Lifelog~毎日保存したログから見えてくる個性

第8回タギングと整理

セマンティックWeb

タギングと整理について考えてみます。

タギングでも整理でも分類でもラベリングでも、呼び方はなんでもよいのですが、そういう「意味のあるなにか」のことを、Webの世界では「セマンティックWeb」と呼ぶようです。

筆者の場合、もっぱらローカルでやってますから、Webがどうかというのは(同じことをやっているとはいえ)直接は関係ないのですけれど、ともあれ、どうものを自動的に整理するか、というのがキーなのです。

意味という点では、Googleを超えたという評価もちらほら耳にする、新しい意味ベースのサーチエンジンPowersetなんていう魅力的なソリューションもありますけど、まだ世界には意味はついていないので、意味をつけるところができてしまえば、その先はどうにでもなるだろうと、いう気がします。

Geoタグ

この1~2年で、急速に進展しつつあるのがGPSや無線LANを使って位置を記録するGeoタグです。

GPSじたいは、1990年代以前からの技術ですし、機器があれば、タギングはさほどむずかしいことでもありません。ただいくつか問題があり、筆者の環境とはうまくなじまないので、実験的に使ったとき以外には、継続して使うことはないのです。

GPSの欠点はいくつもあります。捕捉に時間がかかる、建物のなかでは使えない、晴れていないと使いにくい、などです。筆者の生活パターンは、基本的にひきこもりで家から出ませんし、出かけているときは高速に移動しているため、GPSを使う機会がほとんどありません。

無線LANでは、東京大学/ソニーCSLの暦本純一教授のPlaceEngineがGPSの欠点を凌駕する技術を提供しています。⁠PlaceEngine』の場合、無線LANを使うため、建物のなかでも使えるし、精度もGPS並という話を聞いています。

でも、これでもひきこもりの筆者にはあまり関係ありそうにない。そりゃ、ひきこもりといっても、たまには買い物に行くし、散歩にもいきますけど、微妙にGeoタグを必要とするシーンが見えないのです。暦本さん、すみません。でも『PlaceEngine』の携帯タギングマシン(?)貸してくれたら使います。

整理しないのは、整理しなくても探せるから

だいたい、筆者の整理というのは、ハイパーテキストを用いているもので、3万弱のファイルに対して30万以上のリンクがあるという高度にリンクした状態になっています。

ファイルシステムがこのような状態の場合、整理というのは、日々日記を書くことでほぼ足りるのであり、日記を書くだけで、限りなく整理や情報の再構築を行い続けているということになります。

日記や原稿を書くことじたいが整理作業をかねているのです。

すでにできあがったこのハイパーテキストシステムでは、書き物をすることと整理とは一体不可分になっていて、わざわざ整理する必要もなく、ファイルは整理できています。

検索システムも作っているので、特別な整理をしなくても、探し物に苦労しない、ということもあります。

見つかる体験

発見することに特別な付加価値をつけた価値づけに連載の5回目でもとりあげた、⁠セレンディピティ」という言葉があります。

筆者の場合、平均すると1日に1回もセレンディピティがあるのでメモリティ(©美崎薫)という言葉を提案しました。最近はあまりちゃんと記録していないのですけど、2008年5月は6回、6月は23日までで3回のメモリティ体験をしています。ちょっと数は減ってますが、5~6日に1回くらいのペースですか。

たとえば、一般性のあるものを例示してみると、

  • 『君が代』『古今和歌集』の第7巻『賀歌』にあること
  • 象を冷蔵庫に入れる三つの条件について
  • ナポレオンとジョゼフィーヌに見る夫についていかなかった妻とのトラブル
  • 山田詠美の本は角背が多いこと。ひょっとして丸背よりも角背を好きなのかも
  • 大塚愛のうさぎ

なんかを最近「発見」して、驚いてます。こうしてみると、⁠気づき」が重要な要素であることがわかるので、メモリティではなくて、アウェアティ(©美崎薫)とかアェウアネティ(©美崎薫)とかのほうがいいかな。アェウアネティ(©美崎薫)だとティッシュみたいですが。

7-11で買ってきた、目つきの悪いうさぎ
7-11で買ってきた、目つきの悪いうさぎ
ふと7-11で見かけて、気になって買ってきた、目つきの悪いキモカワなうさぎです。携帯電話用の鎖がついています。これ、なんかのキャラクターなんだろうなぁと思ったのですが、店頭にはPOPやチラシはなく、出所が不明でした。値札にも名前がありませんでしたし。こうなると、このうさぎがなんなのか、ぜんぜんわかりません。世界にはタグはついていない、と思うのはこういうときです。
beatfreak
beatfreak
ふと、スキャンしたフリーマガジンの『beatfreak』202(2004年11月号)を見ていました。
LOVE
LOVE
するとびっくり。このうさぎが出てきました。このうさぎの名前は「LOVE⁠⁠。2004年11月17日に発売された大塚愛のセカンドアルバム『LOVE JAM』に関係したキャラクターで、全10種類。ガシャポンで販売されたようです。フリーマガジン『beatfreak』202(2004年11月号 pp.19)。そうしてみればたしかに、うさぎの耳にはLOVEと書いてあります。そうか、これが名前か。
LOVE うさぎ
LOVE うさぎ
名前がわかったので、⁠LOVE うさぎ」でGoogleで検索してみました。というか、名前がわからなくても、⁠LOVE うさぎ」でGoogleで検索してみればよかったのかもしれません。なんだ、650,000件もヒットしました。世界にはタグはついている、と思うのはこういうときです。結局どっちだよ、といわれるかもしれませんが、要するに、世界にはミスマッチがあるのだ、ということです。

タグづけの手間のフィードバック

タグづけというのは、一見手間に思えるかもしれませんが、タグが増えていくと、蓄積したタグによってフィードバックループが起こるので、楽になることもしばしばあります。

もっとも代表的なフィードバックループのひとつが、シリーズものの書籍を購入するときの手間の軽減です。

筆者は、定期的に購入しているいくつかの書籍について、⁠定期購読書」のリストを作っています。このリストは、シリーズが続けば続くほど、タグ(日付)による価値が増してきます。ある本を半年おきに購入していたとすれば、次の本を買うのも半年先に決まっていると予測できるためです。こういう予測はまず当たるので、Amazonの「おすすめ」を見るよりもずっと役に立ちます。

同様のリストは、定期的に行うすべての事柄について設定可能です。掃除、買い物などの日常的な事柄をフィードバックループで記録していけば、タグづけの手間は激減します。いったい人生に繰り返しでないことなんてあるんでしょうか、などという気もしてきます。いやもちろん、恋愛とか家の購入とか受験とか、1回しかないことだってたくさんあるわけですが。

タグづけが楽になることは、そうした一度しかない体験を、一度だけしかない体験である、と際だたせることにも役立ちます。

繰り返しの体験のいくつか
繰り返しの体験のいくつか。
くり返し出てくる体験は、リスト化しておくことで、うまくフィードバックループに載せることができ、人生を楽に送ることを可能にすると思います。

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