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第45回 未来の「スマートハウス」に暮らすのは「メタボな人間」?! [ネガポジ設計]しないと,じつは不幸せな未来を語り合っている(会議あるある)

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[ネガポジ設計]のコツをつかんで,心から実現したい未来を語ろう

「ネガ」とは,⁠ネガティブな気持ち」を吐き出すということ。日頃,無意識のうちに違和感を抱いていることを,あえて会議という場で語り合ってほしい。そして本当は「心から嫌だな」と思うことを語ってほしい。

そこで問2として,時間軸を「未来」にずらし,もっとネガティブに「最悪な未来」に思いを馳せてもらいました。

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一人ひとりが,本気で「こんな未来が現実になるかもしれない…」という危機感を抱くまでには,時間が必要です。問2でも,まだまだ[ネガティブな気持ち]を吐き出す時間にあてていきます。

もともとの「未来検討会」では,問1~3まですべてがポジティブな質問がされていました。でも,時間配分としては「ネガ:ポジ」「9:1」でもいいぐらいです。心から「嫌だ」⁠不安だ」⁠こんな未来にだけはしたくない」というところまで感じてもらえるよう,⁠最悪な未来」⁠豊かではないライフスタイル」をもっと語り合える問2に変更しました。

ちなみに,もともとの「ポジティブ」な問2は次のようなもでした。

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ここから聴こえてくる会話もだいたい想像がつきました。

「安心安全⁠⁠つながりたいときにつながれる⁠⁠ストレスから解放されてワークライフバランスを実現」

「どの会議でもよく描く」絵や,具体的な絵に描けない,⁠安心安全」というだけの抽象的な会話というのは,発言者自身,心から実現したい未来ではないとも言えます。

ポジティブな問いでは,あなた(YOU)のハート(WANT)を問う

一人ひとりが心から「こんな未来にだけはしたくない」という危機感を抱く「最悪な未来」が共有できると,その反動で,自分たちが心から望む「未来」が見えてきます。ここでようやく「ポジティブな問い」をするタイミングです。

ただ,多くの会議がこの大事なタイミングでまた,次のような「我々ができる(CAN)こととは?」⁠事業可能性(=CAN)とは」という問いかけをしていました。

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「CAN」で問いかけた途端,発言者の思考に「CAN'Tの壁」を登場させます。⁠そうはいっても……無理だ」⁠できない」⁠予算的にも,人材確保にしても難しい」など,という「CAN'Tの壁」です。

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せっかく普段の会議とは違う場を用意し,未来を語り合い,⁠イノベーティブに」⁠クリエイティブに」なろうとしているのに,一気に参加者の思考を現実へ引き戻してしまうのが「CAN」の問いです。⁠投資すべき=should」という問いも同様です。既成概念「~すべきだ」という枠の中に閉じこもってしまいます。

「ポジティブな問い」「CAN」ではなく,一人ひとりの「WANT」で聞かないと「CAN'Tの壁」は超えられません。⁠あなたはどんな未来にしたい(WANT)ですか?」と問いかけることです。

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もともとの問い「問1 ICTが実現する豊かなライフスタイルとは?」をここで戻してもいいのですが,その場合でも「WANT」で問いたい。

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また,最初の「WANT」は一人ひとりの「あたな(YOU⁠⁠」に聴くのも大事なポイントです。多くは「我々が(WE)できることとは?」と,主語を「我々(WE⁠⁠」にしちです。そう聴くと「わが社(WE)としては…」と,どこか他人事の発言ともいえる答えが返ってきてしまいます。

「あたな(YOU)はどうしたい(WANT⁠⁠?」と一人ひとりに問えると,答えは「わたしは○○したい」と一人称になります。一人ひとりの想い「WANT」の集合体が,⁠WE」「WANT」になると,絵巻物には「CAN'Tの壁」を超える力強い「ハート」が描けてきます。

実際は次のような問3を立てました。まずは①「なんとかしたい(WANT)ネガ」を選んでもらうことで,一人ひとりの使命感に火をつけていきました。そして②ポジティブな「WANT」を聞くという,2段階の問いにしました。

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「ICTが」実現する未来ではなく,⁠人間が」⁠みんなが」心から望む未来に対して必要なICTを発明していくのです。こうして[ネガポジ]の順番で聴いていくと,⁠メタボな人間」「頭を使わない人間」も描けてこない気がしませんか?

語り合いたいのはあくまでも「ICTが実現する豊かなライフスタイル」なのですが,話し合いの進め方の順番を[ネガポジ]に変えるだけで,同じメンバーと,同じ時間を議論しても,全く違う絵巻物が描けてきます。

⁠before⁠

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⁠After⁠

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話し手一人ひとりが心から望む
人間が中心の未来を語り合うための[ネガポジ設計⁠

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次回も議論を絵空事で終わらせないために,プログラムを事前に手直しするポイント(詳細は第40~44回を,実例でご紹介します。

著者プロフィール

やまざきゆにこ

様々な議論の現場で,グラフィックファシリテーション(=グラフィックレコード+グラフィックフィードバック+グラフィックダイアログ)を実施する。300人超のシンポジウムから,企業も国籍も違う参加者の集まる研究会,組織を横断したプロジェクト,経営者・リーダークラスのビジョン研修,組織研修,顧客との協働プロジェクトなど多岐に渡る。企業・組織の事業判断・意思決定,プロジェクトや個人の意識・行動変革の一助になればと"絵筆を持って"活動中。

グラフィックファシリテーター(graphicfacilitator)は,やまざきゆにこの商標登録です。

グラフィックファシリテーション.jp:http://www.graphic-facilitation.jp/

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