ハード (業務改善) とソフト (組織風土改革) を同時に進める
佐藤さん:
「それで, 次はどうすればいいんでしょう? 何から手を着ければいいんだか…」 S氏:
「まず, 業務改善全体の大きな流れを共有しましょう。この図を見てください (図2参照)」
佐藤さん:
「ずいぶんとシンプルですね。ガントチャートみたいなものが出てくるのかと思いました」 W女史:
「それはもう少し先になりますよ。そのときは, 皆さんにはたくさん脳に汗をかいてもらいますからね♪♪」 加藤さん:
「そんな可愛い顔をして, 脅かさないでくださいよ~」 S氏:
「まぁ, それは先のお楽しみということにしましょう。この図ですが, 大きく3つのフェーズに分かれます。最初が"現状を知る", 2番目が"考える", 最後の3番目が"変える"です」 広瀬さん:
「"考える"ところの"業務分析"がずいぶんと長いみたい」 赤西さん:
「うん, 俺もそう思った!」 S氏:
「業務改善ではスピードが欠かせませんが, この2番目で手を抜くと後でひどい目に遭います。ここは時間をかけるべきところです」 佐藤さん:
「具体的にはどういうことですか?」 W女史:
「さっき, 脳に汗をかいてもらう…と言いましたよね。問題を掘り下げる, 深い原因を見出すってことが大事なのですが, 慣れも必要とします。根っこの問題を解決しないと, 本質的な改善にはなりません」 S氏:
「たとえば, 今回の一番の問題は品質ですよね。不良発生率が極めて高い。では, 改善として"品質を上げる"じゃ, 言葉の裏返しです。具体的に何をすればいいのかさっぱりわかりません」 W女史:
「どの工程で不良が発生しているのか, どのくらいの頻度で起こるのか, なぜ発生するのか, 設計時に選定した部品のMTBF (Mean Time Between Failure:平均故障間隔) が低いのか等, 不良発生の原因を特定するには, 様々な見地から分析が必要です」 S氏:
「なので, 最初の"現状を知る"のところには, "現状分析"ではなく"現状調査"と書いています。調べていないものは分析できないはずですからね」
プロセスを共有し, 一人称で語る
村瀬開発部長:
「"スタンス"のところに, すべて, "自分たち"という言葉が入っていますね」 S氏:
「そうです。これも我々のやり方の特徴です。当社では"プロセス共有型"と呼んでいます。たとえば, 僕らのようなコンサルティング会社が現状調査を行い, GHテクノロジーズの問題はこうですと示します。原因もわかり, 改善策を反映した業務改善計画はこのようにできています。さぁ, 皆さん, やってください! と言うことは簡単です。しかし, これでは第6回の図1の 「ハード改革 (やらせる改革)」の構図と同じです。コンサルティング会社も無責任ですし, やらされるほうは失敗した場合, コンサルティング会社に責任転嫁すればよいからです。自分たちは 『言われたことをやっただけ』 という受け身・ 指示待ちで, 良い結果が得られるはずはありません。したがって, ポイントは"自ら"という一人称で語ることです」 村瀬開発部長:
「自分たちで作る, 考える, 行動する」 ということで, 無関心から興味を持たせ始め, 最後は自分で決めて, 実行をする。こういうことですよね?」 W女史:
「そのとおりです。業務改善において, コンサルティング会社がでしゃばりすぎると, 現場の主体性はどんどんなくなっていきますからね。自分たちで考えて行動をするという経験を積まないと, "自分たちで (会社, 仕事等) を良くしよう"という動きはできなくなります」
一人称で語れと言っておきながら,
業務改善と組織風土改革を併走させることで,
業務改善のステップ
さて,
この図は後ほど再登場しますので,ここでは細かく説明しません。意外と道のりは長いなぁと思われるかもしれませんね。
さぁ,佐藤さんを中心に少しずつコアメンバーの結束力も高まり,何となく業務改善の流れと進め方がイメージできるようになりました。
いっぽうで,佐藤さんの直属の上司である杉本課長は,本改善にはいっさい関わっていません。元々,"事なかれ主義者"であり,"長いものには巻かれる"タイプです。佐藤さんには本業の設計業務で時間を割いてほしいのに,佐藤さんの仕事は業務改善のように思えてなりません。コアメンバーのミーティングでも蚊帳の外なので,あまり業務改善のことをよく思ってはいないようです。
さて,次回はコアメンバーが他部門を巻き込むために現場に出向きます。そこで思いもよらず現場の反発を食らいます。その原因が杉本課長であり,わざと佐藤さんたちを困らせようと思って仕組んだことには,まだ誰も気づいていません。さぁ,どうなっていくでしょうか? 次回をお楽しみに。