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第44回 会議ですぐ使える!ネガティブを[吐き出し切る]安全な方法

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3.本当の安全確保「キーマン」からのお墨付き

「安全を確保する」には,主催する側にはまだまだ見えてないものがあります。

例えば,ある会社(A社とします)では,⁠人事部が主催する対話会なので,参加者が『人事評価につながるのでは』と警戒して発言しない可能性がある」と言われたことがあります。⁠吐き出せない気持ち」というのは本当にナイーブです。

ある会社(B社とします)では,⁠ビジョン策定プロジェクト」に選ばれた若手メンバーたちは当初とてもやる気があるが「直属の上司がプロジェクトに自分の部下が借り出されるのをいい顔をしていない」とのこと。⁠だからメンバーが全員集まらない可能性がある」という話でした。

そこで,それぞれ「どうしたらいいか⁠⁠。主催者に考えてもらいました。

A社の主催者は,対話会の冒頭に,今回の対話会をバックアップしてくれている役員の方に来てもらいました。そして役員の方の口から直接「人事評価には関係ないこと」⁠だから思う存分,現場の悩みや不安を吐き出してもらいたい」旨を参加者に伝えてもらっていました。

B社では,主催者が一人一人の上司に話して回りました。⁠社長直下のプロジェクトであること」⁠プロジェクト活動日は,メンバーを気持ちよく送り出してやってほしいこと⁠⁠。また社長からも,部長会でその上司たちに直接「会社として力を入れているプロジェクトであること」を何度も伝えてもらっていました。

「誰から一言あれば,安全な場を確保できるか」という観点は,発言の量と質を格段に変えますが,⁠キーマン」からお墨付きをもらうこと自体は,必ずしもすべての会議には当てはまりません(事実,社長直下のプロジェクトだと言われても「フ~ン」と聞き流されているものも多い…⁠⁠。それでもあえて「最低限外せない準備」の1つに入れたのは,会議を設計するときに必ず参加者の立場になって,⁠会議室の外」まで目を向けてほしいからです。

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多くの主催者の方は,会議の最中,その2時間,3時間のことしか考えない傾向があります。しかし,呼ばれた参加者のほとどんどの関心の先は,会議よりもその前後,会議室にやってくるまでと終わった後に向いています。そんな彼らの前後の状態に思いを馳せることが,安全設計に欠かせない視点なのです。

話し合いを一時的な話し合いで終らせず,未来行動につなげるためにも,参加する人たちの普段の環境や周囲との関係性までぜひ思いを巡らせてあげてください。

4.歓迎~もてなし~お見送り

主催者にとっては,準備に時間を費やせば費やすほどその会議は大事なイベントになっていきます。特に「気持ち」を吐き出してもらうために集まってもらう会議は,主催者も緊張感があるだけに気合いが違います。

けれど参加者にとってその会議は,日常業務の一部でしかありません。その温度差を忘れてはいけません。⁠そもそも今日は何の会議なのか」⁠どうして自分が呼ばれたのかわからない」という人もいます。身体はここ会議室ににあるけれど,頭と心はさっきのお客さまからの電話のことでいっぱいという人もいます。

そんな状態でやってきた参加者たちが,いつもどおり会議室に入って事務的に着席していては,それでなくても頑なナベブタは閉じたまま。そんな状態の人たちに「時間が来たので,さあ今から『気持ち』を吐き出してください」と言っても,ちょっと遅いです。

頑なナベブタを相手にする日は,その人が会議室に入った瞬間からナベブタを開かせる努力をするほうが近道です。結果的に速く吐き出してもらえます。

そのためにすることは,それは本当に些細なことですが「歓迎する」ただそれだけです。⁠忙しいのに来てくれてありがとう」⁠待ってました!」⁠今日は自由に発言してくださいね⁠⁠。実際,わたしの知る会議では,そういった温かいひとことをかけるだけで, 会場に入って来た人たちの表情が一気に和らいでいく,自然と参加者同士でおしゃべりが始まるなど,本当に効果を発揮しています。

