無関心な現場で始める業務改善

第16回 改善文化の定着と立ちはだかる障害を越える

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障害を越える

"業務改革"をはじめ,何らかの変革を行う場合には常に課題がつきまといます。相当なエネルギーも必要となります。改革は長続きしないと言うよりも,改革に関わるメンバーが途中で息切れを起こし,長続きできないと言うほうが正しいでしょう。

これまでにリーダーや責任者,そして経営の支援などを述べてきましたが,これらが継続的に存続しないと「業務改革」だけでなく,様々な変革は自然消滅か結果を出せないまま終えることになります。

ピーター・センゲ(Peter Senge)『The Fifth Discipline』から「学習する組織」という観点で考えてみましょう。

「学習する組織」から学ぶ変革の阻害要因

⁠学習する組織」の"10の変革課題"からいくつか見ていきましょう。

組織が変革を行う場合,段階に応じてそれぞれの課題が生じます。とくに初期段階では以下の4つの課題に直面するケースが多々あります。皆さんも心当たりがありませんか?

≪課題1:時間がない≫
メンバーの変革活動に注力すべき時間が確保できないと,変革活動の優先順位が下げられてしまい,前に進まない最大の言い訳に使われます。⁠こんなことをしている時間はない」という発言が出る場合もあります。
≪課題2:孤立無援≫
変革活動はグループ,あるいはそのメンバーだけで進めることは困難であり,さまざまな「支援」が必要となります。支援する,あるいは支援を受ける土壌と体制が整っていない,⁠誰も助けてくれない」状態の場合,グループは十分な成果があげられず,孤立感と徒労感で徐々に減衰していきます。
≪課題3:意味がない≫
変革の必要性や意味がグループのメンバー,あるいは組織内に十分に共有されていない場合,メンバーは変革の目的を自分と結びつけることができず,モチベーションを維持することができなくなってしまいます。⁠こんなものは意味がない」という状態に陥ります。
≪課題4:言行不一致≫
変革のリーダー,支持していると見られるリーダー,とくに経営層やグループのリーダーの姿勢や本気度合い,価値観などに言行不一致が感じられる場合,変革活動に関する信用が低下し,メンバーのモチベーションが低下します。⁠言っていることとやっていることが違う」ということです。

"業務改革"を進めていく過程において,これら改革課題を常に潜んでいることを肝に銘じ,ここまでで述べてきたことを作り上げていくことが改革課題クリアのポイントとなります。

「困る仕組み」「困り合える関係性」をいかに築くか?

業務改革による業務フローや様々なプロセス,仕組みの変更には,⁠以前の業務プロセスのほうがよかった」と発言し,なかなか新業務フローに切り替えない人や部門が出てくる場合があります。業務改善や改革にはさほど積極的でなく,意見や提案は皆無だったにも関わらず,いざ実行段階でかたくなに拒否する人です。

第2回で書いたように,このような場合には,新業務フローで業務をしないと本人が困る仕組みやプロセスにします。食わず嫌いもあるので,半強制的に土俵に乗せてしまいます。

一度にすべての人が変わるわけではありません。また改革に痛みはつきもので,変化に順応できない人,拒否し続ける人も出てきて当然です。すべての人を船に乗せるのではなく,乗る意志のある(=変わる意志のある)人を会社という船に乗せるということと同じです。

さて,業務改善から業務改革,それに対して出てくるさまざまな障害や課題は,すべて人と人の関係性です。同じような改善や改革を家族内で行う場合,時間がないとか孤立無援で一人ぼっちにさせるなどしないでしょう。同じことが会社組織でできないのはなぜでしょうか。それは,信頼できる関係性・土壌ができていないからです。

信頼している人や家族には弱さを示す,弱い自分を見せることはします。なぜなら,安心できるからです。弱さを見せるときに,一緒になって悩んでくれる,困ってくれる,そういう"困り合える関係性"は相当な信頼関係が構築されていないと不可能です。

だからこそ,業務改革などを通じ,企業内で困り合える関係性を構築し,維持できる組織は,継続的に成長と発展を遂げていくことでしょう。

「言いだしっぺ」になれるか?

業務改善も業務改革も,最初は小さな気づきや個々人の問題意識です。問題が小さいうちに,きちんと報告をする,対策を打つことが重要です。

言い出しっぺはときに"出る杭"と思われがちです。余計なことは言わない方がよいと思わせてしまうと,組織はどんどん硬直化していきます。マイナス情報が積極的に上に伝わらないのと同じで,やがて企業の存続を脅かすことにもなりかねません。

問題意識を言い出す,言いだしっぺが損をしないように,言ってもよい環境を全体で作り上げていくことが,最大の業務改善であり,業務改革と言えるでしょう。

⁠無関心な現場で始める業務改善」もいよいよ大詰めになってきました。次回は業務改善で解決できない課題についてお話します。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/