モヤモヤ議論にグラフィックファシリテーション!

第25回 聴き手座談会(3)会議のキーマンは“聴けている” ~聴ける基本姿勢,マインド~

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[聴ける]基本姿勢 = [聴き手]マインド

ゆに: [聴ける]スキルや会議の上手な進め方といったノウハウの話の前に,そのベースにある気持ち・姿勢について聞かせてください。聴いている人には似たマインドのようなものがあるように思うんですけど,どうでしょう?

[聴き手]マインド ① 「あと一歩」で分かり合えるのに「もったいない」!

田中:私も,いろんな方に「どうしてメディエーターを続けてるんですか」と聞かれて,自分でも「なんでなんだろう」とずっと思っていたのですが,今日ちょっとはっきりしました。目の前の方が分かりあえたときの喜びをおすそ分けしていただいているというのは,すごくあるのかな。

ゆに:その喜びに至るまでの,⁠もつれ」に付き合ってるときは,どんな気持ちですか?

田中:あと一歩!あと一歩!という感じ。もうちょっと行けばきっと分かり合えるんだよっていう。

奥山:うんうん。

ゆに:私ならあーもったいない,もったいない⁠。みんな,いいこと言ってるから拾って拾ってかな。

田中:事件を解決したいというよりはその人を助けたいと思う部分なのかな。解決を急ぐのではなくて,その人の気持ちや言動をもっと大切にしたらなんとかなるんじゃないかという部分。

ゆに:私の「拾って拾って」という作業も,田中さんの言葉を借りると,みんなの発言を「救って救って」かもしれないですね。その人の発言を救うというのは,その人を大事にしたい気持ちと同じで。

田中:私自身すごく口下手で。私が当事者になったら,分かりあいたいよねと思う反面,分かってもらえない,分かり合えなくてすごく悲しく,落ち込んでいる自分がいるんです。攻撃的に責められると逃げたくなっちゃったりとか,本当だったらもっと分かり合えるのに言えなくなってしまう。そこを誰かに助けてもらいたい,支援してもらいたいと自分が思っている。逆に,自分が思っている以上に強い語調や言葉になってしまう人にとっては,もっとやわらかい表現への言いかえが何かの助けになるかもしれないですね。

ゆに:管理職研修で言えなかったこと描いてくれたとうれしそうに言っていた人たちが何人も居らっしゃったのを思い出しました。本当はみんな「分かってほしい」し,「分かりあいたい」んですよね。

[聴き手]マインド ② 急いては事を仕損じる。プロセスを大事にしたい

奥山:今すごく共感して聴いていたんですが,私もなぜこういう「モヤモヤ部分と付き合っているのか」と言うと,田中さんのあと一歩!あと一歩!と同じで。例えば,インド風のカレーを作るには,ものすごく長い時間たまねぎを炒めないと絶対美味しくないと思っている(笑⁠⁠。友達にも「本当に長いこと我慢するね」と言われたんですが,途中で諦めたら美味しくないじゃん!というのが私(笑⁠⁠。

田中:ある方に「料理とメディエーションって似てるよね」⁠お互いに美味しいところを一緒にして,もっと美味しくするのが料理でしょ」と言われて,あぁ~そうだな~と思ったことがあって(笑⁠⁠。そのプロセスをじっくり味わいたいという性格的なものが,

奥山:たぶんあるんでしょうね。私は他の人たちと比べて,鈍かったりとろかったりするところがあるんですね。急いては事を仕損じると思っている。あと,解けていくプロセスっていうのが結構好きだと思うんです。子供の頃から,こんがらがったものっていうのを見ると無性にほどきたくなる(笑)

田中:(笑⁠⁠。あー,私も! 私も人と比べて運動神経がないっていうか,鈍いなと我ながら思う反面,こんがらがったアクセサリーとか,ほどきたくなる

[聴き手]マインド ③ もつれていたら,ほどきたい症候群

ゆに:プロセスを味わいたいとは,絵巻物を描いている作業がまさにそれ。そこで今初めて気づいたんですけど,私は脊髄反射のような感覚で言葉を拾っていたつもりでしたが,じつは無意識のうちに何かを探しながら拾っている気がします。奥山さんも田中さんも何かありませんか? そんなほどきたい症候群的なものは。

田中:(笑⁠⁠。ほどきたい症候群!。そうそう,それがあと一歩 あと一歩なのかも。

ゆに:本の翻訳でもいいのに,あえてチャネラー状態になっているのはどういう感覚ですかね?

