無関心な現場で始める業務改善【シーズン2】

第12回 仕事のインプットと本音を言える場

この記事を読むのに必要な時間:およそ 2 分

“業務改善”に必要な“組織風土改革”

  • 佐藤さん:「プロセスのイメージや,どこまで細かく業務プロセスをばらすのか,イメージはできたのですが,今,僕らコアメンバーが直面している課題としては,内輪だけの改善活動になってしまっていて,なかなか他部門を巻き込めず,活動が広がらないことです」

  • 加藤さん:「リストラの後,現場の多くは自部門の仕事だけで手一杯だし,まだ,経営批判も多く,不信感も根強く残っているし……」

  • 広瀬さん:「キックオフ第7回参照)をしただけで,ほとんど動けていないのも悲しいわ(>_<)」

  • 赤西さん:「佐藤さんがよく言っている当社の⁠組織体質⁠⁠組織風土⁠なんですかね?」

  • 佐藤さん:「自社に誇りも持っていないし,不満が多いが,会社や他部門には無関心が多い人ばかり残っちゃったよ。うちの杉本課長なんか,俺を巻き込むな!って堂々と言うし,あったま来るよなぁ!」

  • S氏:現場が自発的に改善を進め,会社を良くしていこうという機運のもとに,業務改善を行らないと,業務改善の改善効果は発揮されないですからね」

  • W女史:「私たちが業務改善をやってあげるわけではないですからね。メイドさんじゃないですから!」

  • 広瀬さん:「Wさん…メイドって,超ウケます♪」

  • W女史:「あら,私としたことが…(笑)。自分たちで自分たちの業務を改善していくこと,それが結果的に会社の業績を上げていくことなので,社外の私たちがなんでもやってあげちゃダメなんですよ

  • 佐藤さん:「自ら会社を変えていこうという社風を作るってことですね」

  • S氏:「業務改善が現場で自然になされていく…このような社風を作ることに他なりません。業務改善の成否は組織風土改革をいかに進めるかにかかっていると言っても過言ではないんですよ第9回参照⁠⁠」

「牽制し合う人間関係」から「相談し合う人間関係」

  • 佐藤さん:「好きで入ったこの会社を,何とか良くしていきたいものだ」

  • 村瀬部長:「最初の品質対策会議で,君が部長たちに⁠誰も本気で考えていない!⁠と怒って,出て行ってしまった行動もその表れだろう第1回⁠」

  • S氏:「業務改善をつうじて仕事のやり方を変えていくということは,人と人の向き合い方を変えていくことに他ならないんです。困っている人がいれば助ける,一緒に考える…こういう人間関係があるからこそ,業務改善の効果は発揮され,業績向上にもつながっていくんですよ」

図3をご覧ください。

本連載にて,これまでに何度か「ハード」「ソフト」という言葉が使われてきましたが,これらを模式的に示すと,図3のような氷山を例えに描くことができます。

第5回の図2では,⁠組織の氷山モデル」「ハード&ソフト」について示しているので,参考にしてみてください。

図3 ⁠ハード」「ソフト」の相乗作用と効果

図3 「ハード」と「ソフト」の相乗作用と効果

業務改善は,⁠ハード部分」に位置し,目に見えるものです。方針・しくみ・戦略・システム・制度,そして,プロセスも同様です。

その一方で,水面下で見えない「ソフト部分」が人間の行動を支配します。

仕事のやり方・進め方をとってみても,「お互いに牽制しあう人間関係」よりも,⁠相談し合える人間関係」のほうが望ましいことは言うまでもありません。図においては,色を変えて上司と部下の声として示していますが,経営と現場と置き換えてみたも同じことです。

心の中,自らの価値観として,氷山の水面下にあるような⁠くすぶったもの⁠を抱え込んでいたら,部門を超えた全社的な業務改善に誰が協力しようと思うでしょうか?

