集まったら,その議論は〈拾う〉→〈振り返る〉価値が必ずある。それがたとえその日の会議で想定されたゴールにそっていなくてもです。これはもう「宝の山!」と常々思っています。

議論を進行し,まとめる立場の方にとっては,邪魔な発言も多いと思います。でも議論のまとめ方を少し変えてみたいと思うのなら,試しにこう考えてみてはどうでしょうか? 2つのタイプの議論が共存している,と。即効性のある打ち手を絞りだす議論をしている一方で,同じ時間に,実は後から一気に大きな影響力を発揮する打ち手を見つけ出せる議論(発言)も共存している,と考える。

会議や研修を主催すると,主催者側としては,ついつい,最後はうまく整理されたアウトプットを欲しくなります。でも,アウトプットは必ずしも1つではないし,その日うまくまとまらず気持ち悪さが残っても,後日きれいに整理されたりするんです。議論を〈整理〉するという作業には,そんな「時間差がある」ということを覚えておくだけでも,いろんな発言が大切に思えてくると思いますがどうでしょう?

逆に,会議や研修に参加する立場になったとき,どうも自分の発言が流された感じを受けたら,もしかして今の議題や話している相手と「時間差」があっただけなのかもしれません。お互いの「時間軸」をすりあわせてみると,その発言を今取り上げるべきか,ちょっと脇に置いておくものか,交通整理ができるかもしれないなと思いましたが,どうでしょうか。


さて次回は,議論を絵にしたその先のこと,どうしたら「絵に描いた餅」で終わらせないようにできるか,ということについて書いてみたいと思っています。

ということで,今日のところはここまで。最近すっかり不定期便になってしまっていますが(すみません!⁠⁠,次回も楽しみにしていてください。グラフィックファシリテーターのゆにでした(^-^)

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

バックナンバー

モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

バックナンバー一覧