実践!GTD~一歩先の仕事管理

第1回 七叉路の真ん中に立ち尽くす

はじめましてのご挨拶

みなさん、はじめまして。nomicoと申します。これから数回にわたり、GTDをみなさんに紹介する役目を仰せつかりました。GTDは、私が心底惚れ込んでいる素晴らしいシステムです。人生を豊かにしてくれる、そんな素敵なツールをみなさんにも興味をもってもらえるよう、がんばりますので、どうぞよろしく、お付き合いください。

GTDって、一体なんでしょう? GTDは、アメリカの経営コンサルタントであるDavid Allenが提唱している、ワークフローマネジメントシステムです。ワークフローマネジメントシステムとは、端的に言えば仕事の管理方法のことです。ウェブ界隈にいるライフハッカー達の中では有名で、浸透性も高く、アメリカでは最もよりよく仕事を管理することのできる方法はGTDではないか、とまで言われています。

普通、仕事を管理すると言えば、まずスケジュール管理が思い浮かぶと思います。でもGTDの一番の特徴は、重点としているのがスケジュール管理ではなく、あくまで「仕事管理」であることです。仕事の管理に焦点を絞ることによって、よりコンパクトに仕事を進めることができる、というものです。"仕事管理とスケジュール管理はどう違うの?"と興味を持ってくださった方、どうぞこの後の連載を楽しみにしていてください。貴方のライフスタイルが一変するかもしれませんよ。

春です。
4月も始まり新年度を迎えました。春というのは面白い季節で、何か新しいことをはじめたい、という気持ちになります。春に入学・卒業といった行事を何度も経験している日本人ならではの感覚なのでしょうか。ともあれ、新しく会社に入社したり、新入社員を部下に迎えたり、新しいポストにつくことになったり、生活が一変することが多い季節です。寒い季節が終わり、何か新しいことを始めたくなって、うずうずしている人もいると思います。何か新しく始めたい人は、この際思い切ってライフスタイルを刷新するために、GTDを使ってみてはいかがでしょう。

もっとも、春だからといって、楽しいことばかりじゃありません。
生活環境が変わってしまい、早くもついていけなくなったりしていませんか? 今まではちゃんとできていたのに、環境が変わったことで仕事にアップアップしてしまった人、やることはたくさんあるのに何から手をつけていいかわからない――そんな人こそ、GTDです。GTDは両手からやることが溢れてしまった人、何から手をつけてよいのかわからなくなってしまった人の救世主です。

私もそんな困っている人と同じように、ぐるぐる迷ってGTDにたどり着いたのです。 まずは私の遍歴をご紹介しましょう。

自己紹介~どうして仕事の管理を模索し始めたのか?

ある日突然、私の世界は崩壊しました。
めくるめくメール、ひっきりなしの電話、取次ぎやら調整やら作業やら何やら一気に仕事が降りかかってくる。まるで嵐の真っ只中。それは転職がきっかけでした。

もともとSEをしていたのですが、転職を契機に、プロジェクトマネージャの仕事に就きました。プロジェクトマネージャとは、お客様と開発者の間を取り持つ、言わばプロジェクトの交通整理役です。転職前は、やる気満々。ところが実際やってみると、仕事の量が尋常じゃありません。一つのプロジェクトならまだしも、複数のプロジェクトを抱えることがざらでした。七叉路の真ん中に立って交通整理をしようとして、手元がこんがらがっているみたい。メール・電話・そして作業、次々と押し寄せてくる仕事の状態に速攻でうんざりです。

とにかくすっきりしたい! 金曜日をすがすがしく帰りたい! たとえ平日で飲み会の誘いがあっても、キリのいい所で仕事を切り上げて後ろめたい気持ちのない状態で参加したい!

ここから、私の仕事管理模索旅が始まったのです。

ストレス無し仕事フローのためのWEBツール

まずはGoodpic! これは、Lifehacking.jpが前のサイトで紹介していたGTDを受けて、グループ間でWiki上でできるのではないかと言う点に着目し、Goodpicが編み出したやり方です。仕事を全部洗い出してWikiに書き出すというものでした。仕事の進捗管理に思い悩んでいたところで、"これをやればそれが解消できそう!しかもストレスフリー!"ということで早速試しました。

結果、作業の時間の大半をWikiに記述するのに費やしてしまい、本末転倒。グループ間でやることが目的なのに、うっかり一人でやろうとしたこと自体がそもそも合っていません。そんなわけで挫折。残念!