本音を言える⁠場⁠

  • S氏:「このソフト部分をどのように進めるかが,業務改善成功……それ以前に,他部門の協力や参画を仰ぐ成功要因となりますが,⁠本音を言える場⁠を仕掛けることが必要です」

  • 佐藤さん:「どうせ,本音は出さずに,文句や不満ばかり出てくるだけじゃないですか?」

  • W女史:「最初はそうかもしれません。しかし,文句や不満を言い続けていても,誰が解決してくれるわけではありません。文句・不満を出し尽くすという⁠ガス抜き⁠というステップが重要です」

  • S氏:「社内でもいろいろな会議や打合せがあるでしょうが,それぞれ目的にあったコミュニケーション場面を使い分けていかなければなりません。⁠本音を言える場⁠を仕掛けるためには,コミュニケーションの質や特性について,ここにいるコアメンバーは知っておかなければなりません」

図4をご覧ください。

図4 コミュニケーションの質と特性,対応する⁠場”

図4 コミュニケーションの質と特性,対応する“場”

右側に,⁠フォーマル」⁠インフォーマル」と示していますが,その違いは以下の通りです。

  • フォーマルな場=結論を出す
  • インフォーマルな場=結論を出さない

「フォーマルな場」は,代表的なものが会議です。⁠真面目に真面目な話をする⁠ところです。議題もアウトプットも決まっていて,⁠報告する場"であり"決める場⁠です。コミュニケーションのスタイルは一方通行です。

一方で,「インフォーマルな場」は,ちょっとしたミーティングや⁠気楽に真面目な話をする⁠ところです。議題はなく場所も社内ばかりとは限りません。⁠相談する場"であり"共有する場⁠です。

業務改善において求められる⁠場⁠は,⁠インフォーマルな場」です。そこでは,本音が言える関係性づくりをしながら,気楽に真面目な話をすることで,協力関係に欠かせない⁠信頼⁠⁠知恵⁠が生まれることになります。

“場”づくりのきっかけは“局地ゲリラ戦”

「気楽で真面目な対話の場」などが,インフォーマルな場として形成されて,それだけが単独でどんどん組織に広がっていくことは,現実的にはほとんどありません。それなりの仕組みや場を支援する仕掛けが必要です。どのように仕掛けを作るのかについては,別途,お伝えします。

イメージを図5に示します。

図5 ⁠場⁠の伝搬

図5 “場”の伝搬

部門内のコミュニケーションが悪い,部門間ではセクショナリズムがある。⁠おかしいことをおかしい」と言うと,叩かれる…このような組織ではなく,

  • 「おかしいものは放置できないね⁠⁠ → ⁠直そうよ!」
  • 「隣の部門でこんな取り組みをやっているよ⁠⁠ → ⁠さっそく,聞いてみるよ」

と,このような組織にしたいものです。

最初は小規模な⁠局地ゲリラ戦⁠のように開始した小さなインフォーマルな場が,少しづつ広がって,場同士をコネクションしていく。このような地道な関係性づくり,組織風土改革は,業務改善を加速するものとして必ず視野に入れておきましょう。

セミナー開催のお知らせ

『全3回シリーズ:プロセスコンサルタントが明かす業務改善ノウハウ』

2014年2月19日より,⁠毎月1回の開催・全3回のシリーズセミナー」を,本コラムを執筆し,⁠業務改善」に加えて「組織風土改革」を取り入れた特長ある業務改善を提唱し実践している株式会社カレンコンサルティングが開催いたします。

詳細はこちらをご覧ください。

なお,10月より開始しているシリーズセミナーの第3回(2013年12月18日開催)も現在,受付中です。

著者プロフィール

世古雅人(せこまさひと)

メーカにて開発エンジニアと半導体基礎研究(国の研究機関出向)の計13年を設計と研究開発の現場で過ごす。企業風土改革,組織・業務コンサルティング会社や上場企業の経営企画責任者などを経て,技術の現場あがりの経験や知識を活かした業務改善やコンサルティングなどに従事。

2009年に株式会社カレンコンサルティングを設立,同社代表取締役。現場と経営を巻き込んだ「プロセス共有型」のコンサルティングスタイルを推し進めている。

株式会社カレンコンサルティング

URL:http://www.carren.co.jp/