“プロボノ”という新しいキャリアパス

第3回 鼎談:私とプロボノ(後編)

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プロボノの始め方 心の準備について

吉崎:まだプロボノの認知が業界内に広がっていないけれど,社会科見学くらいの勢いで入ってもらったほうがいいですよね。まずやってみないとなんとなく分からないところもある。

中野:一番いいのは,やっている人が楽しそうな姿を見せることだよね。

吉崎:自分のスキルがどの程度か,というのはわかりますよね。世の中で一般的に通用するのか,ある会社の中にいればその中では当然通用するだろうけど,他の会社にそんなにポコポコ移れるものでもないので,自分のスキルが一般的であるかは分からない。でもそれが全く色んな異業種の人が集まった中でもちゃんと機能すればある程度自分は使えるんだなというのは分かるので,その確認のためにいいですよ。

中野:そうだね。自分の持っているスキルとモチベーションとお客さんとの関係みたいなことをがらっと見直すことができるところはある。こういうことで喜ぶんだ,ということもあるし,このスキルはこうやって役立つんだ,とか。情報設計ってこうやって役立つんだと確認をしたり,デザインもこういう意味付けをするとこうなるんだ,とか自分の仕事をもう一度レビューできるということはあると思います。

社会科見学的にはどうなんですか?プロジェクトの中でNPOにヒアリングするときとか……。

吉崎:アレルギー友の会もすごかったな。一番最初のヒアリングに行ったときに人の生死にかかわるようなすごく衝撃的な話を聞いて,この思いを受け止めることは大変な仕事だなと思いました。でもやっぱり思いが一般の企業サイトをやっているのとは違う。当事者意識が違うというか。たとえば,人の生死を左右する問題と向き合っていることもあると,Webサイトへの思いが人の命と直結しているので意識がまったく違いますよね。

中野:僕が今回お手伝いしたプロジェクトの特徴は,⁠震災」というまさに未曾有のできごとに対処するものだったから,支援先の団体が考えていることと実は現場は全然違っていてプロジェクトの方向性が変わってしまったり,もともとWebサイトの構造としてこうあればいいだろうと考えていたものが実は違っていて情報構造そのものを変えないといけないとまずいということが今になって分かったり。そういうむずかしさがありますよね。団体自体がダイナミックに動いているからそれに従ってWebサイトを変えなければいけないところがあったりします。でもとにかく,復興支援の動きというものは広い意味でものすごくプロボノ的ですよね。

兼松:モチベーションに火がついたのは震災がきっかけですよね。自分事になっちゃった,というか。そういう人が多かった気がする。ただ,いつまで続けるのか,フェーズをどういう風にやっていくか,いつ引くかを考えないとですね。

中野:期間限定が望ましいですね。いつまでもといっても無責任になってしまうしね。あまり自分の生活に極端に負担がかからない範囲でここまでだったらお手伝いできますときちんと明言することがお互いに大切です。

吉崎:心の準備としては,今の仕事がつまらないとか,逃げで使ってもダメだと思いますね。プロボノはポジティブな人というか,前向きな人と一緒に仕事をしたいならやってみたら?と思っています。プロボノに参加している人でネガティブな人はまずいない。そもそもネガティブだとボランティアには来れないですものね。そういう前向きな人達が集まるチームで仕事をしてみたいと思うんだったら一回サービスグラントで試したら?

中野:プロボノの中でもサービスグラントでやる意味の1つはそこにあるかもしれないですよね。チームで取り組むから。

吉崎:チームでできるし,日本カスタマイズのプロボノのノウハウに蓄積ができてきていて安心感がありますよね。プロボノの入口としてサービスグラントはいい気がします。

兼松:ただ最近気になっているのはとくに学生に見られることで,自分はプロボノと思ってしまっているけど,提供しているスキルはプロフェッショナルなものではないということがあったり,その辺りの正しい線引きが難しいところもあるかなと思います。

でもいずれにしても,プロボノをやるというとき,自分の仕事がうまく回っていない,余裕がないのにプロボノをするのはよくない。やはり,自分の仕事がコントロールできる人がやるのがいいと思います。

 プロボノにチャレンジをするといいと思う人。以下のようなマインドの方はプロボノが合っていると思います

自分の力を試したい
仕事を見直したい
プロとしての自覚がある人(自分の仕事に値段がつけられる,自分のスキルや経験を安売りしないという過程を経た人)
最後まで責任を持ってやり切れる人
勤め先がプロボノ活動を後押ししている人

兼松:気持ちの良いマッチングならいいなと思うのですよね。たとえば会合があってそこにデザイナーさんが1人しかいないとその人にロゴをプロボノで頼む,みたいにそこにしかいなかったから頼んでしまう場面も時々あるのは本当はあまり理想的ではないなと。

そういうところではサービスグラントは公平に選ばれるという信頼できるところがいいな,と思いますよね。結局タダであることイコールプロボノである,といわれないように気を付けなければいけないですよね。プロボノは無理してやるものでもなく,すべての人がするものでもなく,考え方や働き方として共感する,いいなと思う人がやるといいと思います。

プロボノにまつわる色々なご意見が繰り広げられた今回の鼎談はいかがだったでしょうか? 新しい社会貢献の働きかけが持つ,多面的なエッセンスを色々な言葉で表現していただく中で,3人の経験者に共通する認識についても浮かび上がってきたのではないかと思います。

プロボノが色々な気づきや広がりのきっかけとなるポジティブなアクションとなることを願い,今回の3回に渡る連載は終了です。

少しでも気になった方,最初の一歩はサービスグラントの説明会から!

ぜひ,皆さまもプロボノのネットワークに参加してみませんか?

サービスグラントでは,ボランティア登録を随時受付中です。

また,プロジェクトの進め方やスケジュールなどについて共有させていただく説明会を東京エリア(渋谷⁠⁠,関西エリア(阿波座)にて定期的に開催しています。詳しくはこちらから。

著者プロフィール

岡本祥公子(おかもとさよこ)

NPO法人サービスグラント

慶應義塾大学 総合政策学部卒業後,映像,ゲーム,ウェブ,広告などクリエイターに特化した人材会社クリーク・アンド・リバー社にて,企業とクリエイターのマッチング業に従事。サービスグラントのNPO法人化にあたって,週末ボランティアとして参加を始め,2009年9月より専従スタッフ。プロボノワーカー(ボランティア)のリクルーティングや企業との協働プロジェクトの運営を担当。