無関心な現場で始める業務改善

第15回 「職種別業務改善のポイント」と「やめる勇気と決断」

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(5)標準化

同じ部門で同じ業務を行っているにも関わらず,個々人で仕事のやり方が異なる,いわゆる属人的な状況になっている場合,無駄が非常に多くなります。

表には見えなくとも,周りの人や前後の工程の人が属人的業務を行う人の特性を把握しているので,かろうじて成り立っていますが,業務引き継ぎに苦労をし,部下もなかなか育ちにくい弊害もあります。

属人的になっている業務やルーチン業務は,業務自身を標準化します。もちろん,全ての業務が標準化することで属人化が解消するわけではありません。

具体的には業務マニュアルや指針を作成し,標準業務フローも作成し,その業務で用いられる帳票やデータの書式も統一し,情報システムとも整合させます。標準化を進めることで効率が上がり,最終的にはオペレーション品質も向上します。

一般的に属人的な業務が多いと,システム化と標準化は難しくなります。理由は2つあります。1つは職人・職能的な業務を行う人です。この場合,標準化よりも技能や技術の継承に注力を注ぐべきでしょう。もう1つは,逆説的になりますが,属人を許す・許してきた周囲の環境です。業務標準を作らなかった,人によりバラバラであることを周囲も許してきたなどです。したがって,属人的業務の比率が高い場合は,まずは目に見えないノウハウや知識を暗黙知から形式知にするところから着手します。

第5回の図1のように,業務プロセスを細かくバラすことができないと,属人的な「人によるちょっとした違い」は絶対に可視化できません。

(6)移管

重要度の低い業務,特別高い専門性やスキルを必要としない業務をすべて自社内でまかなおうとすると,人件費率が上がりコスト体質になります。したがって,中枢のコア業務だけを残し,ノンコア業務を外部にアウトソーシングする,正社員でないスタッフに業務を移管するなどします。移管された業務を従来は担当として行っていた人は,より付加価値を生む仕事に職種変換をする,もしくは配置転換を視野に入れます。

教科書的な説明はここまでにして、次により具体的なお話をします。

やめる勇気と決断

職種変換や配置転換できない人がゼロではないので,こういう人をどうしますか?いわば,業務を移管することによって,その人の仕事が会社の中からなくなってしまうのです。⁠君は明日から仕事はないから」と言われているようなもので,当然ながら業務移管には頑なに反発することは目に見えています。

業務改善で現場が無関心とは異なり,会社は効率化を大義名分にして,大掛かりなリストラ策を行うことがあります。最初はやんわりと子会社への出向,転籍から開始し,最初は社内や関連会社に自分の居場所は確保できたものの,業務を(1)やめる,⁠6)移管となると,"無関心"から一転して"反発"という行動特性が生まれるので,これらを予測して解決策を準備しておかないと,単純に「やめればいい」⁠外に出せばいい」という議論にはならなくなります。

開発・設計系業務の場合

開発や設計業務にルーチン業務は少ないと言われていますが,はたしてそうでしょうか?

通常,開発部門における新製品開発プロセスは,製品コンセプトを考え,設計するためにシミュレーションや実験を繰り返し,試作品を作り上げ,生産ラインに乗せます。反面,既存製品のサポートや特注品の対応などによる図面の修正,社内的な打ち合せや手続き業務も少なくありません。

比較的,開発・設計部門,研究開発部門は自由な発想でクリエイティブな製品を生み出すという思想が多く存在することもあり,ある種,聖域のように業務改善や効率化の対象にはなりにくかったのが事実です。

しかし,昨今のように製品のライフサイクルが短くなり,製品機能はますます多様化・複雑化し,開発期間は短縮されてくる中で各社,様々な取り組みを行っています。開発・設計部門の業務棚卸をまずは手掛けてみることで,手続き業務が浮き彫りになります。

(1)部門を分ける

新製品開発と既存製品のフォローを行う部門を分けて,新製品の投入を早めます。

既存製品のフォロー部門はルーチン業務に近くなり,新製品開発部門は研究や開発に専念します。

(2)標準化推進

納期がかかり,かつ高価な特殊部品を使わず,標準的な部品を用いて設計を行います。そのためには,設計段階において,電子部品や部品を組み合わせたユニット部品,ソフトウェアであればドライバなどの標準的なライブラリ,系列的に揃えられた筐体部品などが必要です。設計部門は設計段階からこれらを用いることで,開発期間を短縮することができます。そのためには,部品などの調達を行う購買部門,標準化を推進する部門,これらのデータベースを管理する情報システム部門との連携が全社的に必要となります。標準化を進めることで部品やそれまでの企業資産の再利用性が高まり,購買部門としても一括調達が行え,コストが下がるメリットも生まれます。

(3)仕事のやり方を変える

販売活動は営業部門,市場・競合調査はマーケティング部門と,一般に開発部門までに設計のインプット情報が到達するまでは,多くの部門を通り,かつ長い時間がかかります。場合によっては,途中で情報が歪んでしまうこともあります。

可能な限り,開発部門も顧客に足を運び,かつ市場動向などを把握しておくことで,設計に有用な情報を得ることができます。

このように,一見業務改善や効率化ができないと思われていた業務も,視点を変えることで改善できる領域はたくさんあります。

次回は「仕事のやり方を変える」をテーマにお話します。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/