日報メール

次に日報メール。困って本屋に駆け込んだときに、堀江貴文の100億稼ぐ超メール術と言う本を見かけました。私の所属する会社はメーリングリストが鬼のように多いのですが、その状況が本の中の状況と似ていたので手に取ったのです。メール処理についてはメール処理で参考にしつつ、その中の日報メールも目につきました。仕事がままならなくなり始めて、仕事に時間を割り振って処理していこうと考えていたところです。丁度それを日報メールにして送ろうというのが趣旨だったので、すぐに実行に移しました。

日報に書く内容は以下の通り。

  • その日にやったこと(+時間)
  • 次の日やること(+時間)
  • 簡単な感想

これを書いて自分にメールしました。

しかし、メールを書くことが面倒になりました。メールを書いても全く状況が改善しないし、メールを書いても、それ以外に何も活用できなかったからです。それにメールに書かなかった突発の仕事もよく発生しました。予定を書くにしても、そもそも想定していた状況が変わりすぎ、時間を割り当てるには状況が変動しすぎました。そんなわけで挫折。残念!

Trac

こりずに次はTrac。WikiもあってSVNも持っててチケット制のプロジェクト管理です。やっぱり私には進捗管理しかない! そこでBTSをいくつか探した中で、Tracが高機能でチケット制で、進捗管理に合っているんじゃないかと疲れた心には魅力的に映りました。

しかし私は肝心なことを忘れていました。Tracは、プロジェクトはプロジェクトでも、開発のプロジェクトに特化しているシステムだということを。進捗管理に合わせるのにカスタマイズが大変で、しかも当時はWindowsにインストールするのに非常に苦労するという代物。おまけに日本語の情報量も少なかったのです。よく入れようと思ったものです。当時の自分の疲れっぷりを思うと我ながらかわいそうで涙がでます。

その甲斐あってか管理もつつがなく……というわけにはいかないのが世知辛い世の中です。使えるまでに時間を費やした割りにはあまり効果がない。なんと、レポートする時間が割かれ、⁠ストレス無し仕事フローのためのWEBツール」と同じ問題を辿っているではありませんか。簡単に扱えるとたかをくくった私が馬鹿でした。そんなわけで挫折。残念!

ChangeLog

まだまだ遍歴は続きます。次にChangeLog。横着プログラミング 第1回: Unixのメモ技術を知り、進捗の履歴がほしいと悩んでいた私は飛びつきました。メモを取る!どうやって?ChangeLogで!素敵です。

でも単にメモを取るだけなんですよね。管理は別にしなくてはいけません。しかもメモが何を示しているのかさっぱりわかりません。思ったよりメモを取るのにも技術が必要でした。そんなわけで挫折。残念!

結局ただの紙

そしてただの紙。疲れ果てた私には、一番原始的かつ確実な方法しかありません。プロジェクトが佳境に入ると、悠長に管理システムにアクセスするどころではありません。遍歴をする力もなく、寝不足の目をこすりつつ、メールが書き終わったらすぐに電話……そんな状況では、仕事のやり取りを紙に書き取ることが精一杯でした。

紙にはミーティングの内容、電話したこととその内容、やることなど全て書きました。自分が作業が必要なことのみ、ノートの端にチェックボックスをつけて忘れずに実行するだけのシンプルなやり方です。

"やっぱり紙最強!"ですが、これは他に進捗管理をしてくれる人がいたからこそできた技で、紙に書き出すだけでは進捗管理はままなりません。忙しい仕事が終わり、メンバがいなくなると自分で管理しなければいけなくなりました。いつの間にか新しい方法を模索するようになりました。残念。

その他いろいろ

主に真剣に取り組んだのは上記ですが、これ以外にもいろいろ試してみました。実行!やっぱりダメ……の繰り返しです。そのほかの取り組みを簡単に書いてみると、下記のようなものです。

