Re:PoIC~ライフハッカーのためのPoIC入門

第7回[最終回] Re:PoIC~Knowledge Navigator(ナレッジ・ナビゲーター)

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ナレッジ・ナビゲーター

問題解決,すなわち意思決定のための情報,という観点から記憶を捉えるならば,それはPoIC上の情報カードとほぼ同じものと見なすことができます。

ワーキングメモリは,問題解決のために計画を立てたり,未来を予測したり,作業にかかる時間を逆算したり,仕事の方法を開発し,それを状況に合わせて容易に変更したりするといった,行動や思考を整理する前頭前野の広範囲な能力に関係しており,PoICはそれを支援するツールだと考えることが出来ます。

しかし,記憶は動的に更新されるシステムであり,静的で更新されないままのPoICの情報カードとは異なっているように見えます。それは,記憶が生存のための重要度を基準にしているために,動的に更新され続けるのであり,PoICの情報カードが,静的な非更新システムなのは,時間軸を基準にしているからだと考えられます。

つまり,時間軸を基準としたPoICのドックの中の情報カードには,その時々の,過去の自分の記憶の断片が,凍結されて保存されていると考えられます。そして,タスクフォースを編成することは,過去の自分との対話であり,過去の自分が現在の自分を導いてくれるというわけです。

自動車のラリー競技において,ドライバーの隣で速度や方向の指示を与える同乗者のことを「ナビゲーター」と呼びます。そこから僕は,PoICのドックの中から,現在の自分を補佐してくれる過去の自分を「知的な同乗者⁠⁠,すなわち「ナレッジ・ナビゲーター」と呼びたいと思います。

まとめ~Re:PoIC

現在,PoICの4つのタグを,記憶の分類とそれぞれ対応させることによって,⁠この情報はどのカードだろう」と迷うことが少なくなりました。

記録カードにはエピソード記憶を,参照カードには意味記憶を記し,将来の予定,つまり展望的記憶はGTDカードに記入して43Tabs上に保持し,ワーキングメモリ上で発生した新たな考えは,発見カードに逐次記してドックに貯蔵すればいいのです。

そして最後に,⁠PoICとはなにか?」についての僕の考えを述べて稿を終わらせたいと思います。

PoICとは,前頭前野の機能を外部から補助するためのツールであり,4つのタグは,ワーキングメモリ上に呼び出される記憶の分類の,それぞれに対応しているがゆえに,この4つの分類だけで,PoICはうまく機能するのだという本稿の結論が,現在の僕のPoICに対する理解であり,PoIC提唱者であるHawk氏へのとりあえずの返信です。

以上で,僕がPoICについて経験したこと,考えたことはすべて書き終えました。これはごく私的な旅の記録であり,連載当初に述べたように,経験の分かち合いを目的に書かれました。

そして,PoICの荷台にやっかいになりながらの旅は,最終的に思わぬ場所に僕を連れていってくれましたが,果たして,僕の遠回りな旅の記録はPoICの魅力を少しでも伝えることが出来たのでしょうか。

最後に,ここまで読んでいただいた読者の方々,連載の機会を与えていただいた技術評論社と担当編集者各位,そして寛大な心で僕の自分勝手な解釈を許容していただいたHawk氏に,伏して感謝いたします。

ありがとうございました。

参考文献
「新・脳の探検 下  脳から「心」「行動」を見る」⁠ブルーバックス,講談社)
フロイド・E.ブルーム/他 著,中村克樹/監訳,久保田競/監訳
「⁠⁠あっ,忘れてた」はなぜ起こる 心理学と脳科学からせまる」
(岩波科学ライブラリー,岩波書店)梅田聡/
「展望的記憶システムの構造」⁠風間書房)
小林敬一/
「情報処理心理学 情報と人間の関わりの認知心理学」
(コンパクト新心理学ライブラリ,サイエンス社)中島義明/
「記憶の神経心理学」⁠神経心理学コレクション,医学書院)
山鳥重/
「脳研究の最前線 上  脳の認知と進化」⁠ブルーバックス,講談社)
理化学研究所脳科学総合研究センター/
「脳研究の最前線 下  脳の疾患と数理」⁠ブルーバックス,講談社)
理化学研究所脳科学総合研究センター/

著者プロフィール

野ざらし亭(のざらしてい)

「Blog:野ざらし亭」亭主。他人のアイデアに相乗りする自称知的ヒッチハイカー。現在 はPoICの荷台に厄介になっている。

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