IT勉強会を開催するボクらの理由

第4回 温水洗浄便座のリモコンを思考せよ! ~デザイナーズハック

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4 分

コミュニティは好きな人が集まるサークル活動

前述の通り,仕事ではおもにスマートフォンやタブレットなど,タッチパネルを用いたUIを多くデザインされている秋葉さん。前職でハードウェアのエンジニアと出会い,大きな刺激を受けたと言います。またガジェット制作などを行うメイカームーブメントに影響を受け,Arduino注1などを触ったりもしていました。もっともおもしろいモノはあっても,デザイン的に惜しいものが多いんです。そこにデザイナーが入ることで,もっとかっこいい/かわいい,そして使いたくなるようなデバイスが作れるんじゃないかと夢をもちました⁠。こうした思いも「デザイナーズハック」に繋がっています。

温水便座洗浄機もそうですが,普段使っているけどなんとなく使いにくい。そういう身の回りの気になるUIって,組込み機器がほとんどです。こんなふうにWebやスマートフォンから離れていろんなものを考えることで,逆にWebやスマートフォンのインターフェースを考えるときに役立つ知識も得られると考えています⁠。

また業務用機器のタッチデバイス化に向けて,今から組込み型機器向けUIの知識を深めておきたい……そんな希望も語られました。⁠デザイナーズハック」は,今は個人で活動しているとのことですが,自身のキャリアプランにもつながっているところがさすがです。

ちなみに勉強会を開催するうえで重要なポイントが幾つかあります。テーマ(講演者⁠⁠・場所・広報・お金の管理などはその筆頭でしょう。テーマやスタイルは今も模索中で,その場で参加者に意見を聞いて決めることもよくあるそうです。自分だけで決めても,参加する人が楽しくなければ意味がないというのがモットー。ある程度の枠を保ちながら,できるだけ来た人がみんな楽しめる振り幅をもっていきたいと考えています⁠。

デザイナーが実際に手を動かし,共に考え,成果を公開することが「デザイナーズハック」の基本方針だ

画像

画像 画像

場所については,以前「さわってみよう Firefox OS」というテーマでハッカソンをしたのをきっかけに,継続的にMozilla Japanの会議室をお借りしているとのこと。プロジェクターやWi-Fi,電源などが使用可能で,たいへんリッチな環境になっていました。広報については,立ち上げ時にFacebookやTwitterでマメに拡散していった程度だとか。会費も毎回500円ずつ参加者から徴収して,その日の軽食代にあてるなど,必要最小限度で管理。できるだけ毎回,参加費を使い切るようにされているそうです。

Firefox OSの勉強会を開催したご縁で,以後も継続的にMozilla Japanを会場として利用しているとのこと

画像

中にはメンバーが1,000人を越えるような大きなコミュニティもありますが,私たちは本当にテーマに関心のある人が,十数人程度集まって濃い議論ができるようなコミュニティを目指していますという秋葉さん。今後も「自分たちなりに考えていく」という,月1回の定例会をつづけていく予定だそうです。そのうえでメーカの人とコラボレーションをして,UIの改善点について考える会ができればと言います。たとえば,今回の温水便座洗浄機であれば,TOTOさんやINAXさんなどの方を招いて,実際にみんなで考えてみるというのをしてみたいですね⁠。

参加者の多くはデザイナーやエンジニアといった職種に限らず,UIに携わっている人が中心で,常連さんと一見さんの割合は約半々。いろんな職種の人と交流できるし,あくまで「自分たちなりに」考えることが大事なので,興味がある人が居れば,あまり気負いせず気軽に参加していただけたらと話されました。

このほか,IT系の勉強会では珍しく女性が全面に立って主催・運営されている点もユニークです。もっとも,とくに女性だからと気負う点もなく,会が楽しくなるように,雰囲気作りに気をつけているくらいとのこと。また,できるだけ参加者全員と言葉を交わすようにしているそうです。実際にディスカッションの最中も,各チームを回って声をかけたり,交流会で初めての参加者にいち早く挨拶をされたりと,細やかな気配りが随所で感じられました。

秋葉さんはコミュニティは『なにかを好きな人が集まるサークルのようなもの』だと語ります。最初から規模化を目指すのではなく,まずは人の集まる「場所」「時間」をつくることが第一歩で,重要なのは,⁠好きなもの」に対する気持ちだとか。大きくなれば,自然と会場を貸してくださる方も出てくると思います⁠。またコミュニティに参加したことがない人も,自分の好きなものや興味のあるものを扱っている会に,ぜひ気軽に行ってみてほしいなと思いますと締めくくられました。

デザイナーズハック代表の秋葉ちひろさん

画像

注1)
AVRマイコン,入出力ポートを備えた基板,C++風のArduino言語とそれの統合開発環境から構成されるシステム。

著者プロフィール

小野憲史(おのけんじ)

特定非営利活動法人国際ゲーム開発者協会日本(NPO法人IGDA日本)代表。ゲームジャーナリスト。3匹の猫の世話をしながら,奥さんの弁当を作って仕事に送り出す日々。

メール:ono@igda.jp
Facebook:https://www.facebook.com/kenji.ono1