結局どれも決定打にはならず、千切っては投げ千切っては投げ状態です。我ながら混乱しています。

最後にあしか

最後にたどり着いたのがあしかでした。あしかは、はてな内部で行われている進捗管理です。終わった・すぐやる・そのうちやる・ペンディングの4つのステータスで項目を管理するシンプルなやり方です。

これははじめ、非常にうまくいきました。やることがはっきりし、ステータスも明確です。これでようやく光明が見えたと安心したのも束の間、仕事が忙しくなるにつれてうまく回らなくなってきたのです。やることをいくつこなしても、このやり方では終着駅が見えません。やった先から新しい仕事が発生し、⁠すぐやる」がいつまで経っても減りません。まるで終わりのない無間地獄が続いているかのようです。そんなわけで挫折。残念!

まとめ:結局どれもこれも中途半端

どの方法にも共通して言えることは、それぞれに何らかの焦点をしぼって、実現しようするところです。私は、tracに代表される進捗管理、 ChangeLogに代表される履歴、日報メールに代表される次にすべきこと、この3つをどうにかして捉えたいと何度も模索を繰り返しました。

  • 現状稼動している仕事のステータスは何?
  • 現状稼動している仕事のすべきことは何?
  • 稼動している仕事の今までの履歴はどうなのか?

今ならわかります。この3つが同時にわかる管理方法がほしいのです。でも模索していた当時は全くわかりませんでした。

忙しくなった人はどういう行動になるの?

人はあまりに忙しくなると、"とにかくやらなくちゃ"という気持ちだけでいっぱいになります。手をつけてはすぐに他のことを思い出して今やっていることを放り出し、別のことをし始めます。それに取り掛かったと思った途端、さらに別の項目を思い出してまたすぐに今やっていることをやめて、ついさっき思い出したことに取り掛かり始めるのです。そして数時間後、何も完了しないままに時間が過ぎていることに呆然とします。

私もこのような状況に陥ってしまいました。最後の最後にGTDに出会い、さっそく始めの収集ステップに取り組みましたが、その次のステップに進めずにいました。が、こんな状況ではそうもいってられず、とりあえずは仕事だけでも、と藁をもすがる気持ちで始めました。これが、私のはじめてのGTDでした。

GTDを始めたその後の私

あんなにぐるぐると迷っていたのに不思議です。今まで滞っていた仕事がはかどるようになりました。しばらくすると、当初念願であった、金曜日にすがすがしく帰ることができるまでになったのです。キリのいい所で仕事を終わらせて、足取り軽く金曜日の夜を闊歩できるようになりました。プロジェクトが稼動しているのにも関わらず、そんな状態になれるなんて夢のようです。

だからといって、すぐにGTDを活用できたかというとそうではなく

みなさんの中にも、以前にGTDを試してみたけれどもやっぱりできなくて挫折した方もいると思います。その気持ち、とてもよく分かります。

私自身も、はじめてすぐにGTDを理解できたわけではありません。とかくGTDは新しいアプローチなため、最適なツールを見つけることすら難しいのです。仕事のピークをすぎ、それなりの仕事量になると、忙しい時期で行っていたやり方ではうまくいかなったりしました。今まで紙で行っていたGTDをソフトウェアに管理場所を移行しただけで、うまくいかなくなったこともあります。GTDは一筋縄ではいきませんでしたが、荒波を超えると非常に理解できるようになりました。

そんなわけでGTD

GTDを実践する上で欠点があるとすれば、どうしてもつまづいてしまう部分があることです。それは、GTDの独特の理念が今までになかったものだからです。今回の連載では、GTDを実践している中で実際に私がつまづいた部分や捕らえにくかった概要を補足しながら、GTDを始める手助けになるようなことを話していこうと思います。連載の前半ではGTDの概要のおさらい、中半では実際のやり方の説明、後半ではGTDの行く末について、解説していく予定です。

連載中に何か疑問点等ありましたら、コメントなりどんどん教えて下さいね。

GTDをしたことがない人も、トライしたけどやめちゃった人も、この春新たにGTDを始めてみませんか? さて、貴方は今どこに立っていますか?

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