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第21回 "Intel is back!" ―パット・ゲルシンガーCEOが7nmプロセッサ「Meteor Lake」とともに"新生Intel"を強烈にアピール

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3月23日(米国時間⁠⁠,米Intelは「Engineering the Future」と題した報道関係者向けのライブストリーミングを配信,2月15日付けで同社CEOに就任したパット・ゲルシンガー(Pat Gelsinger)氏がCEOとしてはじめて公の場に登場し,開発が遅れていた7nmプロセスの現状や,パートナーエコシステムの強化,製造ストラテジのアップデートなど,"新生Intel"を象徴する施策を明らかにしました。2009年にIntelを離れ,VMwareのCEOとして数多くの実績を残してきたゲルシンガー氏が11年ぶりに戻ってきたことでIntelはどう変わっていくのでしょうか。今回発表された内容から,Intelの今後の方向性を検証してみたいと思います。

Intel CEOとして初めての記者会見に臨んだパット・ゲルシンガー氏

Intel CEOとして初めての記者会見に臨んだパット・ゲルシンガー氏

7nmプロセスは順調に進んでいる―「Meteor Lake」は2023年に出荷へ

ゲルシンガーCEOによる今回の発表の中でももっとも注目度が高かったのが,開発中のクライアントPC向け次世代プロセッサ「Meteor Lake」⁠開発コード)が7nm/EUVノードで製造されるというアナウンスです。競合のAMDに比べて7nmの開発が大幅に遅れたことで,株主やステークホルダーの間からは強い不満の声が出ていましたが,ゲルシンガー氏は開発遅延の理由について「EUV(極端紫外線: Extra UltraViolet)の導入がうまくいっていなかった」と説明し,続けて「プロセスのアーキテクチャをシンプル化したことですでにその問題は解消された。我々は7nmプロセスにフォーカスしており,開発は順調だ。2021年第2四半期までにはMeteor Lakeを"テープイン(tape-in)"させ,2023年に出荷を開始する」と明言しています。

ここでゲルシンガーCEOが使った"テープイン"という言葉に,若干の違和感を覚えた方もいるのではないでしょうか。半導体業界ではLSIの設計が完了した状態を"テープアウト(tape-out)"と表現することが多いのですが,これはかつて設計が完了したデータを磁気テープに書き込んでいた習慣に由来します。ではテープインとはどういう状況を指すのか,インテル(日本法人)に問い合わせたところ「複数のモジュールを組み合わせるSoC製品の製造過程において,各モジュールの設計データを,次の段階であるモジュール統合に向けた設計工程に送り出すためのデータとして完成させた状態を"テープイン"と呼んでいる」という回答を得ました。これに対し"テープアウト"は各モジュラーを組み合わせた半導体製品の設計データの完成を意味します。x86モジュラーCPUアーキテクチャをベースにするMeteor Lakeには複数のモジュールが搭載されますが,各モジュールの回路設計を終え,モジュールの統合に向けた新しい設計工程に入る"テープイン",それが2021年第2四半期,およそ7月ごろに行われるようです。

話題のMeteor Lakeは7nm「コンピュートタイル」で2021年第2四半期には「テープイン」の予定。コンピュートタイルもテープインもゲルシンガーCEO独特の表現

話題のMeteor Lakeは7nm「コンピュートタイル」で2021年第2四半期には「テープイン」の予定。コンピュートタイルもテープインもゲルシンガーCEO独特の表現

なお,Meteor Lakeは前世代の「Alder Lake」⁠2021年後半に出荷予定)と同様に,複数のコアを1つのダイ上で統合するハイブリッドなデザインを採用すると見られていますが,ゲルシンガーCEOはそのパッケージングにはIntelの3Dスタッキング技術「Foveros」を使うことを明らかにしました。実現すればMeteor LakeはFoverosではじめてパッケージングされる最初のクライアントPC向け製品となります。ゲルシンガーCEOは会見中,Foverosや「EMIB(Embedding Multi-die Interconnect Bridge⁠⁠」など,同社のパッケージング技術の優位性に何度か言及しており,開発中のスーパーコンピュータ/HPC向けGPU「Ponte Vecchio」⁠7nm)のサンプルを提示,1000億個のトランジスタと40を超える複雑なコンポーネント構成でもFoveros/EMIBでによって効率的にパッケージングされている点を強調していました。7nmプロセスの開発では遅れを取ったものの,もうひとつの重要な技術であるパッケージング技術の高さを訴求しているように受け取れます。

いくつもの機能hの異なるダイを立体的に積層させてパッケージングする技術「Foveros」はMeteor Lakeなど次世代プロセッサでの実装が本格化する予定

いくつもの機能hの異なるダイを立体的に積層させてパッケージングする技術「Foveros」はMeteor Lakeなど次世代プロセッサでの実装が本格化する予定

会見中にポケットから「Ponte Vecchio」のサンプルを取り出したゲルシンガーCEO。Ponte Vecchioは米イリノイ州アルゴンヌ国立研究所のスーパーコンピュータ「Aurora」に搭載される予定

会見中にポケットから「Ponte Vecchio」のサンプルを取り出したゲルシンガーCEO。Ponte Vecchioは米イリノイ州アルゴンヌ国立研究所のスーパーコンピュータ「Aurora」に搭載される予定

また,ゲルシンガーCEOはサーバ向け製品についてもいくつかアップデートを発表しています。直近では第3世代Xeonプロセッサの「Ice Lake」⁠10nm)を4月に発表する予定となっており,ほかにも次世代Xeonとなる「Sapphire Rapids」⁠10nm)を2022年上半期に,さらにその次の世代となる7nmの「Granite Rappids」を2023年に投入するとのこと。サーバCPUに関しても徐々に10nm/7nmへと向かいつつあるようです。

AI機能やスケーラビリティにフォーカスした次世代サーバCPUも10nm,そして7nmが主力になりつつある

AI機能やスケーラビリティにフォーカスした次世代サーバCPUも10nm,そして7nmが主力になりつつある

著者プロフィール

五味明子(ごみあきこ)

IT系の出版社で編集者としてキャリアを積んだ後,2011年からフリーランスライターに。フィールドワークはオープンソースやクラウドコンピューティング,データアナリティクスなどエンタープライズITが中心。海外カンファレンス取材多め。Blog 「G3 Enterprise」やTwitter(@g3akk),Facebookで日々IT情報を発信中。

北海道札幌市出身/東京都立大学経済学部卒。

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