同じ時間で吐き出し切れるか,切れないか。その差は本当にちょっとした「気遣い」をしているか,していないかの差です。⁠ひとこと言葉をかける」なんてとても簡単で安上がりなことですが,それをきちんと実行している主催者が創り出す場は確実に先を行ってます。

主催者側の決まり事として「声をかける」と行動を決めるのも大事ですが,これまで私が見てきたほとんどはみなさん「自然と」⁠心から」声をかけていました。ですので忘れてはならないのは,まずは「参加者が会議室にやってくるまで」「終わった後」のことまで思いを馳せてみてること。そうするだけで,⁠心から」声をかけられるようになります。迎え入れるときの表情も,送り出す時の一言も,⁠自然と」⁠心から」と生まれてくるものほど効果的です。

「気持ち」を吐き出してもらうときこそ, わたしたち主催する側は「気持ち」で応えなければいけません。会議の効率を重んじるなら,参加者の「気持ち」「気持ち」で応えるが一番です。

5.入手必須「参加者リスト」

その会議に「だれを呼ぶか」ということがアウトプットにこれほど影響を与えるとは,わたし自身,絵筆を持つまで思ってもみませんでした。しかし,同じ会社,同じ組織,同じテーマであっても「その日に出席したメンバー次第」でその会議で描ける絵はまったく違ってきます。同じ人であっても,その日の顔ぶれ次第,メンバー構成次第で,発言内容が全く変わってくるのです。

そこで必ず事前に入手するのが「参加者リスト」です。具体的に参加者の顔を思い浮かべながら,ネガティブな気持ちの吐き出しやすさを配慮していきます。

  • 「どんな部署や年次の人が参加するのか」
  • 「参加者同士はお互いどんな関係性か」
  • 「声の大きそうな人はだれか」
  • 「あの人の前では話しにくいという人はいないか」

そして具体的にどんな発言が聴こえてきそうかまでシミュレーションしています。

  • 「この問いではちょっとしゃべりにくいのでは?」
  • 「このテーブルは盛り上がらなさそう…」
  • 「あっちのテーブルオーナーはあの人に任せよう」etc.

わたしはほとんど参加者とは初対面なので,主催者のイマジネーションが頼りです。主催者の方も面識の無い人はいるでしょうが,あくまでも「仮説」ですから,正しさは必要ありません。それにたいてい当日はその通りには行きません。それでも参加者の顔を思い浮かべて「仮説」を持ってシミュレーションをしておくことが大事なのです。なぜか。

シミュレーションしておくと,まず当日,参加者の発言が本当によく耳に入ってきます。表情も読み取れます。すると話し合いのうまく進んでいないテーブルが個別によく見えてきます。そこで急きょ「問い」を変えることも,グループワークにサポートに入ることも,自信を持って対応できるようになります。

そしてまた,何よりこの「仮説を立てる」よさは,シミュレーションをしている段階で,主催者から「いい議論になりそう」⁠できそうな気がする」⁠楽しみ!」という声が聴こえてくることです。それは主催者自身の中に,具体的なイメージが目に浮かんできた証拠。これこそ「安全設計」完了のサインです。

「だれが参加するのか」曖昧なままシミュレーションしても,それは空想の域を出ません。いつまで経っても安全設計のサインも表れません。⁠まあ,とりあえずやってみて,後は参加者次第で」と逃げるのが落ちです。

「ファシリテーター」と名乗る人の中では「その場に起きることに任せる」と言う人がいますが,それは「その場で起きること」への責任を放棄しているようにも見えます。実際,無駄に遠回りしている絵巻物を描くことも本当に多い。けれど仮説を立てた人なら,その場の責任者として,何が起こるか分からないその場をしっかり見守り, 未来へ少しでも速く辿り着けるよう参加者に伴走しています。

「事前の安全設計」「安全」とは,主催者がそう確信できるから「安全」と書いています。この最低限の準備1~5は,参加者の気持ちに寄り添う安全な方法論であると同時に,主催者にとっても「安全」を実感して不安を確信に変えるためのステップなのです。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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