無関心な現場で始める業務改善

第8回 業務改善はスピードが全てか?―安易な解決策を作らないために

この記事を読むのに必要な時間:およそ 3 分

それって問題ですか?

図1をご覧ください。ピラミッドのような絵が描いてあります。

  • 売上が落ちた
  • 利益が出ない

など,どこの企業でもあっておかしくないことがいくつか書いてあります。これを皆さんは「問題」と捉えますか?問題だとすれば,どのように解決しますか?

図1 現象と潜んでいる問題

図1 現象と潜んでいる問題

企業としては,売上,利益など,ピラミッドの上の部分は大きな問題であることは間違いありません。あなたが経営者ならなおさらです。

じゃあ,どうするのと解決策を問われ,⁠売上を上げること」⁠利益を出すこと」⁠製品に不具合を出さないようにすること」……では,言葉の裏返しで何ら解決策にはなっていません。

では,もう1歩踏み込んで考えると,売上が落ちる理由は何かということになります。たとえば,製品そのものの競争力が他社と負けている,プロモーションが足りないなどです。利益が出ないのなら,固定費率が高い,コストが高いのかもしれません。

したがって,これら水面下に潜んでいるまだ顕在化していない問題を,きちんと問題として認識をしないと,具体的な解決策を取れなくなります。

先の例のように,オペレータに注意をして直るのであれば苦労はいりません。

「売上が落ちたことが問題だから,売上を上げることが解決策だ。だから,とにかく売れ!」などと言う営業トップがいたら,部下は悲惨です。⁠それができれば苦労しないよ!」と恨めしく思うだけです。

本質的な解決に至らないその場しのぎの対処療法にならないために,⁠考えるプロセス」は欠かすことができません。

現象に対して対策を打つな

このように,目で見えている問題はほとんどの場合,問題があることによって引き起こされた⁠現象⁠です。

現象は問題ではありません。あくまでも,問題があなたの目に見える形で入ってくるだけです。大事なことは,問題を引き起こしている原因を突き止めることです。そして,原因に対して解決策を一所懸命考えて,対策を打つことです。

問題の捉え方ひとつで解決策は異なってくる

「売上が落ちた」だけでは,具体的な解決策を見出すことはできません。

では,一段階掘り下げてみて,⁠製品に競争力がない」となると,競合製品と比べてどこか自社製品が劣っているはずです。性能なのか,搭載機能なのか,操作性,信頼性,デザイン,価格など,さまざまな物差しで優劣を見比べるはずです。どこで負けているかわからないと戦いようがありません。さらに普通は,それですぐに機能追加や新製品開発となる前に,市場や競合を調べたりします。

自社製品だけでなく,競合製品の売上も落ちているのなら,マーケットそのものが飽和状態で頭打ちですので,新製品を投入しても売上は上がらない可能性が大です。

このように,問題の捉え方ひとつで解決策そのものが異なってくることをまずは知っておきましょう。

因果連鎖,原因と結果

“因果関係⁠という言葉があります。意味は原因とそれによって引き起こされる結果の関係性です。原因があるから結果が存在します。

これを先ほどの現象と問題に当てはめて考えてみると,⁠問題が原因」「現象が結果」になります。現象は問題ではないので,問題を引き起こしているものは何かと考えるとそれが原因になります。さらに,原因にはより深い原因が存在する場合がほとんどで,深ければ深いほど見えにくくなります。

そして,因果関係は連鎖しています。問題を明確に把握し,把握した問題をきちんと解決するためには,原因をいかに深く掘り下げられるかが重要になります図2⁠。

図2 因果関係の連鎖

図2 因果関係の連鎖

根っこをつぶす

問題が複雑になればなるほど,原因は多岐にわたります。1つの原因がほかの原因に影響を与えている場合もあります。

そこでさらに,「なぜそうなっているのか?」を何度も問いかけて,原因の掘下げを行うことで,本質的な"根っこの原因"に突き当たります図3⁠。

我々は,本質的な原因を突き詰めて,

  • 「解決をしないといけないという認識が伴った問題=課題」

と呼んでいます。

図3 現象,問題,原因,課題までの掘り下げ

図3 現象,問題,原因,課題までの掘り下げ

お話するのはもう少し先になりますが,この課題そのものをカテゴライズして,タスクにすることが改善の実行計画のタタキにもなります。

原因分析ができない現場では

無関心な現場では,周囲への関心度が極度に低く,問題の掘り下げも得意ではありません。自分の担当業務以外にも関心がありません。だからといって,原因分析が得意な人が,無関心な現場の業務分析などをやってしまうのもよくありません。

その理由は簡単です。業務改善の実行段階になったところで,無関心な現場はなかなか動きません。第2回では,"気づきのプロセス"と"自分が困るプロセス" を意図的に仕掛けていくと書きました。

できる人が原因分析を行ってしまうと,無関心な人は頼り切ってしまったり,改善ができなかった際の保身上の理由として,⁠自分が原因分析したものではないし,自分はほかに原因があると思っていた」などと,変なところの自己主張をしてしまいます。ていのいい言い訳に,原因分析が使われてしまいます。

第5回で,⁠自分の業務は自分で書け!」と言ったように,自分の業務,原因分析は原則,自分自身で行うものです。自分たちで業務フローを作成し,ほかのメンバーにも伝えたわけですから,途中から原因分析を他人に任せるのはカッコ悪いものです。この特性を上手に活かしましょう。

無関心な現場を現場主導とするために

次のようなところまで進めばしめたものです。

  • (1)⁠自分たちで業務フローを作る,現状業務を調べて可視化する」
  • (2)⁠自分たちで問題の掘り下げ,原因分析を行う」

自分たちで掘り下げた原因を放置すると自分自身の首が締るので,解決策も出さざるを得なくなる=考えざるを得なくなります。

この解決策については,次回,お伝えします。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/