奥山:あ,やっぱり「もったいない」なのかもしれない。人があっちとこっちに居て,橋がかかっていない。それが辛いんです。だから,どんな形でも良いから,モヤモヤが相手に伝わったっていうことだけでも達成感みたいなものがある。みんな言いたいから,聴いてほしいから。この人はこの人と話したという実感を持ったっていう感じ,それだけでも一歩前進のような気がしている。

ワタ:奥山さんはそのモヤモヤまで聴いて通訳しなければいけないなんて大変だと思っていたのですが,実は全くの誤解なんですね。でも,人の発言にゆっくり丁寧に付き合うことを自分が実践するには,かなり忍耐を要すると。これだと及び腰になります。私はせっかちな部類に入る性格なので,かなりハードルが高いです。

ゆに:私たち3人とも「解決に急ぎたくても急げない・急がないポジションにいる」からできるのかもね。そして先を急がず,後ろを振り返るくせがある⁠。でも私たちに限らず,だれもがそんなふうに「ちょっと立ち止まって振り返っている」ときが仕事の中にあると思うんだけど,どうだろう?

[聴き手]マインド ④ 「わたしが社員なら」 ~惚れっぽい!

ゆに:私は毎回,研修や会議で内容を絵にしているうちに「私なら,こうしたい!」と,すっかりその会社の社員になっちゃってます(笑⁠⁠。でも一方で,同じように第三者で同席している人たち(例えばファシリテーターや研修会社の人,コンサルタント)が,同じ気持ちになっていないと,その温度差にものすごく「えー!なんで!?」と腹を立てている時がある。役割分担としては当然なんですけどね。

奥山:(笑⁠⁠。⁠愛」ってやつですね。

田中:(笑)

ゆに:!!?

奥山:相手と同化するというか,ある程度,相手の立場に入り込んで「私が当事者だったらこういう風になりたい」みたいなところまで行ってる感じですよね。

ゆに:うんうん。私の心の中の口癖は私がこの会社の社員だったらとか私がこの商品開発をするんだったらとか。

奥山:なんか惚れっぽいみたいなところがあるんだと思う。

ゆに:「惚れっぽい!」そのとおりですね。私は,いつもその会社に転職したがってますもん。社員証が欲しいなと思う一方,いくつあっても足りないと思ってる。

奥山:すごくわかる(笑⁠⁠。

ゆに:「愛」は図々しいぐらい持ち込んでますね。初対面でも,参加者で気難しそうな顔をしてる人を見つけたら「本当はそんなことないくせにー」

全員:(爆笑)

ゆに:その人の似顔絵をこっそり描いて,絵の中でいじって,どれだけ笑わせられるかとか。かなり実は随所でやってますね。

奥山:うんうん。

ゆに:エスノグラフィーの調査で一日真横に座って観察していると,恋人みたいになっちゃうって言ってたのも同じ心境?

ワタ:あー,私はわりとドライなので。

全員:(爆笑)

ワタ:その域に,万人ができるかっていうと難しい。

ゆに:でも,聴いていると,自然と好きになっちゃいません?

奥山:わかる,わかる!

ゆに:[聴き手]マインドを会議に少しでも持ち込んでみたときに,お互い分かりあえるという実感を少しでも増やせたら,実は会議の進行がガラッと変わったりすると思うんだけどな。無愛想な顔をしていても,いくらもめていても,絵を描いていると,結局みんな分かりあいたいんだな」ということがよくわかるから。

(マインドの次は,スキル分解…詳しくは次回に)

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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