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第40回 「ハートが描ける会議」どうしたらできる?

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ネガを吐き出し切った先にハートが出てくる

そして,しばらくすると,おもしろいことに,どんな会議でも「ありたくない姿」というのは,だいたい2つか3つに絞られてきます。明るい絵巻物の前ではベスト3すら選べないのに,暗い絵巻物の前で「コレだよね」という絵が絞られてくるのです。

  • 「ビジョンも示せさずマネジメントもしない上司の存在」
  • 「昇給も昇進もできしない人事給与制度」
  • 「新しいことに取り組もうという気持ちが生まれない職場環境」

このとき人気のあったワースト3は上記のとおりでした。そうして,休憩を挟んで3時間ほどたった頃,ある人がいった一言に,みなさんがハッとしました。

  • 「なんだか大手企業みたい」

それを聞いて新しい会話が聴こえてきました。

  • 「就職活動のとき私はあえてベンチャーを選んだのに」
  • 「全然ベンチャーらしくない。大手企業のような組織」
  • 「ベンチャーだからできることをじぶんたちもお客さまに提案していない」

さっきまで「ベンチャー」という言葉は1度も出てきていませんでした。

  • 「ベンチャースピリットを忘れたくない」
  • 「世の中があっと驚くサービスをつくりたい」
  • 「若くても実力で評価される給与体系を役員に提案する」

このときハートが描けました。ベンチャースピリット。それは,その会社の人たちみんながじつは共通に大事にしていたものでした。ただ,社内ではあまりに当たり前過ぎて忘れかけてもいました。日々,目の前の業務に追われて見失いかけていたことでした。

ここで「ベンチャースピリット」という単語だけを切り出して読み取らないでください。つい「ベンチャースピリット」をキーワードとして一人歩きさせてしまいがちです。でもそうなると途端にその会社らしさを失います。あくまでも「暗くて個性的な文脈の中から再確認した」ベンチャースピリットです。ほかの会社のベンチャースピリットとは違うのです。その暗い文脈を無視して「ベンチャースピリット」とだけいってしまうと,同じ会社の中でも伝わらなくなります。

ネガはポジの裏返し。嫌いは好きの裏返し

ネガティブな気持ちを吐き出し切ると,ハートが描けてくる。暗い絵を描くたびに確信するのは「嫌いは好きの裏返し」なのだなあということです。わたしはこの瞬間を何度も体験するようになってから,今ではネガティブな発言が大好きです。

「嫌いは好きの裏返し」というと「別に好きなわけじゃない」という方もいます。でも,正直,第三者の私からするとまったく腹の立たないことなのに,なぜかみなさん腹を立てている。どうしてかなと思うと,それは「なんとかしたい相手」だからこそだからではないでしょうか。本来は「こうありたい」⁠こうあってほしい」のに,そうでないから愚痴も出る。それは,好きな人に抱く気持ちに似ていると思うのです。

愚痴や不満なんて言いたくない、聞きたくないと思うかもしれません。けれど「好きの反対は嫌いではなく,無関心」とよくいいます。多くの会社で聞くのは,隣の席の人にも,会社の今後にも無関心の状態で,目の前の仕事に追われています。

そんな状態に比べたら,今この会議で,腹が立ってきたり,イライラしてきたり,弱音を吐き出した,という状態は,良い兆しだと思うのです。無関心で何も言わない状態でいるよりはずっといいと思うのです。うまく言葉にできなくても,そのイライラや不満な気持ちをぶつけている状態は,なんとかしたい相手に対する,共に生きていきたい,未来に進んでいきたい気持ちの証です。

必ず共通のハートがある

またネガティブな発言の面白いことは,それで描ける<暗い絵>に,それほど種類がないということです。先ほどの話のように,その会議に集まる人たちが腹を立てたり,不満を抱いたりしているものは,必ず共通の,しかも2~3個に絞られてくるのです。

これは,付箋紙に,聴こえてきた数だけネガティブな発言を書き留めていけばすぐにわかると思います。たくさん吐き出せば吐き出すほど,不満の対象が絞られてきます。

正直,第三者のわたしからすると,他にもいろんな種類の不満の絵が描けてもいいのではといつも思うのです。けれど,決まってその会社の社員の人たちの琴線に触れる絵は,共通のものに絞られてくる。第三者のわたしにはわからないけれど,その会社の人たちにはなぜか必ずそれが選び出せる,共通のハートがあるのです。それはたまに,部外者であるわたしには,うらやましくも感じるほどの共通項なのです。

普段,特に同じ会社や職場にいる人同士だと,みなさん気づいていないようですが,必ず共通に描けるハートがある。これは信じてほしいです。いつもいっしょにいると見失いがちなハートですが,必ずあります。そしてそれは,ネガティブな発言を通してみると,見つけやすいものなのです。

「ネガティブな話し合い」をポジティブにつくりだすには

「ネガティブな発言」をよしとする時間をあえてつくることは,チームを1つにしたいならオススメのアプローチです。企業のビジョンを語り合うというテーマに限らず,どんな会議にも使えます。

新規事業や新ブランドの創出がテーマなら,新しい何かを生み出そうとする前に「ありたくない姿」を語り合ってみてください。じぶんたちの会社の「らしくない姿」がハッキリと見えてくると,その反動で「これからのありたい姿」がハッキリしてきます。

組織の再編や新たな連携を話し合う会議なら,連携方法を話し合う前に一度「不安,疑問,心配事」をみんなが吐き出す時間をつくってみてください。それらを裏返してみると,じつはみんなが同じ思い=ハートがあることがわかるはずです。

会議の参加者に「ネガティブな気持ち」を吐き出せる場をつくってほしい。わたしが事前の打ち合わせで,会議の主催者にまずお願いしていることです。

しかしながらネガティブな発言は,人を傷つけやすく,また混乱を呼ぶ,繊細なものでもあります。取り扱いには万端を期してのぞまないといけません。多くの場合,ネガティブな発言ばかりが聴こえてくる会議の提案に,主催者の方も最初はとってもネガティブです。⁠そうはいっても,そんな会議をやったことがないので…」といわれます。⁠不満を吐き出そうなんていう会議をするのは嫌だなあ」⁠不満ばかりいって終わりで,会議が収束しないのでは」と不安を感じるのも当然です。

そこで次回は「ネガティブな発言が聴こえてくる話し合い」をどうやってポジティブにつくりだすかについて紹介できればと思います。主催者の方たちと,そのためにどんな作戦を練って,会議を設計しているか。もう少し具体的にプログラムを組み立てていくポイントをご紹介していきます。

ということで次回もお楽しみに。グラフィックファシリテーターのやまざきゆにこでした(^^)/

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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