無関心な現場で始める業務改善【シーズン2】

第6回 "やらされ感"なし!トップが腹をくくった改善を目指す

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トップの"本気度"と現場の思いをつなげる役割

  • S氏:「そうですね。ですから,仲間が必要です。この図図3をご覧ください。特に経営トップとミドルマネジメンの橋渡しをする"参謀役"と,"コアメンバー"が必要です。それぞれの条件は書いてあるとおりです」

図3 推進メンバーとスポンサーシップ

図3 推進メンバーとスポンサーシップ

  • 佐藤さん:「僕はこの図だとコアメンバーになるのかなぁ」

  • W女史:「そうですね。コアメンバーと参謀役の機能をまとめて"事務局"なの。佐藤さんはコアメンバーの中のコアメンバーよ」

  • S氏:トップの"本気度"をきちんと共有しておくことがポイントよ」

  • 佐藤さん:「中田社長の"本気度"ですかぁ。本気か本気ではないかって,見分けられないですよね」

  • S氏:「そう難しく考える必要はありません。本気の人は逃げません。本気の人は裏切りません。困っている人を見殺しにすることなく,"一緒に困る" "一緒に困って問題の解決を考える"という特性を身に着けています」

改善は仕事だ!

  • 佐藤さん:「それと,実際に改善活動を行うに当たって,仕事とは違うことに時間を割くこととなるので,活動の位置付けを明確にしないといけないですね」

  • S氏:「いいところに気づきましたね! こちら図4を見ていただけますか?」

図4 改善活動の位置付け

図4 改善活動の位置付け

  • 佐藤さん:改善と仕事を切り離していないんですね」

  • S氏:「改善活動を行うときに,とかく現場からは,"時間がない"とか,"改善って仕事ですか?" "仕事と言うのなら残業代は出してくれないと困る" "ちゃんと評価されるんですか?",という声が出てきます。さらに,改善が始まったとして,"業務改善をやっていたので仕事が遅れています"など」

  • 佐藤さん:「わー,なんかイメージ沸きます。仕事のムダをなくすため,効率的に行うために改善を行うのに,仕事が遅れますなんて本末転倒ですね!」

  • W女史:「そうなの!改善に着手する前にはしっかりと活動の位置付けを明確にしておくことと,改善がスタートしてからは改善を行いやすいような環境を事務局は構築しないといけないの」

  • 佐藤さん:「ですね…。しかし,この図にある"改善が仕事"という考え方と,"会社の期待""自分の思い"の両方が表現されているのはわかりやすいですね」

  • W女史:「そのとおりです。ですから,中田社長からもうすぐ発表するという"GHテクノロジーズの経営施策"第4回参照)は,まさしく"会社の期待"を言葉で示す重要なものなんですよ。多くの社員が社長のメッセージを待っていると思いますよ(^_^)」

  • S氏:「もう1つ,トヨタ生産方式って聞いたことはありますか?」

  • 佐藤さん:「はい,言葉くらいなら……」

  • S氏:「この図図5を見てもらえますか?」

図5 トヨタ生産方式における改善の考え方

図5 トヨタ生産方式における改善の考え方

  • 佐藤さん:「これも先ほど(図4)と同じで,仕事の中に改善が含まれていますね」

  • S氏:「そうです。一般には右上の青い枠の中のように思われているトヨタのカイゼンですが,正確にはこれは誤りです。"仕事は作業と改善である"ということがトヨタ生産方式における改善の考え方です」

  • W女史:「改善もちょっとした小手先のものではなく,イノベーション(企業革新)を起こすためのもの,勝つための改善って言っているの。これが何十年も前,私が生まれる前に先人たちが作り上げ実践していたなんて素敵だわ!」

佐藤さんは,1つ1つのことにうなずきながら,改善実行のイメージを膨らませていました。

トップの腹くくり

今回の最後に,「トップの腹くくり」についてお話しします。

いわゆる経営改革の施策の1つとして,業務改革を行う,それも大掛かりな基幹システム等の導入を伴った場合は,経営もそれなりのリソースを投入します。経営トップの参画は必須です。ところが,現場や改善という言葉になった途端に,⁠そんなものは現場が自主的にやっていて当然!」という経営者は少なくありません。

本記事では,改革や改善という言葉の使い分けはしていませんし,定義云々を語るつもりはありません。大事なことは,経営主導のものであれ,現場主導のものであれ,やるべきことは変わらないということです。したがって,経営トップの参画も同じであると筆者は考えています。

トップの参画が形式的なものでは無意味なので,どのくらい本気なのかを現場の社員にわかるように示すことが必要です。なぜなら,トップの本気度が現場をその気にさせるからで,改善の初期段階からいかにトップを巻き込むかによって,その後の改善の成否が決まることもあるからです。

その際に,重要なポイントを3つ示します。

(1)決意を示す・見せる

経営トップの腹のくくり具合を内外に示すことが必要です。

経営計画や社外に対する情報開示(決算説明,株主総会など)をします。全社一丸となって「業務改善」に取り組み,具体的なコスト削減目標を明示します。

社外への情報発信は,社員からすると非常に大きな意味と意義を持つことと,外部に言ってしまった手前上,後戻りはできないという強い決意を感じるものです。

(2)改革の位置付けと体制

重点的な経営施策として,経営計画に明記することがスタート地点です。

「業務改善」には優先順位があることと,具体的な改革テーマはそれぞれ異なるので,問題の認識から情報共有の仕組みまでも構築し,どのような単位で改革テーマをグルーピングするのか,推進責任者は誰なのかを示します。

ある程度の専任で推進できるメンバーをアサインし,事務局機能を果たす,定期的に経営者に進捗や課題を報告するステアリングコミッティのような場を設けるようにします。

(3)リソースの確保

必要なリソースは予算として確保します。

最低限,専任メンバーを置く場合は,その人件費を確保します。また,⁠業務改善」と本業に関わる工数も明確に分けることが経営管理上も望ましいです。

今回は少し長い話となりましたが,次回は「業務改善プロジェクトのキックオフ」の場面からスタートです。

また,今回が今年最後の記事となります。次回は来年になります。良いお年をお迎えください。来年,お会いしましょう!

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/